インフルエンザにおける急性中耳炎合併頻度, 急性中耳炎症例から分離される菌種, 分離頻度, 中耳貯留液中のインフルエンザウイルスの有無を検討した。
2001年2月から5) 1まで (2001年シーズン) と, 2002年1月から6月まで (2002年シーズン) に, 東北労災病院耳鼻科または小児科でA型およびB型インフルエンザと診断された症例のうち, 急性中耳炎を合併していた2001年シーズン33例 (A型7例, B型26例), 2002年シーズン66例 (A型52例, B型14例), 計99症例を対象とした。急性中耳炎合併頻度は2001年シーズンA型10.9%, B型31.7%, 2002年シーズンA型18.1%, B型7.3%, 全体で15.8%であった。急性中耳炎合併例の平均年齢は2001年シーズンA型1.4歳, B型3.2歳, 2002年シーズンA型1.7歳, B型2.9歳で, インフルエンザ患者の平均年齢 (2001年シーズンA型5.3歳, B型3.5歳, 2002年シーズンA型4.3歳, B型7.4歳) より低値であった。2歳以下で特に合併率が高く, 38.7%に達していた。対象99症例中, 鼻咽腔拭い液97例, 中耳貯留液80例で細菌培養を実施し,
Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Moraxella catarrhalisが検出された症例は, それぞれ54例, 34例, 64例および11例, 7例, 3例であった。中耳貯留液を検体にインフルエンザウイルスの有無について検討し, 2001年シーズンB型19症例中17症例 (89.5%) で迅速診断キット陽性であった。2002年シーズンA型では, ウイルス培養, RT-PCRおよび迅速診断キットにより中耳貯留液中にインフルエンザウイルスが確認されたのは43症例中10例 (23.3%) で, 2002年シーズンB型ではウイルス培養, 迅速診断キットで13症例中6例 (46.2%) が陽性であった。インフルエンザに伴う急性中耳炎では, 低年齢児ほどその合併率は高値であった。また, シーズン・インフルエンザの型により頻度は異なるが, 中耳貯留液中にもインフルエンザウイルスの存在が明らかであった。
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