日本呼吸器学会の「呼吸器感染症に関するガイドライン-成人市中肺炎診療の基本的考え方-」(以下,「市中肺炎ガイドライン」) において, 肺炎球菌検出時の推奨薬剤のひとつとして, tosufloxacin tosilate (TFLX) やsparfloxacin (SPFX) 等のフルオロキノロン薬がある。しかし, その臨床的検討はほとんどなされていない。そこで, 今回, 市中肺炎ガイドライン等を参考に, 肺炎球菌性肺炎に対するフルオロキノロン薬TFLXの有効性について検討した。
肺炎患者のうち塗抹染色で肺炎球菌が疑われた症例 (以丁, 塗抹染色陽性例) とその中で
Strcptococcus pneumoniaeが検出された症例 (以下, 肺炎球菌検出例) を対象とした。塗抹染色陽性例68例と肺炎球菌検出例36例の患者背景に差は認められなかった。臨床効果は塗抹染色陽性例で1日量450mg投薬 (以下, 450mg群) が92.6%(25/27) の有効率を示し, 600mg投薬 (以下, 600群) が35例全例有効であった。無効の2例は市中肺炎ガイドラインにおける中等症であった肺炎球菌検出例では450mg群が93.6%(15/16), 600mg群が16例全例有効であった。
S.pneumoniaeの消失率は450mg群が94.1%(16/17), 600mg群が93.8%(15/16) であった。今回分離された
S.pneumoniaeに対するTFLXのMIC
90は0.25μg/mLであり, 健康成人の血中濃度から求めた1日AUCをもとに算出したAUC/MIC ratio (AUIC) は450mg投与が46.4,600mg投与が62.0であった。
TFLXは肺炎球菌性肺炎に対し, 臨床的検討, 抗菌力および体内動態の基礎的な面から有効性が認められ, 抗肺炎球菌活性の強いレスピラトリーキノロンであることが確認された。
TFLXを肺炎球菌性肺炎に使用する際は, 軽症から中等症を対象とし1日450mgまたは600mgを投薬する。また, 中等症でも臨床症状や各種検査所見から炎症反応が強い場合には, 高用量の600mg投薬が望ましいと考えられた。ただし, 最近, キノロン耐性肺炎球菌の増加が報告されており, 安易な使用は避けるべきである。
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