新しいキノロン系抗菌薬moxifioxacin (MFLX) の
in vitroおよび
in vivo抗菌力を, ciprofloxacin (CPFX), sparfloxacin (SPFX), tosufloxacin (TFLX) およびlevofloxacin (LVFX) と比較して検討した。
1. MFLXのMICはグラム陽性標準株に対して≦0.006~0.78μg/mL, グラム陰性標準株に対して≦0.006~3.13μg/mhであり, 幅広い抗菌スペクトルを示した。
2. MFIXの臨床分離株に対する抗菌力 (MIC90) は, MethicillinあるいはLVFXに耐性を示すStaphylococcus epidermidisを除くグラム陽性菌において0.2~12.5μg/mlと他薬剤と同等あるいはそれ以上であり,
Enterobacter aerogenes, Proteus vulgaris, Morganella morganiiおよび
Pseudomonas aeruginosaを除くグラム陰性菌においても, MIC
90は0.012~25μg/mhで, 他薬剤とほぼ同等あるいはそれ以上の抗菌力を示した。LVFXに耐性を示す
Staphylococcus aureusおよび
S. epidemmidisに対する感受性は, MIC
90で12.5~50μg/mhを示し, 他薬剤と同様に低下したが, 他薬剤より1~8倍優れた抗菌力を示した。
3. MFLXの抗菌力は, 培地の種類, 血清添加および接種菌量による影響を受けなかったが, 培地pHが酸性側で抗菌力の低下がみられた。
4.
S. aureus, Escherichia coliおよび
P. aeruginosaに対する増殖曲線に及ぼす影響では, MFIXのMIC以上の濃度で殺菌的に作用し, 4 MIC濃度1時間作用で, 生菌数は1/10~1/1,000以下となった。また他薬剤でも薬剤濃度に対応した殺菌作用が認められた。
5.薬剤作用時の
S.aureusおよび
E.coliの形態変化を微分干渉顕微鏡で観察したところ,
S.aureusにおいては1/4MIC濃度から菌体の膨化が,
E.coliにおいては1/16MIC濃度から菌体の著しい伸張が認められた。またMIC濃度以上では溶菌像も観察された。
6. 共焦点レーザー顕微鏡を用いて,
S.aureusおよび
E.coliの形態学的変化を検討した結果, 1/4MIC濃度のMFIXで処理した
S. aureusにおいて, 無核の娘細胞が観察され, また
E. coliにおいて, 細胞壁合成阻害薬であるpiperacillin (PIPC) では多核であったのに対して, 1/2MIC濃度のMFLXでは単核であった。
7. マウス実験的全身感染症に対するMFLXの治療効果を検討したところ, グラム陰性菌では他薬剤より劣っていたが, グラム陽性菌ではSPFXと同等あるいはそれ以上であり, CPFXおよびLVFXより優れた効果を示した。
8. マウス実験的呼吸器感染症に対するMFLXの治療効果を検討したところ, SPFXとほぼ同等であり, CPFXおよびLVFXより3~5倍以上の優れた治療効果を示した。
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