2001年10月から12月までの3か月間に当院で治療した小児急性中耳炎症例190例から鼻咽腔から検出された
Haeemophilus influenzae 267株についてpolymerase chain reaction (以下PCR) 法を用いてpenicillin binding protein (以下pbp) の変異およびTEM-1型不活性化酵素を支配する遺伝子の部分について検討を行った。検討を行った遺伝子は,(1) TEM-1型遺伝子,(2) pbp3-1遺伝子,(3) pbp3-2遺伝子である。検出された
H.influenzaeの内訳は, β-lactamase-nonproducing ampicillinsusceptible
Haemopkilus influenzae (以下BLNAS) 162株 (60.8%), β-lactamase-nonproducing and low-level ampicillin-resistant
Haemophilus influenne (以下10w-BLNAR) 27株 (10.1%), β-lactamase-nonproducing ampicillin-resistant
Haemopkilus influenzae (以下BLNAR) 39株 (14.6%), β-lactamase-producing ampicillin-resistant
Haemophihs influenzae (以下BLPAR) 23株 (8.6%), β-lactamase-producing and low-level amoxicillin-clavulanate resistant
Haemophilus influenzae, possessing TEM-1 and low-BLNARresistantgenes (以下BLPACR-1) 10株 (3.7%), β-lactamase-producing amoxicillin-davulanate resistant
Haemophilus influenzae, possessing TEM-1 and BLNAR resistant genes (以下BLPACR-II) 6株 (2.2%), 年齢との関係では, 各年齢とも感受性株であるBLNASが検出株の過半数を占めていた。耐性株においてBLNARは, 1歳代, 4歳代, 5歳代で検出数が多く, low-BLNARは2歳代をピークに1峰性の分布を認めた。BLPARは2歳代および1歳代をピークに1峰性の分布を認めた。BLPACR-IおよびBLPACR-IIは3歳代以下に多く認められ, BLPACR-Iは1歳代にBLPACR-IIは2歳代にピークを認めた。しかしながら, 7歳以上の症例では, TEM-I型遺伝子およびpbp遺伝子の変異を認めた症例は見られなかった。また検出株に対する耐性株の割合いは1歳と4歳にピークをもつ2峰性の分布を示していた。
Streptococcus pneumoniaeと異なり低年齢においても, 感受性株の割合いがまだ50%以上を占めていたが, 今後耐性株の割合いが
S. pneumoniaeのように増加することも考えられるため, 注意深く観察を要するものと考えられた。また, 従来のMIC値の測定よりより短時間で結果が得られるため, 耐性株の検出においては, PCR法を用いた検討は有効であると考えられた。
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