日本化学療法学会雑誌
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52 巻, 9 号
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  • 谷風 尚子, 小松 方, 島川 宏一, 山本 育由
    2004 年 52 巻 9 号 p. 469-473
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    近年, pharmacokinetic (PK)/pharmacodynamic (PD) parametersが臨床効果と相関する報告が認められ, 中でもアミノ配糖体は最大血中濃度 (Cmax) およびMICの比と相関するといわれている。しかし, 現行のarbekacin (ABK) の薬物血中濃度モニタリング (TDM) による投与設計において, PDの指標となるMICは利用されていない。
    今回, ABK治療を施行した当院methicillin-resistantStaphylococcus aureus (MRSA) 肺炎患者44症例を対象にPK/PDparametersと臨床効果の関係についてretrospectiveに検討を行った。ABKの血清濃度は “蛍光偏光免疫測定法” で測定し, 体内動態解析は1コンパートメントモデルにより行った。ロジスティック回帰モデルで, 有効群26例, 無効群18例の比較 [P<0.01, Odds ratio=27.1 (95%Confidential Interval=3.1-Interval)] においてCmax/MICが8以上か否かが効果決定因子であり, 除菌群13例, 非除菌群31例の比較 [P<0.01, 0ddsratio=1.68 (95%Confidential Interval=1.2-2.3)] において, Cmax/MICが除菌効果との相関を示した。
    以上の結果から, ABK治療におけるCmax/MICと臨床効果との関係が示され, 治療効果予測におけるTDMにMICを含めたPK/PDparameterの導入の必要性が示唆された。
  • 外科医3,823名に対するアンケート調査
    炭山 嘉伸, 竹末 芳生
    2004 年 52 巻 9 号 p. 474-485
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    【目的】現在推奨される予防抗菌薬使用法がCDCのガイドラインや「抗菌薬使用の手引き」で勧告されているが, その実施の現状を把握する。
    【方法】2002年8-9月に, 47都道府県3, 823名 (北海道・東北567名, 関東1, 051名, 東海324名, 北陸・信越262名, 近畿643名, 中国・四国495名, 九州・沖縄481名) の外科医に対しアンケート調査を実施し, 地区別, 病院機能別, ベッド数別, 臨床経験年数別に勧告に対する実施率を比較した。
    【結果】勧告の実施率は, 予防抗菌薬の選択 (下部消化管, 第置.世代セファマイシン) 35%, 投与時期 (術直前) 63%, 投与期間 (4日以内);胃手術63%(3, 4日56%+短期7%), 大腸手術51%であり, 特に予防抗菌薬選択での実施率が低率であった。地区別では東海が長期投与53%と最も高率であった。病院機能別では, 長期投与は一般病院44%, 教育病院31%と差を認めた。ベット数別では, 100床未満の病院は500床以上と比較し術直前投与実施率が低く (45%vs66%), 長期投与が高率 (62%, 31%) であり, 勧告が守られていなかった。臨床経験年数別では, 5年未満のほうが20年以上.より, 薬剤選択 (41%vs34%), 投与時期 (73%vs55%), 投与期間 (68%vs59%), いずれも推奨されている内容の回答が高率に得られた。
    【結論】勧告の実施率は未だ低率で, 一般病院, 100床未満, 臨床経験年数20年以上でのさらなる啓蒙が必要と考えた。投与期間, 下部消化管手術での抗菌薬の選択に関しては, CDCの勧告と大きく異なっており, 日本でのrandomized controlledtrial (RCT) の実施が望まれる。
  • 佐藤 勝昌, 清水 利朗, 佐野 千晶, 冨岡 治明
    2004 年 52 巻 9 号 p. 486-489
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Mycobacterium auium complex (MAC) による感染症は難治性であり, 有効な新規抗菌薬や既存の抗菌薬と免疫調節剤との併用などによる治療レジメンの開発が望まれる。今回はそのような治療レジメンの開発を企図して, 宿主免疫能を充進するといわれている葛根湯, 補中益気湯あるいは十全大補湯のTHP-真ヒトマクロファージ株 (THP-1Mφ) およびA-549ヒトII型肺胞上皮細胞株内感染MACに対するclarithromycin (CAM)/rifampicin (RFP) の抗菌活性発現に及ぼす効果について検討した。その結果, CAM/RFPはTHP-1MφあるいはA-549細胞内のMACに対して有意なレベルの殺菌作用を示したが, 他方, 各漢方薬単独にはそのような殺菌作用のみならず増殖阻害作用も認め得なかった。さらに, CAM/RFPに各漢方薬を併用した場合でもCAM/RFPの殺菌作用の増強は認められなかった。
  • 石川 陽子, 愼 晴通, 大瀧 明, 岩倉 哲, 嶋田 甚五郎
    2004 年 52 巻 9 号 p. 490-507
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口セフェム系抗菌薬であるcefcapene pivoxil (CFPN-PI, フロモックス(R)錠75mg, フロモックス®錠100mg) は, 1997年4月に製造承認を取得後, 1999年4月までの2年間に, 新GPMSP (Good Post Marketing Surveillance Practice) に則り, 使用実態下での使用成績調査を実施し, その後2003年7月に再審査申請を行った。以下, 錠剤における使用成績調査結果について報告する。
    本調査では, 医療機関951施設から5, 801例の調査票を収集し, 安全性評価対象症例5, 766例, 臨床効果評価対象症例5, 574例, 細菌学的効果評価対象症例607例について検討した。結果の概要は以下のとおりである。
    (1) 副作用発現率 (臨床検査値異常を含む) は2.58%(149例/5,766例) であり, 承認時までの9.45%(303例/3,207例) に比較して低かった。副作用のうち最も多かったのは下痢であり, その発現率は0.61%(35件/5,766例) であった。
    (2) 疾患群別の有効率は, 90.9-100.0%であり, いずれも90%以上の高い有効率を示し, 承認時までの成績とほぼ同等の成績であった。
    (3) 適応菌種別の菌消失率は, 多くの菌種で90%以上を示し, おおむね承認時までの成績と同等であった。
  • 石川 陽子, 愼 晴通, 大瀧 明, 岩倉 哲, 嶋田 甚五郎
    2004 年 52 巻 9 号 p. 508-520
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口セフェム系抗菌薬であるcefcapene pivoxil (CFPN-PI, フロモックス(R)小児用細粒100mg) は, 1997年4月に製造承認を取得後, 1999年4月までの2年間に, 新GPMSP (Good Post Marketing Surveillance Practice) に則り, 使用実態下での使用成績調査を実施し, その後2003年7月に再審査申請を行った。以下, 小児用細粒における使用成績調査結果について報告する。
    本調査では, 医療機関566施設から3,073例の調査票を収集し, 安全性評価対象症例3,047例, 臨床効果評価対象症例2,979例, 細菌学的効果評価対象症例326例について検討した。結果の概要は以下のとおりである。
    (1) 副作用発現率 (臨床検査値異常を含む) は4.30%(131例/3, 047例) であり, 承認時までの6.63%(37例/558例) に比較して低かった。副作用のうち最も多かったのは下痢であり, その発現率は3.74%(114件/3,047例) であった。下痢は年齢が低いほど発現率が高くなる傾向が認められた。
    (2) 疾患群別の有効率は91.2-98.3%であり, いずれも90%以上の高い有効率を示し, 承認時までの成績とほぼ同等の成績であった。
    (3) 適応菌種別の菌消失率では, 多くの菌種で90%以上を示し, おおむね承認時の成績と同等であった。
    (4) 服用性は「のみやすい」または「普通」が94.0%を占め, 良好な成績であった。
  • 患者背景およびリスク要因の分析
    玉山 俊行, 田中 逸, 斎藤 篤
    2004 年 52 巻 9 号 p. 521-529
    発行日: 2004/09/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン系薬gatinoxacin (GFLX) を含有するガチフロ(R)錠は, 2002年6月に発売された。
    ガチフロR錠の発売後, 数力月の間に低血糖あるいは高血糖の副作用が報告され, 2003年3月には緊急安全性情報が発出されて糖尿病患者への投与が禁忌となった。
    今回, 2003年3井1までに報告された重篤な血糖値異常報告症例89例についての調査を行い, 得られた患者背景等のデータから血糖値異常のリスク要因を解析した。結果は次のとおりである。
    (1) 89例のうち低血糖症例が75例 (84.3%), 高血1糖症例が14例 (15.7%) であった。
    (2) 糖尿病合併例は低血糖症例で58例 (77.3%), 高血糖症例で11例 (78.6%) と高率であった。
    (3) 65歳以上の患者は低血糖症例で68例 (90.7%), 高血糖症例で10例 (71.4%) であった。
    (4) 低血糖症例での腎機能異常は, 腎機能を判定できた55例中49例 (89.1%), 高血糖症例でのそれは8例中7例 (87.5%) であった。
    以上の結果から, GFLXによる血糖値異常の主なリスク要因として, 「糖尿病」, 「加齢」, 「腎機能異常」が推察された。GFLXによる血糖値異常の副作川を防ぐためには, リスク要因を理解し, 添付文書に従って適切に使用することが大切である。
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