日本化学療法学会雑誌
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52 巻, 8 号
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  • 金子 明寛, 佐々木 次郎
    2004 年 52 巻 8 号 p. 393-400
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口抗菌薬の対象となる成人の歯科・口腔外科領域感染症の起炎菌を検討する目的で研究会を組織し, 細菌学的検討を行った。
    (1) 全国の一次医療機関3施設, 二次医療機関9施設の計12施設において, 歯周組織炎84例, 顎炎51例, 歯冠周囲炎10例の計145例から331株が集積された。
    (2) 次医療機関と二次医療機関の比較では, 好気性菌と嫌気性菌の比率, 起炎菌の形態, 細菌の分布をみると, 一次および二次医療機関の間に特別な差異は認められなかった。
    (3) 菌種別分布では, 好気性菌においては, Streptococcus constellatusなどの口腔レンサ球菌が80.6%を吉めていた。嫌気性菌においては, peptutreptococcu属が44.3%と最も多く, 次いでPreuotella属が25.9%であった。
    (4) 主要経口抗菌薬の4剤の抗菌力をMIC0.39μg/mLでの累積菌株の率でみると, AMPC (90%), CFPN (89%), CFDN (81%), CAM (76%) の順であった。
    (5) 口腔レンサ球菌に対する感受性をcFPNの臨床治験時 (1990-1991年) と約10年後の今回の抗菌力を比較すると, MIC0.05μg/mL以下では, 今回のほうがやや劣化していたが, 臨床的効果の期待できるMICO.39μg/mLのレベルでは, 96.9%と97.4%で変わらなかった。
    (6) CFPNの抗菌力は一次医療機関と二次医療機関ではほとんど差は認められなかった。
  • 砂押 克彦, 中山 栄一, 小林 玲子, 鈴木 悦子, 田島 剛, 生方 公子
    2004 年 52 巻 8 号 p. 401-407
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2002年4月から2004年3月までの間に, 小児のA群溶血レンサ球菌性咽頭・扁桃炎例から分離された総計533株のA群レンサ球菌を対象とした。これらの菌株に対するβ-ラクタム系薬8薬剤, macrolide (ML) 系薬4薬剤, clindamycinおよびtelithromycinの計14薬剤の感受性を測定した。β-ラクタム系薬のMIC90はcefditoren=cefdinir=cefcapene (0.008μg/mL), cefpodoxime (0.016μg/mL), ampicillin=amoxicillin=faropenem (0.031μg/mL), cefaclor (0.125μg/mL) の順で優れていた。本菌に対するML系薬のMIC 90は, β-ラクタム系薬に較べて明らかに劣っていた。TelithromycinのMIC 90は, 0.031μg/mLであった。これらの菌に対し, ML耐性遺伝子のermB, mefA, およびermTR の有無をPCRにて検索した。17株 (3.2%) がermB遺伝子保持株, 26株 (4.9%) がmefA遺伝子保持株, 3株 (0.5%) がermTR 遺伝子保持株であった. ermB保持株はすべてのML系薬に高度耐性, mefA保持株はjosamycin, clindamycinを除いた薬剤に1μg/mL以上のMICを示した。erm TR保持株に対する各薬剤の抗菌力はmefA保持株に近かった。
    T型別では, 12型 (32.3%) が最も多く, 次いでT4型, T1型, T13型, T25型等であった。ML耐性菌は多くの型に認められたが, その中のmefA保持株はその半数以上が増加傾向にあるT25型であった。優位に分離されるT型が変化しつつあると考えられ, 今後とも継続的なサーベイランスが必要と結論された。
  • 田中 香お里, 船橋 一照, 梶浦 泰一, 渡邉 邦友
    2004 年 52 巻 8 号 p. 408-415
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Faropenem (FRPM) の市販後調査の一環として, 1998年, 2000年, 2002年に分離された嫌気性菌 (Bacteroides fragizis 計75株, Bacteroides thetaiotaomicro n計64株, pigmented Prevotella spp. 計74株, 嫌気性グラム陽性球菌計75株, および. Propionibaotetrium acnes計75株) を対象に, 本薬および経II 抗菌薬8薬剤 (clavulanic acid/amoxicillin; CVA/AMPC, cefaclor, cefdinir, cefpodoxime, cefditoren, cefcapene, clanthromycin, levonoxacin) とカルバペネム系注射薬imipenem (IPM) の抗医菊力を調査し た。FRPM, IPM, CVA/AMPCは, 1998年分離株, 2000年分離株, 2002年分離株ともB. fragilis, B thetaiotaomicronを含めすべての菌群において強い抗下菌力を示し, 特にFRPMとIPMは, MIC90が≦0.06~4μg/mLと優れた抗菌力を示した。また, これら2薬剤に対するBacteroides spp. の高度耐性株は 認められなかった。経 [抗一菌薬としては, FRPMは各菌群に最も強い抗菌力を示した, また, 今回行った 隔年3回の調査では, FRPMの各菌群に対する抗一菌力に, 経年的な耐性化傾向は認められなかった。
  • 金子 明寛, 佐々木 次郎
    2004 年 52 巻 8 号 p. 416-425
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口抗菌薬の対象となる成人の歯科・口腔外科領域感染症に対するcefcapenepivoxil (CFPN-PI) の有用性を探索する目的で臨床的検討を行った。
    全国の一次医療機関 (開業歯科医院) 3施設, 二次医療機関9施設の計12施設において, 歯周組織炎84例, 歯冠周囲炎10例, 顎炎52例の計146例にCFPN-PIが投与された。
    (1) 主治医判定による有効率は疾患別では歯周組織炎84例で有効率90.5%, 歯冠周囲炎10例で有効率80.0%, 顎炎52例で有効率94.2%, 全体146例では有効率91.1%であった, 一次医療機関と二次医療機関で有効率を比較してみると87.7%と93.3%とほぼ同様であった。
    (2) 年齢別有効率は青年層で84.8%, 壮年層で92.1%, 高齢層で97.3%であった, 投与量別有効率は300mg/日の139例で91.4%, 450mg/日の7例で85.7%であった。
    (3)「歯科口腔外科領域における抗菌薬効果判定基準」による3日目判定では, 歯周組織炎59例では有効率91.5%, 歯冠周囲炎7例では有効率85.7%, 顎炎38例では有効率92.1%, 全体104例では有効率91.3%であった.
    (4) 新薬シンポジウム時との有効率の比較では, 主治医判定で89.8%と91.1%, 3日目判定で91.2%と91.3%と同等の成績であった。
    副作用は153例中2例 (1.4%) に軽度の副作用が認められた.
    以上の成績より, CFPN-PIは歯科・口腔外科領域感染症に対し300mg/日の常用量投与で, 開発時と同様の優れた治療効果と安全性を示したことから, 現時点でも本領域の治療に有用な薬剤であると検証された。
  • 中山 栄一, 砂押 克彦, 鈴木 悦子, 小林 玲子, 百村 芽衣, 舟木 尚美, 飯塚 雄俊, 近藤 康夫, 田島 剛, 生方 公子
    2004 年 52 巻 8 号 p. 426-432
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2001年2月~2003年7月までの問に, 博慈会記念総合病院小児科外来を受診し, 臨床症状からA群溶血レンサ球菌による咽頭炎・扁桃炎が疑われ, 迅速抗原検査によってA群溶血レンサ球菌が陽性と判定された622名を対象とした。これらの症例に対し, amoxicillin (AMPC), cefaclor (CCL), cefditorenpivoxil (CDTR-PI), cefcapene-pivoxil (CFPN-PI), clarithromycin (CAM), およびazithromycin (AZM) のいずれかを曜日ごとに薬剤を変える投与方法により除菌率の比較を行った, 投与期間終了後, その時点から7日目に再び細菌検査を行い, 除菌の有無を確認した。
    除菌率はCDTR-PIの投与例で (149/158例: 94.3%) と最も優れ, 次いでAMPC (98/110例: 89.1%), CFPNlPI (111/128例: 86.7%), CAM (63/75例: 84.0%), CCL (65/80例: 81.3%), そしてAZM (54/71例: 76.1%) の順であった。各薬剤問における除菌率には有意差が認められた。CDTR.PIとAMPCとの問には有意差を認めなかったが, CCL, CFPN-PI, およびCAMとの問には危険率5%以下で有意差を認め, さらにAZMとの問には危険率1%以下で明らかな有意差を認めた。特にCAMあるいはAZM投与例において, マクロライド耐性遺伝子保持株が起炎菌であった11例は全例で除菌されていなかった。
    以上の成績から, A群溶血レンサ球菌感染症の治療に際し, マクロライド系薬よりもβーラクタム系薬のほうがより適切であることが示唆された。
  • 小林 芳夫, 杉田 香代子, 上遠野 保裕
    2004 年 52 巻 8 号 p. 433-439
    発行日: 2004/08/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2002年9月~2003年3月に慶應義塾大学中央臨床検査部にて血液培養検体から分離・同定した145株を対象とし, meropenem (MEPM) の抗菌力を対照薬剤とともに測定した。さらに, 本検討における成績を同様に調査した1997年10月-1998年3月の分離株および1999年1-6月の分離株における成績と比較することにより, MEPMに対する血液由来臨床分離株の感受性動向を検討し, 以下の結果を得た。
    (1) MEPMは, カルバペネム系薬の中でも, グラム陰性菌に対して特に優れた抗菌活性を示し, Pseudomonas aeruginosaに対する耐性株 (MIC≧16μg/mL) も最も少なかった。
    (2) MEPMを含むカルバペネム系薬は, グラム陽性菌のうち, 本来抗菌活性を期待できないmethicillinresistant Staphylococcus aureusなどのブドウ球菌の多剤耐性株に対する抗菌力は不十分であったが, その他の菌株に対してはおおむね良好な抗菌力を示した。
    (3) 1997-1998年および1999年における分離株での成績と比較して, 2002年度分離株において, MEPM耐性株の顕著な増加は認められなかった。
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