日本化学療法学会雑誌
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52 巻, 11 号
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  • 感染症の現状と細菌学的特徴
    山本 達男, 種池 郁恵, 中川 沙織, 岩倉 信弘
    2004 年 52 巻 11 号 p. 635-653
    発行日: 2004/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1997年から1999年にかけて米国で, 市中感染型のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (communityacquired methicillin-resistant Staphylococcus aureus; CA-MRSA) による小児死亡例がたて続けに報告された, 同時期, ヨーロッパ, オーストラリア等でも市中感染型MRSAが分離・報告され, さらに病原菌の特徴も明らかとなり, グローバル感染症として世界の注目を集めるようになった。市中感染型MRSAは, 従来のMRSA (院内感染型MRSA;HA-MRSA) とは由来の異なるMRSAで, Panton-Valentineロイコシジン (PVL) と1呼ばれる白血球破壊毒素を産生し, 多くの場合IV型のメチシリン耐性領域 (type IVSCCmec) をもつ, ただし, 遺伝学的には複数の異なったクローンからなりたっていて, 大陸特異的である。解析には必須遺伝子群塩基配列解析 (MLST), 発現調節遺伝子 (agr) やプロテインA遺伝子 (spa) の反復配列解析, 毒素遺伝子パターン解析などが川いられる。現在, ヨーロッパに1種類, 米国に数種類, そしてオセアニアに2種類, アジアに2種類の流行クローンが確認、されている。薬剤感受性は流行クローンによって異なり, ペニシリン・セフェム以外の多くの抗菌薬に感受性を示す場合もある。このような市中感染型MRSAは多くの場合, 皮膚, 軟部組織の感染症と関連し, 小児に多くみられる。一方で, 症例数は少ないが, より深刻な壊死性肺炎, 菌血し症が増加傾向にある。わが国の市中感染型MRSAは, 欧米の流行例とは様相が異なり, PVL陰性株が圧倒的に多く, 遺伝学的に多様である。稀に分離されるPVL陽性の市中感染型MRSAは, 欧米の主要型よりもオセアニア型に共1点が多い。PVL陽性の市中感染型MRSAの感染は健康な若者にも拡大している。世界分布調査, 高い感染リスクグループ・地域の特定, そして詳細な感染発症メカニズムの解析が進行中である。
  • 深澤 裕美, 遠藤 武, 内田 幹, 三上 美恵, 大屋 とし子, 井上 清太郎, 山本 ひろ子, 尾崎 由基男
    2004 年 52 巻 11 号 p. 654-659
    発行日: 2004/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    平成15年4月から同年9月までの6カ月間に山梨県内の6施設において, Candida属の分離頻度と耐性頻度を調査した。
    調査期間中に検査依頼された検体は合計8, 496検体であり, そのうちCandida属が優位に分離されたのは608株 (7.2%) であった。菌種別内訳はCandida albicansの分離頻度が最も高く, 分離されたCandida属全体の2/3に当たる67.3%(409株) を占めた。次いで, Candida glabrata (16.0%;97株), Can-dida tropicalis (14.0%;85株) の順であり, Candid apampsilosisは1.6%(10株) であった。
    分離頻度の高いC.albicans, C.glabrataおよびC.tropicalisの合計420株に対する感受性測定を行ったところ, amphotericin Bは1μg/mL, micafunginは0.13μg/mLで全株の増殖を抑制した。しかし, fluconazoleのMIC値は0.13μg/mLから≧128μg/mLに分布し, 川量依存的感性株は2.6%, 耐性株は2.1%存在していた。
    多施設で実施した真菌サーベイランス結果を詳細に解析することは診断と治療が困難な深在性真菌症における治療薬の選択の一助になるものと考えている。
  • 石坂 美紀, 高橋 綾子, 四方田 幸恵, 飯塚 恵子, 村上 正巳
    2004 年 52 巻 11 号 p. 660-663
    発行日: 2004/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    当院では, 2002年8月に入院患者の喀痰よりバンコマイシン耐性腸球菌 (vancomycin-resistantenterococci: VRE) が検出され, 2003年2月に他の患者の糞便よりVREが検出された。前者の分離株はバンコマイシン (VCM) のMICが8μg/mL, 後者の分離株は16μg/mLであった。後者からはVCM投与中止後に4μg/mLの株が分離された。これら3株ともVREselective培地 (BD) に発育を認め, van B遺伝子をもっていた。われわれは, この現象をVCMによる耐性誘導と考え実験を行った。4μg/mLの株はVCM加培地で培養したところ, MICの上昇が認められ, 誘導であることが確認された。日常検査でのMICのみの測定ではvan B遺伝子をもつVCMのMICが低い株を見逃す危険がある。
  • 石坂 美紀, 高橋 綾子, 四方田 幸恵, 飯塚 恵子, 村上 正巳
    2004 年 52 巻 11 号 p. 664-666
    発行日: 2004/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    バンコマイシン耐性腸球菌 (vancomycin-resistant enterococci: VRE) が検出されたことをきっかけに, 当院入院患者の便を用いてバンコマイシン (VCM) 耐性菌の保菌状態とVCM使用状況との関係を250名の糞便, 延べ459検体を対象として調べた。菌の検出はVCM4μg/mL加エンテロコッコセルブロスおよびVCM8μg/mL加エンテロコッコセル寒天培地を用いた。VCM投与群における耐性菌保有率は23名中12名 (52%) で, 非投与群の保有率182名中48名 (26%) に比べて有意に高値であった (P<0.05)。これらの結果から, VCM耐性菌の出現とVCM投与に関連があることが示唆され, VCMの慎重な投与が望まれるものと考えられた。
  • 辻 明良, 秋田 博伸, 清田 浩, 岩田 敏
    2004 年 52 巻 11 号 p. 667-744
    発行日: 2004/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
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