日本化学療法学会雑誌
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51 巻, 7 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 杉田 麟也
    2003 年 51 巻 7 号 p. 409-418
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Most investigations on infectious diseases or chemotherapy have been reported by teaching hospitals, such as university hospital, but the first step of treatment of infectious deseases occurs in outpatients clinics in general practice settings or small hospitals. Such institutions treat many newly diagnosed infectious desease patients, and their situations may be valuable for the investigators. I have investigated infections diseases and chemotherapy through clinical experience working at a community hospital from 1975 to 1994 and began making diagnose in 1995 as a general ENT practitioner. In 1979 I reported that major causative pathogens of pediatric acute otitis media were Streptococcus pneumoniae and Haemophilus in fluenzae, not Staphylococcus aureus. In 1988, I encountered the first case of acute otitis media caused by PISP and I discussed the clinical significance of PISP infections with co-investigators. Since 1998, we have been reporting that infectious disease caused by PISP have spread to adults without underlying diseases, mainly to young mothers in their 30 s, and their children are being diagnosed with otitis media & sinusitis caused by PISP as a result of intrafamilial cross contamination. In comparison with 2000 and 2002 susceptibility of Streptococcus pyogenes erythromycin and azithromycin has decreased, with MIC90 valves increasing from 0.1μg/mL to 6.25μg/mL. I have some doubts about the administration of fl uoroquinolones to patients with tonsillitis caused by S. pyogenes. Penicillins should be the first line treatment.
  • 矢野 寿一, 末武 光子, 遠藤 廣子, 高柳 玲子, 小林 俊光
    2003 年 51 巻 7 号 p. 419-424
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    インフルエンザにおける急性中耳炎合併頻度, 急性中耳炎症例から分離される菌種, 分離頻度, 中耳貯留液中のインフルエンザウイルスの有無を検討した。
    2001年2月から5) 1まで (2001年シーズン) と, 2002年1月から6月まで (2002年シーズン) に, 東北労災病院耳鼻科または小児科でA型およびB型インフルエンザと診断された症例のうち, 急性中耳炎を合併していた2001年シーズン33例 (A型7例, B型26例), 2002年シーズン66例 (A型52例, B型14例), 計99症例を対象とした。急性中耳炎合併頻度は2001年シーズンA型10.9%, B型31.7%, 2002年シーズンA型18.1%, B型7.3%, 全体で15.8%であった。急性中耳炎合併例の平均年齢は2001年シーズンA型1.4歳, B型3.2歳, 2002年シーズンA型1.7歳, B型2.9歳で, インフルエンザ患者の平均年齢 (2001年シーズンA型5.3歳, B型3.5歳, 2002年シーズンA型4.3歳, B型7.4歳) より低値であった。2歳以下で特に合併率が高く, 38.7%に達していた。対象99症例中, 鼻咽腔拭い液97例, 中耳貯留液80例で細菌培養を実施し, Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, Moraxella catarrhalisが検出された症例は, それぞれ54例, 34例, 64例および11例, 7例, 3例であった。中耳貯留液を検体にインフルエンザウイルスの有無について検討し, 2001年シーズンB型19症例中17症例 (89.5%) で迅速診断キット陽性であった。2002年シーズンA型では, ウイルス培養, RT-PCRおよび迅速診断キットにより中耳貯留液中にインフルエンザウイルスが確認されたのは43症例中10例 (23.3%) で, 2002年シーズンB型ではウイルス培養, 迅速診断キットで13症例中6例 (46.2%) が陽性であった。インフルエンザに伴う急性中耳炎では, 低年齢児ほどその合併率は高値であった。また, シーズン・インフルエンザの型により頻度は異なるが, 中耳貯留液中にもインフルエンザウイルスの存在が明らかであった。
  • 松本 哲朗
    2003 年 51 巻 7 号 p. 425
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
  • 門田 晃一, 公文 裕巳
    2003 年 51 巻 7 号 p. 426-430
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    細菌バイオフィルムは抗菌薬や生体側からの感染防御系に対して抵抗性因子となることから, 尿路バイオフィルム感染症は難治性を示す。特に, バイオフィルム形成の場となった基礎疾患が存続する症例では, 除菌が困難であり, 尿路感染の持続を容認することになる。尿路バイオフィルム感染症は尿流動態が良好に保たれていれば発熱などの急性症状を呈することはまれであり, 適切な尿路管理が実施されれば, 宿主と尿路バイオフィルム感染症の共棲も可能である。しかし, 尿路バイオフィルム感染症の持続は, 感染宿主のみならず病院内全体に対し臨床的問題を引き起こす。具体的には, 尿流動態の悪化に伴い急性感染症に移行し宿主の状態を重篤化させる病態であること, その慢性期においては院内感染に深く関与し交差感染の主たる汚染源となることが挙げられる。尿路バイオフィルム感染症の持続が宿主とそれを取り巻く環境におよぼす影響を考えると, 除菌を目的とした治療方法の考案と積極的な予防策を講じる必要性はきわめて高いと考える。
  • 平潟 洋一
    2003 年 51 巻 7 号 p. 431-434
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    難治性尿路感染症の成立要因には, 基礎疾患, 体内挿人物とそれに伴うbiofilmの形成などに加え, 原因菌の薬剤耐性の問題が挙げられる, 特に本来耐性傾向の強い緑膿菌が, 抗緑膿菌製剤に耐性を獲得し多剤耐性化した場合, 現存の抗菌薬はすべて無効である。その原因のひとつに, メタロβ-ラクタマーゼ産生が挙げられる。 多剤耐性緑膿菌やニューキノロン耐性菌は, 泌尿器科領域のみならず全領域で重要な耐性菌で今後さらに問題となる可能性が高い。分子レベルでの薬剤耐性機構が明らかとなっている今日では, 抗菌薬の開発と同時に耐性機構の阻害薬の開発も望まれる。
  • 石原 哲, 出口 隆
    2003 年 51 巻 7 号 p. 435-438
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    尿路性敗血症は尿路感染症のなかでもっとも重篤で生命を脅かす危険性のある感染状態である。本論文では, 泌尿器科領域における菌血症・敗血症の特殊性として, 尿路性器を侵入門戸とする菌血症の頻度は高いこと, 治療戦略として, 除ける尿路の基礎疾患は除くことが第一義的であるが, 強力な抗菌薬を第選択とすること, 特にカルバペネム系薬剤の適正な使用が薦められることなどについて自験例の解析をまじえ考察を行った。
  • 高橋 康一, 松本 哲朗
    2003 年 51 巻 7 号 p. 439-446
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2001年1月から2002年12月までに9施設で経験した腎重症感染症120例について, 保存的治療 (内科的治療) と外科的治療の有効性と限界をretrospectiveに検討した。症例の内訳は, 水腎症を伴う腎孟腎炎 (以下, 水腎症性腎孟腎炎) 76例, 膿腎症27例, 腎膿瘍, 腎周囲膿瘍14例, 気腫性腎盂腎炎3例であった。76例に外科的治療が施行されたが, もっとも多かったのは, 経皮的腎瘻造設術で, 33例 (43.4%) に行われた, 腎摘出術は10例 (13.2%) に施行されたが, 急性期の施行は2例のみであった, 水腎症性腎盂1腎炎は高い頻度 (61%) で保存的治療のみで治癒し, 外科的治療選択例のうち明らかな保存的治療失敗例は40%であった, 敗血症性ショックも保存的治療のみで治癒した。解熱までの期間は, いずれの治療でも3日間であった。腎膿瘍は, 43%が保存的治療のみで治癒したが, 外科的治療群では保存的治療無効例が多かった (87.5%)。解熱までに保存的治療と外科的治療併用群ではそれぞれ10.5日と3.5日を要した。また腎膿瘍のなかには他の感染症に対する外科的治療により生じるものもあった (水腎症性腎孟腎炎2例と腎膿瘍2例)。膿腎症は96%で外科的治療が選択され, 保存的治療1例は死亡した。また外科的治療選択のうち57%は内科的治療が無効によるものであった。敗血症性ショックが内科的治療中に発症した8例中6例は膿腎症であり, 頻度が高かった。気腫性腎孟腎炎では全例で外科的治療が選択されたが, 2例 (66.7%) に敗血症性ショックを生じ, 解熱までに11日を要していた, 腎重症感染症のうち水腎症性腎孟腎炎に対しては保存的治療で治療可能であり, 外科的治療がover treatmentとなる可能性もあることが示唆された。腎膿瘍も内科的治療で治癒する可能性があるが, ドレナージを目的とした外科治療は明らかに解熱までに要する期間において内科的治療にまさっていたことから, 積極的に外科的治療を施行してもよいと考えられた。気腫性腎孟腎炎や膿腎症は保存的治療の限界例と認識すべきである。
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