日本化学療法学会雑誌
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51 巻, 12 号
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  • 織田 慶子, 沖 真一郎
    2003 年 51 巻 12 号 p. 745-749
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2001年に小児から分離された肺炎球菌96株の経口, 静注抗菌薬に対する薬剤感受性, 血清型, PBP遺伝子の変異を検討した。呼吸器由来91株, 血液2株, 髄液3株であった。全体のペニシリン耐性率は (penicillin Gに対するMICが0.125μg/mL以上を耐性とする) 70/96, 73%であった。経口抗菌薬でもっとも抗菌力に優れていたのはfaropenemであった。静注用セフェム系薬ではMIC90ではcefotaxime, ceftriaxone, cefpirome, cefozopranに1μg/mLでほとんど差がなく, カルバペネム系薬のpanipenemが0.125μg/mLと良好な抗菌力を示すのみであった。血清型では23F, 6B, 19Fが全体の73%を占め (70/96), 特に6Bは約1/3がMIC 2μg/mL以上であった。現在米国で行われている7価肺炎球菌ワクチンでは今回の分離株の83%をカバーすることができた。PBP遺伝子の検討では, たとえペニシリン感受性菌でも耐性遺伝子をもつ株が存在しており, PBPの変異の広がりが危惧された。
  • 石原 哲, 出口 隆, 篠田 育男, 根笹 信一, 米田 尚生, 林 秀治, 藤広 茂, 萩原 徳康, 岡野 学, 鄭 漢彬, 原田 吉将, ...
    2003 年 51 巻 12 号 p. 750-757
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    急性単純性膀胱炎は起炎菌の大半がEscherichia coliであり, 1肘性菌も少なく, 経口セフェム系薬で上分治療できる疾患であると推察される。Cefdinir (CFDN) はE. coliに優れた抗菌力を有し, 開発時の治験において急性単純性膀胱炎に優れた有効性を示し現在も有用であると推定されたが, 市販後のデータが少ないためUTI薬効評価基準 (第4版暫定案) に準拠した特別調査を企画した 2001年9月から2002年9月の問, 急性単純性膀胱炎と診断された16-70歳の女性79例を対象とし, CFDN100mg, 1日3回3H間投与を行い, 投薬前および投薬終了時 (投薬開始3-5日後) に自覚症状の調査, 全自動尿中有形成分分析装署による膿尿検査および尿中細菌検査を行った。投薬終了1週間後の検査も可能な限り実施した。投薬前の尿中細菌検査の結果, 検出された菌の66.7%はE.coliであり, 次いでEnterococcus faecalis (13.3%), coagulase-negative staphylococci (13.3%) などが分離された。投薬終了時に評価が可能であった60例における有効率は100%(著効率: 71.7%), 菌消失率は95%であった。また, 投薬終了1週間後の検査が可能であった13例における治癒率は92.3%であった。3例 (3.8%) に副作用が見られたが, いずれも軽度であった。CFDN 100mg, 1日3回3日間の経口投上与は急性単純性膀胱炎に有川な治療法であり, ファーストチョイスのひとつとして推薦できると考えられた。
  • 武井 豊, 薄井 紀子, 萩原 剛史, 大川 豊, 杉山 勝紀, 宇野 真二, 土橋 史明, 小林 正之
    2003 年 51 巻 12 号 p. 758-761
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    構音障害, 歩行障害を訴える58歳男性が, 近医に精査目的で入院された。造影MRIでは脳梁膨大部・深部白質に腫瘤が認められた。2002年7月に当院脳神経外科に紹介入院となり, 腫瘍生検術が実施され悪性リンパ腫 (diffuse large B cell lymphoma) と診断した。血液・腫瘍内科に転科となり, 各種検査にて脳原発悪性リンパ腫と診断した。Methotrexate (MTX) 大量療法の第2コース実施後に, 葉剤性肺炎を発症し, リンパ球刺激テストにてMTXが原因と診断した。ステロイド・パルス療法を行い速やかに軽快した。MTXの投与時は, 呼吸器毒性の発現に十分に注意が必要であると考えられた。
  • 豊永 義清他
    2003 年 51 巻 12 号 p. 762-781
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Meropenem (MEPM) の小児科領域感染症における臨床試験を, 全国17の医療機関において2001年4月から2002年5月の問に実施した。カルバペネム系抗菌薬 (CBPs) の投与が必要と考えれられる小児入院患者52例 (3か月~13歳5か月) を対象とし, MEPMの10, 20または40mg/kgを1日3回静脈内に点滴投与し, 有効性, 安全性ならびに薬物動態について検討した。除外症例3例を除く49例における臨床効果は有効率95.9%(47/49) であり, 疾患別有効率の内訳は, 下気道感染症962%(25/26), 尿路感染症100%(3/3), 敗血症100%(2/2), 敗血症疑い100%(4/4), 化膿性髄膜炎100%(5/5), その他88.9%(8/9) であった。化膿性髄膜炎の5例において, 後遺症が認められた症例または死亡した症例はなかった。菌の消長が確認できた症例33例のうち30例が菌消失, 2例が膿消失であり, 「菌消失」と「膿消失」を合わせた細菌学的効果は消失率97.0%(32/33) であった。原因菌としてはHaemophilus influenzaeおよびStreptococcus pneumoniaeの分離頻度が高く, それぞれ21株, 16株であった。これらに対するMEPMのMICはH. influenzae, S. pneumoniaeともに≦0.06~0.5μg/mLで, 感受性は良好であった。50例からの血漿116検体, 21例からの尿62検体および5例からの髄液11検体を採取した。投与終了後20~30分の血漿中MEPM濃度は, 40mg/kg投与群で65.52~38.22μg/mL, 20mg/kg投与群で30.81~13.73μg/mL, 10mg/kg投与群で16.37~5.86μg/mLであった。投与開始後8時間までの活性体 (MEPM) の尿中回収率は56.4~70.7%であった。また, 髄液中MEPM濃度は投与後1.08~5.58時間において0.29~2.75μg/mLであった。臨床検査値異常変動を含む副作用 (因果関係が否定できない有害事象) が, 全52例中23例で認められたが, 重篤な副作用は認められなかった。以上の結果から, MEPMは小児科領域感染症に対し有川性の高いCBPsと考えられた。また, 中等度の感染症には通常10または20mg/kgの1日3回投与, 化膿性髄膜炎などの重症感染症に対しては40mg/kgの1日3回投与が適切な用法・用量と考えられた。
  • 堤 重子, 窪田 博明, 引田 篤, 船橋 一照, 佐藤 俊一, 久保田 幸雄, 梶浦 泰一
    2003 年 51 巻 12 号 p. 782-795
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ペネム系抗生物質製剤ファロム®ドライシロップ小児用 (faropenem, FRPM) の使用成績調査は, 1999年の発売時から2002年の4年間にわたり実施した。630施設の医療機関から3, 823例の調査表を収集し, 不適格症例となった例を除いて安全性解析対象症例3, 613例, 有効性解析対象症例3, 424例について検討を行った。本使用成績調査の安全性の結果の一部は, すでに速報として本誌50巻12号 (2002年) に報告した。今回, さらに安全性および有効性に関する詳組な検討を行い, 以下の結果が得られた。
    1. FRPM小児用製剤の副作用発現率 (臨床検査異常値を含む) は10.16%(367例/3, 613例) で, 承認時までの発現率8.18%(48例/587例) に比し, 高値であった。
    2. 下痢などの消化管障害が9.80%(354例) と副作用発現例の大半を占めており, このうち349例が軟便, 泥状便, 水様便を含む下痢で, ほとんどの例は軽微であり, 本薬の中1上などにより回復した。他の副作用は発疹などの皮膚・皮膚付属器障害などであった。
    3. 調査全体の有効率は93.3%(3, 193例/3, 424例) であり, 適応疾患別, 原因菌別有効率は, 承認時までの成績とほぼ同等の成績であった。小児の耳鼻科領域で近年その耐性化が問題となっているペニシリン耐性Streptococcus pneumoniae (PRSP), ペニシリン中等度耐性S. pneumoniae (PISP) に対して20例中18例が有効であった。
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