日本化学療法学会雑誌
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53 巻, Supplement1 号
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  • 辻 雅克, 古谷 信彦, 松本 哲哉, 石井 良和, 大野 章, 舘田 一博, 宮崎 修一, 山口 惠三
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 1-16
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいカルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM, S-4661) のin vitroおよびin vivo抗菌力について, imipenem (IPM), panipenem (PAPM), meropenem (MEPM), biapenem (BIPM), cefpirome (CPR), ceftazidime (CAZ) あるいはcefotaxime (CTX) を比較薬として検討した。
    臨床分離株methicillin-susceptible Staphyeococcus属やpenicillin-resistant Streptococcus pneumoniaeなどのグラム陽性菌, Escherichia coliEnterobacter cloacaeなどのグラム陰性の腸内細菌, Moraxellacatarrhalts, Haemophiluts influenzae, Bordetelta pertussisなどに対し, DRPMは強い抗菌力を示し, MIC90は1μg/mL以下であった。Pseudomonas aeruginosaに対する抗菌力はDRPMが最も強く, 特にIPM耐性P. aeraginosaに対しても他のカルバペネムに比べて強かった。
    Staphylococcus aureus Smith, E.coli C-11およびceftazidime-resistant P. aerugimosa TUH302を用いたマウス全身感染やpenicillin-resistant S. pneumoniae TUH741あるいはβ-lactamase産生H. influenzaeTUH36を用いたマウス呼吸器感染モデルにおいて, DRPMはIPM-cilastatin (CS) やMEPM-CSと同程度の良好な治療効果を示した。以上のin vitro, in vivo成績から, DRPMの臨床での有効性が期待された。
  • 桑原 京子, 平松 啓一
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 17-23
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規注射用カルバペネム系抗菌薬, Doripenem (DRPM, S-4661) のmethicillin-susceptible Staphylococcusaureus (MSSA), methicillin-resistant S. aureus (MRSA), Staphylococcus epidermiclis, Staphylococcushaemolyticus, Streptococcus pneumoniae, Streptococcus pyogenes, Enterococcus faecalis, Enterococcus faecium, Moraxella catarrhalis, Haemophilus influenzae, Escherichia coli, Klebsiellapneumoniae, Proteus vulgaris, Morganella morganii, Enterobacter cloacae, Serratia marcescens, Pseudomonas aeraginosaの臨床分離株に対するMIC90は, 0.1, 50, 25, 25, 0.2,≦0.006, 6.25,>100, 0.025, 1.56, 0.1, 0.2, 6.25, 0.39, 1.56, 6.25, 12.5μg/mLであった.DRPMのPBPsに対する親和性は, 感受性のS. aureus 209PのPBP 3に対してimipenem (IPM) より若干親和性が低かったが, 高度耐性MRSAのPBP2'に対して若干高い親和性を示した. ポピュレーション解析においてもDRPMは, 耐性度の低い菌に対してIPMより抗菌力が弱かったが, 耐性度の高い菌に対してはIPMより抗菌力が若干強い傾向がみられた.P. aerugimsa PAO1のPBP3α, 3βに対する結合親和性は, IPMより高かった.
  • 田中 香お里, 渡邉 邦友
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 24-31
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    カルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) の嫌気性菌に対するin vitro抗菌力を検討し, imipenem (IPM), meropenem (MEPM), bigpenem (BIPM) およびclindamycin (CLDM) の抗菌力と比較した. また, Bacteroides fragilis, PrevoteUa bivia由来のβ-lactamaseに対するDRPMの安定性についても検討した.
    DRPMは, 他のカルバペネム系抗菌薬と同様, 嫌気性菌においてもグラム陽性菌およびグラム陰性菌を通じて幅広い抗菌スペクトルを示し, ほとんどの被験菌株の発育を≦0.025-0.78μg/mLで阻止し, 全般に強い抗菌力を保持していた. カルバペネム系薬の抗菌力は数管の幅で近接していたが, 全般にDRPMはIPM, MEPMより1-2管高く, BIPMと同じか1管低いMIC値を示す傾向にあった. また, DRPMは, 他のカルバペネム系薬と同様にmetallo-β-lactamase以外のB. fragilisP. biviaのβ-lactamaseに安定であった. 臨床分離株を用いた検討でも, DRPMの抗菌力は他のカルバペネム系薬と近接しており, B. fragilis, Bacteroides thetaiotaomicronに対するMIC90が0.78μg/mL黒色色素産生, および非産生のPrevotella spp., Fusobacterium spp. や Peptstreptococcus anaerobius以外の主要な嫌気性球菌, およびCllostridium perfringensに対するMIC90が0.39μg/mL以下と良好な抗菌力を示した.
    以上のことより, DRPMは, 嫌気性菌感染症においても効果が期待できる有用な抗菌薬であることが示唆された.
  • 西野 武志, 大槻 雅子, 井澤 政明
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 32-46
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Doripenem (DRPM) はグラム陽性菌および陰性菌に対し幅広い抗菌スペクトルを有し, かつ強い抗菌力を示した. 各種臨床分離株に対するDRPMの抗菌力はmethicillin-susceptible Staphylococcus aureusに対するMIC90が0.1μg/mL, Streptococcus 属に対するMIC90は0.025μg/mL以下を示し, imipenem (IPM) やpanipenem (PAPM) に比べて1/2程度劣るが, meropenem (MEPM) より2倍程度優れた結果であった. 一方, 多くのグラム陰性菌に対してDRPMのMIC90は0.78μg/mL以下の強い抗菌力を示し, その抗菌力はIPMおよびPAMより2-8倍程度強かったが, MEPMに比べて1/2-1/4劣っていた. また, DRPMはPseudomonas aeruginosaに対し3.13μg/mLのMIC90を示し, その抗菌力はIPMやMEPMと同程度, PAPMやceftazidime (CAZ) に比べて優れていた. DRPMはS. aureus, EscherichiacoliおよびP. aeruginosaに対して作用濃度に応じた強い殺菌作用を示し, CAZが静菌的作用しか示さなかった定常期初期のE. coliおよびP. aeruginosaに対しても殺菌的に作用した. また, DRPMはP.aeruginosaに対してpostantibiotic effect (PAE) を示し, その時間は2.0時間でありIPMと同程度であった. これらの優れたin vitro抗菌力を反映して, 種々の感染菌による各種マウス感染モデルに対しDRPMは良好な治療効果を示した. 特に, P. aeruginosa全身感染モデルに対するDRPMの治療効果はimipenem/cilastatin (IPM/CS), meropenem/cilastatin (MEPM/CS) と同程度であり, CAZに比べて優れていた. また, DRPMの実験的マウス肺および尿路感染に対する治療効果でもIPM/CSやMEPM/CSと同様にin vitro抗菌力を反映した優れた治療効果を示した.
  • 岡本 了一, 中野 竜一, 佐藤 優子, 井上 松久
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 47-51
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Doripenem (DRPM) の各種β-ラクタマーゼ産生菌に対する抗菌力をimipenem, cefotaxime, ceftazidimeおよびcefepimeと比較して検討した. β-ラクタマーゼは大きく4つのクラスに分類できるが, DRPMは基質拡張型β-ラクタマーゼ (ESBL) を含むクラスA, グラム陰性菌の染色体性セファロスポリナーゼを含むクラスCおよびオキサシリン分解型ペニシリナーゼを含むクラスDβ-ラクタマーゼ産生菌に強い抗菌力を示した. しかし, IMP型β-ラクタマーゼに代表されるクラスBに属するカルバペネマーゼ産生菌に対する抗菌力は弱いことが明らかになった.
    また, β-ラクタマーゼ産生菌に対する抗菌力は, IPMのそれに比べて2-4倍強かった.
  • 戸塚 恭一, 菊池 賢
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 52-56
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規カルバペネム系薬doripenem (DRPM) について, Staphyloceccus aureus Smith株, Klebsiellapneumoniae BK株, Escherichia coti ATCC25922株, Pseudomonas aeruginosa ATCC27853株に対するin vitro postantibiotic effect (PAE) とin vivo抗菌作用について検討した。PAEの検肘は4 MIC濃度でDRPM, imipenem (IPM), panipenem (PAPM) およびceftazidime (CAZ) を2時間接触させ評価した。in vivo抗菌作用の検討は好中球減少マウス大腿感染モデルを使用し, in vivoにおける抗菌作用を投与後の菌数が抗菌薬投与時の生菌数まで回復する時間をeffective regrowth time (ERT) として評価した。
    DRPM, IPM, PAPM, CAZのin vitro PAEは, S. aurensに対しては1.9時間, 1.6時間, 1.8時間, 1.8時間, K. pnezemoniaeに対しては0.3時間, 0.5時間, 0.4時間, 0, 1時間, E. cotiに対しては0.5時間, 0.6時間, 0.6時間, 0.4時間, P. aeraginosaに対しては1.8時間, 1.0時間, 1.0時間,-0.3時間を示した。
    In vivo抗菌作用の検討では, S. aureus感染モデルにおいて, DRPM, IPM/cilastatin (CS), PAPM/betamipron (BP) を50mg/kg投与した場合のERTは, 7.8時間, 12.3時間, 10.8時間であった。K. pneumoniae感染モデルにおいて, DRPM, IPM/CS, PAPM/BP, meropenem (MEPM), CAZを50mg/kg投与した場合のERTは, 5.0時間, 5.5時間, 4.3時間, 5.0時間, 6.0時間であった。P. aeruginosa感染モデルにおいてDRPM, IPM/CS, PAPM/BP, MEPM, CAZを100mg/kg投与した場合のERTは, 8.0時間, 9.8時間, 8.3時間, 5.3時間, 2.7時間であった。
    DRPMのS. aureus, K. pneumoniae, E. coliに対するPAEは他のカルバペネム系薬と同程度であり, P. aeruginosaに対するPAEは最も長かった。また, DRPMのin vivo抗菌作用は, K. pneumoniae感染モデル, P. aenuginosa感染モデルにおいては他のカルバペネム系薬と同程度であったが.S. aureus感染モデルに対しては, IPM/CS, PAPM/BPよりも弱いものであった。
  • 藤村 享滋, 木村 美司, 吉田 勇, 東山 伊佐夫, 地主 豊, 宗景 正, 黒田 直美, 土肥 正善, 西川 徹, 山野 佳則
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 57-70
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規カルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) のin vitro抗菌活性について検討した。DRPMは好気性グラム陽性菌から陰性菌および嫌気性菌に対して幅広い抗菌スペクトルを示した。また各種細菌の2002年臨床分離株を用いた感受性試験において, DRPMは, Staphylococcus属のメチシリン感性株やStreptococcus属に対して≦0.016-1μg/mhのMIC90を示し, 腸内細菌科の各菌種やMoraxella catarrhalis, Haemophilus influenzaeに対しても0.031-1μg/mLのMIC90を示し, 優れた抗菌力を有していた。他のカルバペネム系抗菌薬の抗菌力と比較すると, おおむね好気性グラム陽性菌ではimipenem (IPM) やpanipenemに次ぐ優れた活性を有し, 好気性グラム陰性菌ではmeropenem (MEPM) に次ぐ優れた活性を有していた。さらにPseudomonas aeneginosaに対するMIC90, MIC90はおのおの0.5, 8μg/mLであり.試験をした抗菌薬の中で最も強い抗P. aeruginosa活性を示した。こうしたDRPMの抗菌力は培地pHや接種菌量などの諸因子の影響を受けにくいことも示された。またStaphylococcus aureus, Escherichia coliに対するMBC測定やtime-kill studyから, 抗菌力に伴った強い殺菌力を備えもつことも示された。DRPMは他のカルバペネム系抗菌薬と同様にmetallo-β-lactamaseにより加水分解を受けたが, 基質拡張型β-lactamaseも含めてclass A, C, Dのβ-lactamaseに対して安定であった。DRPMの作用機序であるpenicillin-binding protein (PBP) への結合親和性を検討した結果, DRPMはMEPMと同様にS. aureztsのPBP1, P. aeruginosaのPBP2, PBP3, E. coliのPBP2の活性を主に阻害することにより抗菌力を発揮しているものと考えられた。S. aumas, P. aeruginosaおよびE. coliの各株をDRPM, MEPMまたはIPM薬剤存在下で継代培養して得られた菌株では, いずれの薬剤に対してもMICの上昇がみられ, 互いに交叉耐性を示した。
  • 佐藤 剛章, 辻 雅克, 岡崎 健一, 松田 早人, 吉冨 とり子, 三和 秀明
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 71-79
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    マウスならびにラットを用いた各種の実験的感染モデルに対する新規注射用カルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) のin vivo抗菌活性を, meropenem/cilastatin (MEPM/CS), imipenem/cilastatin (IPM/CS), ceftazidime (CAZ) およびampicillin (ABPC) と比較検討するとともに, DRPMならびにDRPM/CS投与後のマウス, ラットにおけるDRPM血漿中濃度推移も併せて検討した.
    DRPM単独投与時のマウス血漿中濃度推移は, CS併用時とほぼ同じであった. 一方, ラットにおいては, CSとの併用によりDRPMの血漿中濃度推移は明らかに改善された. マウスにおけるDRPMならびにラットにおけるDRPM/CSの血漿中濃度推移は, それぞれの動物でのMEPM/CSやIPM/CSの血漿中濃度推移と同程度であった.
    ペニシリン耐性Streptococcus pneumoniae (PRSP) を含むグラム陽性菌4菌種5株ならびにCAZ耐性Enterobacter cloacaeを含むグラム陰性菌6菌種6株を感染菌としたマウス全身感染に対し, DRPMは前者の感染系で0.02-6.26mg/kg (ED50), 後者の感染系で0.04-2.49mg/kgと良好な治療効果を示した. グラム陽性菌感染に対するDRPMの治療効果は, MEPM/CS, CAZやABPCより強かったが, IPM/CSに比べて弱かった. 一方, グラム陰性菌感染においては, IPM/CSに比べて強い治療効果を示したが, MEPM/CSより弱かった.
    PRSPを感染菌に用いたマウス肺感染に対し, DRPMは3mg/kg以上の投与で肺内生菌数をcontrol群に比べて有意に減少させ, ABPCより明らかに強い良好な治療効果を示した. また, PRSP性ラット髄膜炎に対し, DRPM/CSの10mg/kg以上の投与でcontrol群に比べて有意な除菌効果が観察され, ABPCより明らかに強, 良好な治療効果を示した. これらのPRSP性感染モデルに対するDRPMならびにDRPM/CSの治療効果は, MEPM/CSに比べて同程度以上であったが, IPM/CSより明らかに弱かった. Staphylococcus aureusを感染菌に用いたラット心内膜炎では, DRPM/CSは4mg/kg以上の投与でcontrol群に比べて有意な除菌効果を示し, MEPM/CSやCAZよりも明らかに優れ, IPM/CSと同程度であった.
    以上, DRPMは, PRSPを含むグラム陽性菌ならびにCAZ耐性菌を含むグラム陰性菌による各種の動物感染モデルに対して, in vitro抗菌活性と血漿中濃度推移を反映した優れた治療効果を示した.
  • 三和 秀明, 木村 美司, 地主 豊, 藤村 享滋, 西川 徹, 宗景 正, 黒田 直美, 山野 佳則, 辻 雅克, 岡崎 健一, 佐藤 剛 ...
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 80-91
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規注射用カルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) の特徴であるPsendomonas aeruginosaに対する抗菌活性について, 臨床分離株に対する感受性, 外膜透過性の変化による耐性獲得, 殺菌作用, postantibioticeffect (PAE) ならびに各種のマウス感染モデルにおける治療効果を検討し, 以下の成績を得た.
    2002年に臨床分離されたP. aeruginosa 71株に対して, DRPMはMIC90: 8μg/mLを示し, meropenem (MEPM), imipenem (IPM) やbiapenemより2倍, panipenemに比べて4倍強く, カルバペネム系抗菌薬の中で最も強い抗菌活性であった. また, 抗緑膿菌薬であるamikacinに比べて2倍, ceftazidime (CAZ) やsulbactam/cefoperazoneより8倍強活性であった. さらに, CAZ耐性株15株 (MIC: ≧16μg/mL) およびIPM耐性株27株 (MIC: ≧8μg/mL) の中で, DRPMが4μg/mL以下のMICを示す株数は, それぞれ6および16株と他のカルバペネム系抗菌薬やCAZに比べて最も多く, DRPMはこれら耐性菌にも最も優れた抗菌活性を示した.
    各種のP. aeruginosa外膜透過性変異株に対するDRPMのMICを測定した結果, IPM透過孔形成蛋白OprDの欠損や薬剤排出ポンプMexAB-OPrMの高産生によるDRPMの抗菌活性の低下は1/2と, MEPMに比べて小さかった.
    2002年の臨床分離P. aeruginosa 20株に対するDRPMの平均MBCは, 0.84μg/mLを示し, MEPM: 1.37μg/mL, IPM: 2.30μg/mL, CAZ: 9.85μg/mLに比べて優れていた. DRPMのMBCは, 試験したすべての株においてMICの2倍以内であり, 強い殺菌力を伴った抗菌活性を示した. 短時間作用のtimekill試験では, DRPMは時間依存的な殺菌作用を示し, その殺菌力はMEPMやIPMとほぼ同じであった.
    CAZ感性のP. aeruginosaに対するPAEについて, in vitroならびにマウス肺感染モデルで検討した. いずれの試験でもCAZはPAEを示さなかったが, DRPMはそれぞれ0.79, 6.12時間のPAEを示し, その効果はMEPMやIPMと同程度であった.
    CAZ耐性株を含むP. aeruginosaを感染菌に用いた健常ならびに好中球減少症マウス全身感染に対して, DRPMは0.17-4.87mg/kg (ED50) と良好な治療効果を示した. DRPMの治療効果は, CAZよりはるかに強く, IPM/cilastatin (CS) より強く, MEPM/CSと同程度であり, in vitro抗菌活性をほぼ反映した結果であった. また, CAZ耐性株を感染菌としたマウス肺感染および尿路感染に対しても, 良好な治療効果を示し, その効果は, IPM/CSと同程度以上, MEPM/CSと同じであった.
    以上の成績から, DRPMは, P. aeruginosa感染症に対して優れた臨床有効性が期待できる注射用カルバペネム系抗菌薬と考えられた.
  • 山野 佳則, 川井 悠唯, 湯通堂 隆
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 92-95
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規注射用カルバペネム系抗菌薬doripenemのヒト腎dehydropeptidase-I (DHP-I) に対する安定性を検討した。既存カルバペネム系抗菌薬であるimipenemはDHP-Iに不安定であるため, DHP-I阻害薬であるシラスタチンとの合剤として臨床で用いられており, カルバペネム系抗菌薬のヒトにおける体内動態を評価するうえでは, DHP-I安定性は重要な位置づけとされている。
    本研究においては, COS-1細胞で高発現後, シラスタチンをカップリングしたアフイニテイークロマトグラフィーによって精製したヒト腎由来DHP-I組換え蛋白を用いて, doripenemの分解活性を評価した。精製蛋白は, SDSポリアクリルアミド電気泳動によりほぼ単一のブロードなバンドを示したことから, 糖蛋白として産生されていることが示唆された。
    組換えヒト腎DHP-Iを用いた安定性試験において, imipenemは濃度に依存した速やかな分解が観察された。DHP-I存在下でimipenemを90分培養した時の残存活性が20%となるような条件下で, ヒトDHP-Iに対する安定性が高いことが報告され臨床では単剤で使用されているカルバペネム系抗菌薬meropenemは80%程度の高い残存活性を示した。新規カルバペネム系抗菌薬doripenemもmeropenemと同程度の高いDHP-I安定性を有することが示されたことから, ヒト体内において単剤で高い安定性を有することが示唆された。
  • 黒田 直美, 宗景 正, 山野 佳則
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 96-103
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1回あたりの投与用量あるいは1日あたりの投与回数を変化させた種々の投与条件時に生ずるヒト血中濃度推移を試験管内で再現して新規カルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) の殺菌力を評価し, MIC以上の濃度を維持する時間 (T>MIC) との相関性を検討した. その結果, 多数株を用いた本試験において観察された殺菌効果はT>MICと相関しており, 両者の相関関係を調べた結果, 24時間作用中のT>MICが40%程度まで達すると最大に近い殺菌効果が得られ, 25%程度まで達すると24時間培養後の生菌数が初菌数よりも低く維持できることが示された.
    DRPMのMICが0.5μg/mL以下のEscherichia coli, メチシリン感性Staphylococcus aureus, Pseudomonas aeruginosa臨床分離株に対しては, DRPMを250mg×2回/日投与時の血中濃度推移をシミュレートした時に, 24時間あたり35%以上に相当するT>MICが得られ, 強い殺菌効果が観察された. この場合, 投与用量あるいは投与回数を増やした時に, T>MICは増加するものの殺菌効果の大きな改善は観察されなかった. 一方, MICが2μg/mL以上のP. aeruginosa臨床分離株については, DRPMを250mg×2回/日投与時の血中濃度推移をシミュレートした時に25%以下のT>MICが得られるにとどまった. このような場合には, 投与用量あるいは投与回数を増やす投与条件とし, T>MICを増加させることによって, 殺菌効果の増大が観察された. また, 1回あたりの投与用量を増加するよりも1日あたりの投与回数を増やすほうが, T>MICの増加の程度が大きく, 殺菌効果も大きく改善する傾向が観察された.
    以上の結果より, doripenemの薬効をより有効に発揮できる用法・用量を推定するうえで, T>MICを指標にすることが有用であることが示唆された.
  • 中島 光好, 尾熊 隆嘉
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 104-123
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    健康成人男子志願者計46名を対象に, 新規注射用カルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) の安全性および薬物動態を検討するための第1相試験 (薬物動態試験) を行った. 試験内容は, 1回125-1,000mgの点滴静注による単回投与試験, 1回500mgおよび1,000mg 1日2回6日間計11回の点滴静注による反復投与試験および1回500mg 1日3回1日間, 計3回の点滴静注による反復投与試験であった.
    1. 安全性
    単回投与試験で副作用は認められなかった、また, 全試験を通じて脳波検査および理学的検査に異常は認められなかった. 反復投与試験時に, 自他覚所見および臨床検査値に軽度の症状や軽度の異常変動が認められたものの, 臨床的に問題となるほどのものはなかった.
    2. 薬物動態
    単回投与試験において, CmaxおよびAUCはDRPMの投与量に比例して増加し.本薬の体内動態の線形性が確認された. DRPMの消失半減期はいずれの投与量においても約1時間で, 投与後24時間までにDRPMの未変化体として約75%が尿中に排泄された.
    反復投与試験成績から, DRPMの体内動態は, 反復投与による変化はほとんどなく, 蓄積性もないことが判明した.
    3. 血清蛋白結合率
    測定時点ごとの平均値として5.4-15.2%であった.
    4. 腸内細菌叢
    DRPM投与による変動はわずかであった.
    以上の成績から, DRPM 1,000mgまでの投与は, 安全性に問題はなく, 反復投与によっても体内動態は単回投与時とほとんど変化せず, 蓄積性はないことが明らかとなった.
  • 中島 光好, 瀬底 正吾, 尾熊 隆嘉
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 124-129
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    65歳以上の健康な男子志願者6例を対象に, 新規注射用カルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) の第I相臨床試験 (薬物動態試験) を行った. 投与は1回250mgの単回投与 (0.5時間点滴静注) とし, 加齢がDRPMの薬物動態に及ぼす影響を別途実施した健康成人男子 (非商齢者) の成績と比較することにより検討した. 併せて, 高齢者におけるDRPMの安全性の評価を行い, 以下の成績を得た.
    高齢者と非高齢者との間で消失半減期, AUCおよび全身クリアランスに有意差が認められたものの, その差は大きなものではなく, 平均血漿中濃度推移には高齢者と非高齢者との間に大きな差は認められなかった.
    副作用は認められなかった.
    以上の成績より, DRPM250mgの単回投与時の体内動態に加齢による影響はほとんどないと考えられ, 高齢の感染症患者に対しても, 非高齢者と同様の用法・用量で使用可能で, 安全性にも問題のないことが示唆された.
  • 上原 慎也, 村尾 航, 瀬野 祐子, 安東 栄一, 門田 晃ー, 狩山 玲子, 津川 昌也, 中島 光好, 公文 裕巳
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 130-135
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    腎機能障害患者におけるdoripenem (DRPM) の体内動態を健康成人男性の成績と比較検討した. Ccrを指標として腎機能障害の程度により軽度障害患者: 50≦Ccr<70mL/min (I群, n=4), 中等度障害患者: 30≦Ccr<50mL/min (II群, n=6), 高度障害患者: Ccr<30mL/min (III群, n=2) の3群に分け, 健康成人男性を対象とした第I相臨床試験の成績と比較した.
    DRPM250mg単回投与後のAUCは健康成人群20.26μg・h/mL, I群40.55μg・h/mL, II群48.21μg・h/mL, III群64.31μg・h/mLであり, Ccrの低下に応じて増加した. 血中消失半減期はそれぞれ0.90, 1.98, 2.16, 3.56時間で, Ccrの低下に応じて延長した.
    投与開始後24時間までの尿中排泄率は健康成人群74.5%, I群63.9%, II群67.3%, III群58.2%であり, Ccrの低下により減少する傾向が認められた.
    副作用は認められなかった.
    以上の成績より, 本薬剤を腎機能低下例に使用する場合には投与量, 投与間隔を充分に考慮する必要があると考えられた.
  • 柴 孝也, 中島 光好
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 136-142
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規注射用カルバペネム系抗菌薬であるdoripenem (DRPM) の腎排泄機序の検討を目的として, 健康成人男子志願者8名を対象に, DRPM (250mg) 単独使用群とprobenecid併用使用群の2薬剤2期による非盲検のcross over単回点滴静注試験を実施した. 血中濃度と尿中濃度の測定により薬物動態の違いを検討し, 以下の成績を得た.
    DRPM単独使用群とprobenecid併用使用群の薬物動態パラメータの値は, Cmax: 15.7±2.8μg/mL, 18.1±1.4μg/mL, AUC: 17.10±2.56μg・h/mL, 29.86±2.10μg・h/mL血中消失半減期: 0.94士0.16h, 1.44±0.11hであった. Probenecid併用によりCmaxおよびAUCの有意な増加 (使用群間の変動に対してそれぞれp=0.0091, p<0.0001) や血中消失半減期の有意な延長が認められた (p=0.0002). また, 全身クリアランス: 14.91±2.22L/h, 8.41士0.58L/h, 腎クリアランス: 12.00±2.21L/h, 552±0, 71L/h, 点滴静注開始から12時間後までの累積尿中排泄率: 80.4±8.0%, 658±8.6%の各パラメータは, probenecid併用使用によりいずれも有意に低下した (それぞれp<0.0001, p=0.0001, p=0.0017).
    以上のように, DRPM単独使用群とprobenecid併用使用群における各薬物動態バラメータの平均値には有意差が認められ, ヒトでのDRPMの腎排泄機序は, 腎糸球体濾過による排泄のみならず尿細管での分泌の関与が示唆された.
  • 嶋田 甚五郎, 山口 惠三, 柴 孝也, 斎藤 厚, 守殿 貞夫, 稲松 孝思
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 143-156
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規注射用カルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) の内科および泌尿器科領域における感染症患者を対象とした前期第II相試験を, 全国41医療機関による多施設共同研究として実施し, 本薬の有効性, 安全性の検討を行うとともに, 本薬の適応疾患と用法・用量の瀬踏み的評価を行った.
    総症例数106例のうち, 有効性評価は75例 (内科: 41例, 泌尿器科: 34例), 安全性評価は106例 (症状) および105例 (臨床検査値), 有用性評価は75例を解析対象とした. なお, 評価の参考として喀痰中DRPM濃度 (5例) を測定した.
    DRPMの投与量は, 125mg×2回/日, 250mg×2回/日, 250mg×3回/日あるいは500mg×2回/日の点滴静注 (30-60分) とした. 得られた成績は以下のとおりであった.
    1. 有効性の結果 (評価対象75例)
    (1) 臨床効果 (著効および有効): 内科95.1%(39/41例), 泌尿器科97.1%(33/34例), 全体96.0%(72/75例)
    (2) 細菌学的効果 (消失および菌交代): 内科86.4%(19/22例), 泌尿器科97.1%(33/34例), 全体92.9%(52/56例)
    2. 安全性の結果
    (1) 副作用 (症状: 評価対象106例) は3例に3件 (舌のしびれ感, 頭痛, 発疹) 発現したが重篤なものはなく, いずれも投与終了後に消失した.
    (2) 副作用 (臨床検査値: 評価対象105例) は25例 (45件) に発現し, その主なものはGPT上昇10.6%(11/104例), GOT上昇5.8%(6/104例), 好酸球増多74%(7/95例) などであった. 変動の程度はいずれも軽度であり, 投与終了後に正常化または前値に復した.
    (3) 概括安全度 (評価対象105例) の安全率は98.1%(103/105例) であった.
    3. 有用性の結果 (評価対象75例)
    ・有用率: 内科92.9%(39/42例), 泌尿器科93.9%(31/33例), 全体93.3%(70/75例)
    慢性気道感染症と複雑性尿路感染症を対象に行った前期第II相臨床試験において, DRPMの有効性については非臨床の抗菌力から期待されたとおりの成績が得られ, 安全性についても臨床上問題となるような副作用は認められず, 本薬は感染症の治療において有用な薬剤であることが示唆された.
  • 斎藤 厚, 嶋田 甚五郎, 柴 孝也, 稲松 孝思
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 157-168
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    内科領域において, 新規の注射用カルバペネム系抗菌薬であるdoripenem (DRPM) の後期第II相試験を実施した.
    1. 臨床効果
    慢性呼吸器疾患の二次感染, 肺炎等 (肺炎, 肺化膿症, 膿胸), 急性上気道感染症群の扁桃周囲膿瘍, 胆道感染症の胆嚢炎を対象に, DRPM 1回250mg 1日2回, 1回250mg 1日3回, 1回500mg 1日2回のいずれかの用法・用量にて3-14日間投与した。臨床効果は全体で876%(92/105例) であった。疾患別には慢性呼吸器疾患の二次感染93.1%(27/29例), 肺炎等84.9%(62/73例) であり, 急性上気道感染症群2例および胆道感染症1例も有効以上の臨床効果が得られた。
    2. 細菌学的効果
    細菌学的効果は, 投与前後で菌の推移が検討できた36例全例で消失が確認され, 消失率100.0%であった.
    3. 安全性
    安全性については, 症状と臨床検査値異常に分けて評価した。副作用 (症状) 発現率は1.9%(2/108例), 副作用 (臨床検査値) 発現率は30.2%(32/106例) であった。しかし, 本薬剤に特有な副作用は報告されなかった。
    以上の成績より, 内科領域感染症患者に対してDRPM 1回250mgまたは500mg, 1日2-3回投与により, 十分な治療効果を有するものと考えた。
  • 斎藤 厚, 渡辺 彰, 小田切 繁樹, 青木 信樹, 松島 敏春, 那須 勝, 中島 光好, 山口 惠三, 嶋田 甚五郎
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 169-184
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規の注射用カルバペネム系抗菌薬であるdoripenem (DRPM) において, 推定臨床推奨用量とした1回250mg, 1日2回投与の臨床推奨用量としての妥当性を確認する目的で, 慢性呼吸器疾患の二次感染を対象に, 無作為化, 二重盲検により有効性, 安全性を検討した。なお, 臨床推奨用量の適切性を相対的に評価するため, 高用量の対照群としてDRPM1回500mg, 1日2回投与群を設定した。得られた成績は以下のとおりである。
    1. 臨床効果
    有効性評価対象例70例における250mg×2回/日投与群の例数は36例であった。有効率は, 100.0%(36/36例) であり, 95%信頼区間は90.3-100.0%であった。既存のカルバペネム系抗菌薬における治験時の成績を勘案し, 慢性呼吸器疾患の二次感染で本薬剤に期待した有効率 (想定有効率) は85%としていたが, これを上回る有効率であり, その数値ならびに推定精度の観点から, 1回250mg, 1日2回投与が慢性呼吸器疾患の二次感染に対する臨床推奨用量として妥当であることが確認された。なお, 500mg×2回/日投与群における有効率は, 88.2%(30/34例) であり, 因菌の消長の評価が可能であった36例における消失率は, 250mg×2回/日投与群94.1%(16/17例), 500mg×2回/日投与群89.5%(17/19例) であり, 2用量群間に有意差は認められなかった.
    3. 安全性
    安全性については, 症状と臨床検査値異常に分けて評価した。副作用 (症状) 発現率は, 250mg×2回/日投与群2.6%(1/38例), 500mg×2回/日投与群2, 9%(1/34例) であった。 また, 副作用 (臨床検査値) 発現率は, 250mg×2回/日投与群28.9%(11/38例), 500mg×2回/日投与群23.5%(8/34例) であった。いずれの副作用発現率においても, 2用量群間に有意差は認められなかった。
    以上の成績より, DRPM1回250mg1日2回投与は, 慢性呼吸器疾患の二次感染に対する臨床推奨用量として妥当であると判断し, 十分な治療効果を有するものと考えた。
  • 斎藤 厚, 渡辺 彰, 中田 紘一郎, 小田切 繁樹, 青木 信樹, 松島 敏春, 河野 茂, 那須 勝, 中島 光好, 山口 惠三, 嶋田 ...
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 185-204
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規の注射用カルバペネム系抗菌薬であるdoripenem (DRPM) の呼吸器感染症に対する有効性, 安全性を検討する目的で, meropenem (MEPM) を対照薬として, 無作為化, 二重盲検並行群間, 非劣性比較試験を実施した。DRPMを1回250mg1日2回 (DRPM群), またはMEPMを1回500mg 1日2回 (MEPM群) いずれも7日間投与 (点滴静注) した。得られた成績は以下のとおりである。
    1. 臨床効果
    有効性評価対象例193例に対する有効率は, DRPM群92.7%(89/96例), MEPM群90.7%(88/97例) であり, DRPMのMEPMに対する臨床効果の非劣性が検証された。
    2. 細菌学的効果
    有効性評価対象例193例のうち, 原因菌の消長の評価が可能であった91例における消失率は, DRPM群86.0%(37/43例), MEPM群95.8%(46/48例) であり, 両薬剤群間に有意差は認められなかった。
    3. 安全性
    安全性については, 有害症状と臨床検査値異常変動に分けて評価した。有害症状評価対象例218例における副作用 (症状) 発現率は, DRPM群8.1%(9/111例), MEPM群6.5%(7/107例) であった。また, 臨床検査値異常変動評価対象例217例における副作用 (臨床検査値) 発現率は, DRPM群23.4%(26/111例)。MEPM群25.5%(27/106例) であった。いずれの副作用発現率においても, 両薬剤群間に有意差は認められなかった。
    以上の成績のとおり, 呼吸器感染症の治療において, DRPM1回250mg1日2回7日間投与は, MEPM1回500mg 1日2回7日間投与と同等の優れた治療効果 (非劣性) を示した。
  • 斎藤 厚他
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 205-215
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規の注射用カルバペネム系抗菌薬であるdoripenemの院内肺炎に対する治療効果を確認するため, 44歳から95歳までの18例の症例において, 探索的に有効性と安全性の検討を行った。
    有効性評価対象となった15例における用法・用量は, 1回500mgの1日2回投与例が10例, 1日3回投与例が3例, 1回1,000mgの1日2回投与例が1例, また, 1回500mgの1日2回投与で治療を開始し, 症状の改善に伴い高齢のため1回250mgに減量された症例が1例であった。これらの症例に対する臨床効果は, 1例を除き全例有効であり, 各症例において治療開始時に期待したとおりの臨床効果を得ることができた。
    また, 本薬剤による副作用 (症状) は, 1例において偽膜性大腸炎が認められたのみであり, 副作用 (臨床検査値) は5例において認められ, 肝機能検査値における異常変動が主なものであった。
    以上の検討より, 本薬剤は, 院内肺炎の治療薬として有用であることが示唆された。
  • 守殿 貞夫
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 216-229
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    カルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) の泌尿器科領域感染症に対する有効性, 安全性および用法・用量 (一般臨床試験), ならびに前立腺組織への移行性 (体液・組織内濃度測定試験) を検討した。
    1. 有効性
    一般臨床試験における検討症例は, 急性単純性腎盂腎炎1例, 複雑性腎盂腎炎9例, 複雑性膀胱炎11例, 急性細菌性前立腺炎6例および細菌性精巣上体炎5例であった。DRPM250mg×2回/日, る臨床効果 (有効率) は, 84.4%(27/32例) であった。最も多く検討された250mg×2回/日投与における臨床効果 (有効率) は87.5%(21/24例) であった。また, UTI薬効評価基準 (第3版) における総合臨床効果 (有効率) は, 複雑性尿路感染症 (腎盂腎炎・膀胱炎) に対して100.0%(16/16例) であった。投与開始前の分離菌の消失率は, グラム陽性菌13株, グラム陰性菌21株, 合計34株に対し, 97.1%であった。
    2. 薬物動態
    体液・組織内濃度測定試験では前立腺切除術等の手術患者を対象に, DRPM 250mgまたは500mgを1回投与し, 投与開始60-160分後までの間に血液および前立腺組織を同時期に採取した。前立腺組織内濃度は, 250mg投与で0.76-2.23μg/g, 500mg投与で1.04-451μg/gであった。
    3. 安全性
    一般臨床試験では, 副作用 (症状) が40例中3例 (7.5%), 副作用 (臨床検査値) が39例中8例 (20.5%) 認められた。また, 体液・組織内濃度測定試験での副作用 (症状) は13例中すべてに認められず, 副作用 (臨床検査値) が12例中1例 (8.3%) 認められた。いずれの試験においても重篤なものは認められず, 臨床上問題となるものはなかった。
    以上の結果より, DRPMは泌尿器科領域感染症に対して高い有効性と安全性を示し, また前立腺組織への薬物移行も良好で, 有用性の高い薬剤であると考えられた。
  • 守殿 貞夫, 荒川 創一, 公文 裕巳, 松本 哲朗, 中島 光好, 片岡 陳正, 嶋田 甚五郎
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 230-243
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    複雑性尿路感染症に対するカルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) の臨床推奨量を検討するため, 1回250mg 1日2回投与 (250mg投与群) を推定臨床推奨量とし, 1回500mg 1日2回投与 (500mg投与群) との対比による用量検討試験を実施した。患者条件はUTI薬効評価基準 (第3版) に合致した投与前膿尿5WBCs/hpf以上, 投与前細菌尿104CFU/mL以上を有する同意取得時年齢が20議以上79歳以下の入院患者とした。ただし, 前立腺術後症例については術後6カ月以上経過した患者とし, カテーテル留置の患者は対象外とした。臨床推奨量の確認において, 250mg投与群の総合臨床効果 (有効率) は97.4%であり, 95%信頼区間は8a2-99.9%であった。この有効率は本治験で想定した有効率90%に対する95%信頼区間 (78.6-98.3%) の下限値を下回らず, 想定有効率を上回る成績であった。また, 500mg投与群との比較において, 主要評価項目である総合臨床効果 (有効率) は250mg投与群では97.4%(37/38例), 500mg投与群では96.9%(31/32例) であり, 2群間で有意差は認められなかった (p=near 1)。副次的評価項目の膿尿効果の正常化率 (250mg投与群: 60.5%, 500mg投与群: 750%), 細菌尿効果の陰性化率 (250mg投与群: 94.7%, 500mg投与群: 84.4%), 細菌学的効果の消失率 (250mg投与群: 95.7%, 500mg投与群: 97.7%), 治験担当医師の臨床効果の有効率 (250mg投与群: 94.7%, 500mg投与群: 84.4%) のいずれも2群間で有意差は認められなかった。れらの結果から, 250mg投与群は500mg投与群に比して遜色のない有効性をもつと考えられた。安全性については, 副作用 (症状) の発現率は250mg投与群で4.9%, 500mg投与群で2.9%, 副作用 (臨床検査値) の発現率は250mg投与群で15.4%, 500mg投与群で152%であり, いずれも2群間で有意差は認められなかった。
    以上の結果より, 90%の想定有効率を上回った250mg投与群の有効率97.4%の成績とその推定精度ならびに500mg投与群との対比の結果を加味して, DRPMの1回250mg 1日2回投与は複雑性尿路感染症に対する臨床推奨量として妥当であると判断した。
  • 守殿 貞夫, 荒川 創一, 廣瀬 崇興, 岸 洋一, 津川 昌也, 松本 哲朗, 田中 正利, 川原 元司, 中島 光好, 片岡 陳正, 嶋 ...
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 244-259
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    複雑性尿路感染症に対するカルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) の臨床的有用性を客観的に評価する目的で, meropenem (MEPM) を対照薬とした二重盲検比較試験を行った。対象疾患は尿路に基礎疾患を有する複雑性尿路感染症とし, 患者条件はUTI薬効評価基準 (第3版)(以下UTI基準) に合致した投与前膿尿5WBCs/hpf以上, 投与前細菌尿104CFU/mL以上を有する同意取得時年齢が20歳以上79歳以下の入院患者とした。用法・用量は, DRPM1回250mgi日2回, MEPM1回500mg 1日2回で5日間連続投与とした。主要評価項目はUTI基準に従い, 総合臨床効果における有効率とした。総合臨床効果 (有効率) はDRPM群で96.1%(73/76例), MEPM群で88, 6%(70/79例) であり, DRPMのMEPMに対する非劣性が検証された (Pn=0.0003)。細菌学的効果 (投与前尿中分離菌の消失率) はDRPM群で959%(94/98株), MEPM群で96.2%(101/105株) であり, 消失率においてDRPMのMEPMに対する非劣性が検証された (Pn=0.0036)。グラム陽性菌およびグラム陰性菌のいずれにおいても, 2薬剤群ともに95%を超える高い消失率を示し, 菌種別にみてもいずれの菌種に対しても2薬剤群ともに80%以上の消失率であった。治験担当医師による臨床効果の有効率はDRPM群で93.4%(71/76例), MEPM群で92.4%(73/79例) であり, DRPMのMEPMに対する非劣性が検証された (Pn=0.0098)。安全性については, 副作用 (症状) の発現率はDRPM群で43%(4/92例), MEPM群で4.0%(4/101例), 副作用 (臨床検査値) の発現率はDRPM群で17.6%(16/91例), MEPM群で22.2%(22/99例) であり, いずれも2薬剤間に有意差は認められなかった (Pe=1.0000, 0.4709)。これらの成績から, 複雑性尿路感染症に対し, DRPMは1回250mg 1日2回投与により, MEPMの1回500mg 1日2回投与と同等の有用な薬剤であると判断された。
  • 谷村 弘, 相川 直樹, 炭山 嘉伸, 横山 隆
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 260-272
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    幅広い抗菌力を有する新しいカルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) について, その体内動態を検討するため胆嚢胆汁中・胆嚢組織内濃度測定試験 (前期第n相試験) および腹腔内浸出液中濃度測定試験 (第III相試験) を実施した。また, 臨床効果を検討するために外科感染症患者を対象とした後期第II相および第III相試験を実施した。その結果, 以下の成績を得た。
    1. 体内動態
    胆嚢摘出手術予定患者10例にDRPM 250mg 30分単回点滴静注した時, 胆嚢胆汁中濃度は<0.16~154μg/mL, 胆嚢組織内濃度は<0.10~1.87μg/gであった。
    開腹手術を施行した患者5例にDRPM 250mg 30分単回点滴静注し, 経時的に検体を採取した時の最高血漿中濃度は10.5~24.4μg/mL, 最高腹腔内浸出液中濃度は2.36~5.17μg/mLであった。
    2. 臨床効果と安全性
    後期第II相試験として, 手術創感染22例, 腹腔内膿瘍4例, 腹膜炎7例, 肝膿瘍4例, 胆嚢炎6例, 胆管炎5例に対して, DRPM 250mg 1日2~3回または500mg 1日2回を3~14日投与した結果, 臨床効果は著効12例, 有効31例, やや有効2例, 無効3例で, 有効率は89.6%(43/48例) であった。細菌学的効果における消失率は61.3%(19/31例) であった。副作用として症状の発現率は2.1%(1/48例), 臨床検査値異常の発現率は15.2%(7/46例) であった。
    第III相試験として, 腹腔内膿瘍7例, 肝膿瘍2例, 胆嚢炎6例にDRPM 250mg 1日2~3回, または500 mg 1日2回を4~14日投与した結果, 臨床効果は, 著効2例, 有効13例で, 有効率は100%であった。細菌学的効果における消失率は54.5%(6/11例) であった。副作用としての症状は認めなかったが, 臨床検査値異常は26.7%(4/15例) に認めた。
    以上の成績から, DRPMは1回250mgを1日2~3回, または1回500mgを1日2回投与することにより, 外科感染症に対して有用な薬剤と考えられる。
  • 岡田 弘二, 保田 仁介, 平林 光司, 松田 静治
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 273-285
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規注射用カルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) の産婦人科性器感染症に対する有用性を評価する目的で, 基礎的, 臨床的検討を行い, 以下の結果を得た。
    1. 基礎的検討 (体液・性器組織内移行の検討)
    基礎的検討として, DRPM 250mg 30分点滴静注後の性器組織内濃度と血漿中濃度, およびDRPM 250mgまたは500mg 30分点滴静注後の骨盤死腔液中濃度と血漿中濃度を測定した。DRPM 250mg 30分点滴静注後 (点滴開始後40~360分) における性器組織内濃度は, 子宮各組織で0.33~9.89μg/g, 子宮付属器各組織で<0.20~10.6μg/g, であり, 血漿 (肘静脈血) 中濃度は0.80~21.5μg/mLであった。DRPM 250mgまたは500mg 30分点滴静注後の最高骨盤死腔液中濃度はそれぞれ3.15~9.82μg/mL, 9.53~13.9μg/mL, 点滴終了時の血漿中濃度実測値 (最高血漿中濃度) は14.0~30.8μg/mL, 26.2~50.7μg/mLであった。
    2. 臨床的検討
    総投与例数59例のうち, 臨床効果判定可能症例54例 (子宮内感染: 9例, 子宮付属器炎: 10例, 子宮勇結合織炎: 18例, 骨盤腹膜炎: 14例, ダグラス窩膿瘍: 3例) における有効率は88.9%(48/54例) であった。細菌学的効果は80.0%(24/30例) の消失率であった。自他覚的副作用は薬疹 (1例), 舌しびれ・手足のしびれ・全身倦怠感 (1例) の計2例に認められたが, いずれも軽度で投与継続中に消失した。臨床検査値異常変動による副作用は11例にみられ, 発現率22.0%(11/50例) であった。GOT上昇, GPT上昇などの肝機能検査値の軽度変動が主であり, 重度の変動は認められなかった。
    以上の結果から, DRPMは産婦人科性器感染症に対して, 有用性の高い薬剤であると考えられた。
  • 三鴨 廣繁, 玉舎 輝彦
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 286-292
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    カルバペネム系抗菌薬であるdoripenem (DRPM) について, 産婦人科領域感染症に対する臨床応用の基礎資料とするために, 産婦人科領域臨床分離菌株に対する抗菌力および薬物体内動態試験を施行した。産婦人科領域細菌感染症から分離・同定された5菌種, 135株 (Streptococcus agalactiae 33株, Escherichia coli 31株, Finegoldia magna 21株, Bacteroides fragilis 22株, Prevotella bivia 28株) を用いて, 日本化学療法学会標準法の寒天平板希釈法に従って, DRPMの薬剤感受性試験を行った。体内動態試験としては, DRPM 250mgを30分間で点滴静注した場合における女性生殖器 (子宮・卵管・卵巣) への組織移行試験, 骨盤死腔液移行試験を施行した。検討した菌株に対するDRPMのMIC60およびMIC90は, それぞれ0.25μg/mL, 1μg/mL以下であった。産婦人科領域感染症の主要な原因菌である好気性菌S. agalactiae, E. coli, 嫌気性菌F. magna, B. fragilis, P. biviaに対して, DRPM1μg/mLの 濃度では, 90%以上の菌株の発育が阻止された。DRPMは, 250mgを30分で点滴静注した場合, 肘静脈中血漿では0.11~18.4μg/mL, 子宮内膜では0.20未満~2.89μg/g, 子宮体部筋層では0.20未満~3.58μg/g, 卵管では0.20未満~2.86μg/g, 卵巣では0.20未満~4.52μg/gの濃度で検出された。骨盤死腔液中濃度は, 投薬終了1時間後に21.9μg/mLと最高濃度を示し, それ以降は, 時間の経過とともに減少したが, 投薬終了から6時間しても0.69μg/mLのDRPM濃度が検出された。
    DRPMは, 産婦人科領域感染症の主要な原因菌に対して優れた抗菌力を示すとともに, 体内動態も他のカルバペネム系薬と同等であることが証明された。
  • 馬場 駿吉, 鈴木 賢二, 宮本 直哉
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 293-302
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規の注射用カルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) について, 耳鼻咽喉科領域における組織移行性を検討した。また, 耳鼻咽喉科領域感染症のうち, 中等症または重症の中耳炎および扁桃周囲膿瘍 (重症の陰窩性扁桃炎, 扁桃周囲炎を含む) を対象とした一般臨床試験を実施し, DRPMの有効性および安全性を検討した。
    1. 薬物動態試験
    DRPM 250mg点滴静注後の, 手術時摘出組織 (口蓋扁桃, 中耳粘膜) における薬物濃度および同時期の血漿中濃度に対する比率は, 口蓋扁桃0.27~2.58μg/g, 6.1~33.2%(60~155分), 中耳粘膜0.26~6.09μg/g, 2.7~42.9%(60~90分) であった。
    2. 一般臨床試験
    DRPMを1回250mg 1日2回, 1回250mg 1日3回, 1回500mg 1日2回のいずれかの用法・用量にて7日間投与し, 中耳炎では, 著効4例, 有効1例, やや有効1例, 扁桃周囲膿瘍においては, 著効4例, 有効2例であった。また, 中耳炎の収集症例を対象にDRPM投与後の中耳分泌物中濃度を測定した結果, DRPMの臨床推奨用量と考えられる1回250mg投与 (4例) において, 濃度および同時期の血漿中濃度に対する比率は, 0.32~0.72μg/mL, 42~18.8%(75~170分) であった。細菌学的効果は, 投与前後で菌の消長が検討できた9例 (中耳炎5例, 扁桃周囲膿瘍4例) で検討し, 中耳炎では4例消失, 1例減少 (一部消失), 扁桃周囲膿瘍においては4例全例消失であった。安全性においては, 副作用 (有害症状) が6.7%(1/15例), 副作用 (臨床検査値異常変動) が26.7%(4/15例) 認められたが, 重篤なものはなかった。
    以上の結果, DRPMは耳鼻咽喉科領域組織への移行性が良好であり, 耳鼻咽喉科領域感染症患者に対してDRPM 1回250mgを1日2~3回, または1回500mgを1日2回投与により, グラム陽性菌, グラム陰性菌および嫌気性菌に対する幅広い抗菌スペクトルと強い抗菌活性を反映した臨床的有用性を示すことが示唆された。
  • 荒田 次郎, 渡辺 晋一, 宮地 良樹, 古江 増隆
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 303-312
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規の注射用カルバペネム系抗菌薬であるdoripenem (DRPM) の皮膚組織への移行性ならびに深在性皮膚感染症に対する臨床的検討を多施設共同で行い, 以下の成績を得た。
    DRPM 250mgを1回点滴静注 (30分間) した時の皮膚組織中濃度は点滴静注開始30~70分後で2.29~3.15μg/g, またほぼ同時期の血漿中濃度は6.48~18.1μg/mLであり, 組織中濃度/血漿中濃度比は15.7~36.9%であった。
    臨床的検討において, 分離されたStaphylococcus aureus 2株に対するMIC値は0.05μg/mLであった。DRPMは1回250mg 1日2回または500mg 1日2回のいずれかの用法・用量により, 5~8日間投与された。全体の有効率は100%(19/19例) であり, 疾患ごとの症例数は, 蜂巣炎10例, 丹毒3例, リンパ管炎3例, リンパ節炎1例, よう2例であった。菌消失率は85.0%(17/20株) であった。副作用 (症状) は22例中3例 (13.6%) に, 副作用 (臨床検査値) は22例中8例 (36.4%) に認められた。1例で本薬による所定の治療終了後cefcapene pivoxil内服に切り替え3日後に偽膜性大腸炎が発症し, 本薬との関連が否定できなかったが, vancomycin投与により速やかに治癒した。これらの成績より, DRPMは深在性皮膚感染症の治療に対する効果が期待できる薬剤であると考えられた。
  • 大石 正夫, 宮永 嘉隆, 大野 重昭, 藤原 隆明, 佐々木 一之, 塩田 洋
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 313-322
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規注射用カルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) 250mg点滴静脈内投与時の本薬の眼組織 (前房水) への移行性を検討した。また, 眼科領域感染症として角膜潰瘍, 眼窩感染および眼内炎の患者へDRPM250mgを1日2回または3回, あるいは500mgを1日2回点滴静脈内投与した時の本薬の有効性および安全性の検討を行った。
    1. 組織移行性試験
    白内障手術施行患者へのDRPM点滴静脈内投与開始70~115分後の前房水中DRPM濃度は0.16~0.87μg/mL, またほぼ同時期の血漿中の本薬の濃度は6.86~12.9μg/mLであった。
    2. 第III相一般臨床試験
    1) 有効性
    評価対象は15例 (角模潰瘍10例, 眼窩感染4例, 眼内炎1例)。1日投与量別の症例数は250mg×2回投与が9例, 250mg×3回投与および500mg×2回投与が, おのおの3例で, 臨床効果における有効率は100.0%(15/15例) であった。
    投与前後で菌の消長が検討可能であった症例は8例 (角膜潰瘍4例, 眼窩感染3例, 眼内炎1例) であった。これら8例の内訳はα-Streptococcus感染例が1例, Corynebacterium sp.感染例が3例, Pseudomonas aerugimosa感染例が2例, Propionibacterium acnes感染例が1例およびStaphylococcus aurensPrevotella intermediaの混合感染例が1例であり, これら8例全例において原因菌はすべて消失した。また, 投与後出現菌は認められなかった。
    2) 安全性
    評価対象は本薬を投与した全症例の15例で, 主要評価項目として副作用 (症状, 臨床検査値) の有無を検討した。
    有害症状が4例 (8件) に認められたが, 軽度または中等度で, 副作用 (症状) と判定された症例はなかった。
    臨床検査値異常変動が5例 (5件) に認められ, これらすべては治験薬との因果関係が否定されなかった。このため, 副作用 (臨床検査値) は, 5例 (5件: アラニンアミノトランスフェラーゼ上昇3件, アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ上昇, γ-グルタミルトランスペブチダーゼ上昇, 各1件) となり, 発現率は33.3%(5/15例) であった。程度はすべて軽度で, 転帰はすべて正常化であった。なお, これらの副作用 (臨床検査値) の多くは類薬での療法において認められている事象と同様の事象であった。
  • 佐々木 次郎, 金子 明寛
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 323-331
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新規の注射用カルバペネム系抗菌薬であるdoripenem (DRPM) の口腔内組織への移行性を検討する体内動態試験および歯科・口腔外科領域感染症を対象とした第III相臨床試験を実施し, 以下の成績を得た。
    1. 口腔内組織への移行性の検討 (体内動態試験)
    口腔外科手術施行患者10例にDRPM250mgを点滴静注 (30分間) し, 口腔内組織への移行を検討した結果, 各組織における濃度ならびに対血漿比は, 歯肉0.34~2.19μg/g, 14.3~47.9%(70~105分), 嚢胞0.36~1.10μg/g, 77~21.4%(60~75分) であった。
    2. 第III相臨床試験
    1) 臨床効果
    DRPM 1回250mg1日2回, 1回250mg1日3回, 1回500mg1日2回のいずれかの用法・用量における3~7日間投与時の治験責任医師/治験分担医師による臨床効果は, 顎炎において著効11例, 有効2例で有効率100.0%(13/13例), 顎骨周辺の蜂巣炎においても, 著効6例, 有効5例で有効率100.0%(11/11例) であった。
    2) 細菌学的効果
    細菌学的効果は, 顎炎では13例全例消失, 消失率100.0%(13/13例), 顎骨周辺の蜂巣炎では, 10例消失, 1例不変と消失率90.9%(10/11例) であった。
    3) 安全性
    歯科・口腔外科領域感染症患者における副作用 (症状) 発現率は4.2%(1/24例), 副作用 (臨床検査値) 発現率は33.3%(8/24例) であった。
    以上の成績のとおり, DRPM250mg点滴静注後の口腔内組織への移行は良好であり, 歯科・口腔外科領域感染症患者に対してDRPM1回250mgまたは500mg, 1日2~3回投与により, グラム陽性菌, グラム陰性菌および嫌気性菌に対する幅広い抗菌スペクトルと強い抗菌活性を反映した臨床的有用性を示した。
  • 斎藤 厚, 守殿 貞夫, 横山 隆, 山口 惠三, 嶋田 甚五郎
    2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 332-340
    発行日: 2005/07/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    敗血症および感染性心内膜炎を対象として, 新規の注射用カルバペネム系抗菌薬であるdoripenem (DRPM) を1回500mg, 1日2~3回点滴静注し, 本薬剤の有効性と安全性の検討を行った。
    総投与症例数は11例であり, 敗血症が9例, 感染性心内膜炎が2例であった。敗血症の9例の内訳は, 泌尿器科系の原発感染巣を有する症例が7例, 外科系の原発感染巣を有する症例が2例であった。投与期間は, 敗血症が3~14日間, 感染性心内膜炎が28日間であった。患者状態により・治験責任医師・治験分担医師の判断で適切な投与回数が選択された結果, 期待どおりの臨床所見の改善が得られ, いずれの症例においても臨床効果は「有効」となった。また, 原因菌を特定し得た症例は5例であり, 敗血症ではKlebsietlla pneumoniaeによる単独菌感染が1例, Escherichta coliによる単独菌感染が2例, 感染性心内膜炎ではStreptococcus sanguisStreptococcus vestibularisによる単独菌感染が各1例であった。いずれの症例においても, 投与終了時に原因菌は消失した。
    副作用については, 副作用 (症状) が2例において認められ, 1例では便秘が, もう1例では嘔吐と下痢が発現した。副作用 (臨床検査値) は3例において認められ, ALT (GPT) 上昇が1例, ALT (GPT) とγ-GTPの上昇が1例, 好酸球増多が1例であった。しかし, DRPM特有の副作用はみられず, いずれも投与中または投与終了後に消失あるいは改善した。
    以上の成績から, 本薬剤は1回500mgを1日2~3回投与することにより, 敗血症および感染性心内膜炎に対して, 治療効果が期待できる薬剤であると考えられた。
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