Meropenem (MEPM) の小児科領域感染症における臨床試験を, 全国17の医療機関において2001年4月から2002年5月の問に実施した。カルバペネム系抗菌薬 (CBPs) の投与が必要と考えれられる小児入院患者52例 (3か月~13歳5か月) を対象とし, MEPMの10, 20または40mg/kgを1日3回静脈内に点滴投与し, 有効性, 安全性ならびに薬物動態について検討した。除外症例3例を除く49例における臨床効果は有効率95.9%(47/49) であり, 疾患別有効率の内訳は, 下気道感染症962%(25/26), 尿路感染症100%(3/3), 敗血症100%(2/2), 敗血症疑い100%(4/4), 化膿性髄膜炎100%(5/5), その他88.9%(8/9) であった。化膿性髄膜炎の5例において, 後遺症が認められた症例または死亡した症例はなかった。菌の消長が確認できた症例33例のうち30例が菌消失, 2例が膿消失であり, 「菌消失」と「膿消失」を合わせた細菌学的効果は消失率97.0%(32/33) であった。原因菌としては
Haemophilus influenzaeおよび
Streptococcus pneumoniaeの分離頻度が高く, それぞれ21株, 16株であった。これらに対するMEPMのMICは
H. influenzae, S. pneumoniaeともに≦0.06~0.5μg/mLで, 感受性は良好であった。50例からの血漿116検体, 21例からの尿62検体および5例からの髄液11検体を採取した。投与終了後20~30分の血漿中MEPM濃度は, 40mg/kg投与群で65.52~38.22μg/mL, 20mg/kg投与群で30.81~13.73μg/mL, 10mg/kg投与群で16.37~5.86μg/mLであった。投与開始後8時間までの活性体 (MEPM) の尿中回収率は56.4~70.7%であった。また, 髄液中MEPM濃度は投与後1.08~5.58時間において0.29~2.75μg/mLであった。臨床検査値異常変動を含む副作用 (因果関係が否定できない有害事象) が, 全52例中23例で認められたが, 重篤な副作用は認められなかった。以上の結果から, MEPMは小児科領域感染症に対し有川性の高いCBPsと考えられた。また, 中等度の感染症には通常10または20mg/kgの1日3回投与, 化膿性髄膜炎などの重症感染症に対しては40mg/kgの1日3回投与が適切な用法・用量と考えられた。
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