日本化学療法学会雑誌
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54 巻, 1 号
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  • 中山 貴美子, 源馬 均, 貝原 徳紀, 丹羽 俊朗
    2006 年 54 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    抗methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) 薬teicoplanin (TEIC) のよりよい投与スケジュール設定を行うために, 入院中にTEICの血清中濃度が測定された120例を対象に母集団薬物動態解析を行い, 成人患者における薬物動態の変動要因と個体差の程度を評価した。解析は, 母集団薬物動態解析のコンピュータープログラムNONMEM (Nonlinear mixed-effect model, 非線形混合効果モデル) を用い, 2-コンパートメントモデルにより行った。個体間変動は, TEICの全身クリアランス (CL) とセントラルコンパートメントの分布容積 (V), コンパートメント間の移行速度定数k21に仮定した。薬物動態パラメータに及ぼす変動要因の検討は, TEICの薬物動態に影響を及ぼすと報告されているクレアチニンクリアランス (Ccr), 血清アルブミン値 (Alb), 体重 (wt) を単独あるいは複数組み合わせたモデルにて行った。最終モデルの選択は, 各モデル式における目的関数値 (OBJ) の有意性およびパラメータの推定精度と汎用性を考慮して行った。その結果, CLの変動要因としてCcrあるいはCcr/Albとwtとを含む次式が最も優れていた。
    CFL=0.00498×Ccr+0.00426×wt (LL/h)
    CLL=0.0117×Ccr/Alb+0.00468×wt (L/h)
    OBJではCcr/Albを用いたモデルの方がわずかに勝っているものの, パラメータの推定精度を血清中濃度の実測値と推定値で評価したところ, 明らかな差はなかった。母集団パラメータにおけるCLLの個体問変動 (%CV) は, いずれも約22%と低値であり, 変動要因を考慮しないモデル (46.9%) の1/2以下であった。今回の解析で得られた母集団パラメータは幅広いCcrを有する患者群のデータから構築されており, 特にTEICの薬物動態の主な変動要因である腎機能を基に, より精度の高い至適投与スケジュール設定への応用が期待された。
  • 佐藤 信雄, 田中 由香利, 渋谷 幸代, 芝崎 茂樹
    2006 年 54 巻 1 号 p. 7-17
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    成人感染症患者等および健康成人において得られたカルバペネム系薬biapenem (BIPM) の血漿中濃度を, Nonlinear Mixed Effects Model (NONMEM) を用いて解析し, 母集団薬物動態パラメータを算出した。解析には, 成人感染症患者等および健康成人の計66例, 384ポイントの血漿中濃度および患者背景を用いた。薬物動態モデルとしては点滴静注時の2-コンパートメントモデルを使用し, BIPMの薬物動態に影響を与える共変量として年齢 (Age), 体重 (Wt), およびクレアチニン・クリアランス (Ccr), ならびに因子として薬物動態に対する疾患の有無の影響を検討した。その結果, 全身クリアランス (CL) にはCcrの, 体循環血コンパートメントの分布容積 (V1) にはWtの影響が認められた。末梢循環血コンパートメントの分布容積 (V2) にはWtの影響は見出されなかった。これらの結果をふまえて母集団薬物動態解析を行った結果, BIPMの母集団平均パラメータはCL=0.0720×Ccr+3.04 (L/h), V1=0.0990×Wt (L), 体循環血コンパートメントと末梢循環血コンパートメントの間の移行クリアランス (Q) 313.5 (L/h), V2=7.00 (L) であった。内部バリデーション法の一つであるBootstrap法によって, モデルバリデーションを行った結果, 確立したモデルは妥当であると考えられた。また, 求めた母集団平均パラメータよりシミュレーションした血漿中濃度推移およびMICを用いて, 種々の想定患者背景におけるTime above MIC (T>MIC)(%) を推定し, BIPMの投与設計を考案するうえでの一助となる一覧表を作成した。
  • 小林 昌宏, 斉京 明子, 相馬 一亥, 矢後 和夫, 砂川 慶介
    2006 年 54 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    抗MRSA薬のarbekacin (ABK) について, 至適投与法を大規模な症例で検証した報告は少ない。今回, われわれはMRSA肺炎患者におけるABKの単回投与法と複数回投与法の有用性を比較するとともに, pharmacokinetics (PK), pharmacodynamics (PD), およびPK/PDパラメータに基づいた至適投与法を検討した。対象は1998年4月~2005年3月にMRSA肺炎のためABKを1日200mg投与された患者とし, 診療録をレトロスペクティブに調査した。血中濃度は投与開始3~7日目の投与1hr値を最高血中濃度 (Cpeak), 投与直前値を最低血中濃度 (Ctrough) とした。エンドポイントは臨床的効果。細菌学的効果および腎機能障害発現の有無とした。解析可能患者は111例であった。x2testによる投与法の比較では, 単回投与法が優れている傾向が認められ, 臨床的有効性については統計学的に有意であった (P=0.048)。多重ロジスティック回帰分析の結果, 臨床的有効性としてCpeak [P=0,008, Oddsratio (OR)=1.27, 95% Confidential Interval (95%CI)=1.06~157], 細菌学的有効性としてCpeak/MIC [p=0.016, 0R=122, 95%CI=1.04~1.77], 腎機能障害発現としてCtrough [p=0.002, OR=2.00, 95%CI=1.32~334] および患者年齢 [p=0.046, 0R=1.06, 95%CI=1.01~1.14] が有意な指標とされた。腎機能障害回避のためには加齢を加味した目標Ctroughの設定が必要であることが示された。また目標Cpeakの上限設定については再考が必要であった。
  • 平潟 洋一, 渡辺 彰, 二木 芳人, 青木 信樹, 河野 茂
    2006 年 54 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症の初診時における, 非定型病原体 (Chlamydophila pneumnoniae, Chlamnydophila psittaci,Mycoplasma pneumoniae,Legfonella pneumophila) の関与率を血清抗体価および尿中抗原検出により検討した。
    2003年4月から6月に全国4地域 (長崎, 岡山, 新潟, 仙台) の開業医院59施設を呼吸器感染症 (肺炎, 気管支炎, 咽頭・喉頭炎, 扁桃炎) で受診した20歳以上の初診外来患者532症例を解析対象とした。
    非定型病原体の血清抗体価が陽性であったのは532例中99例 (19%) であり, 陽性率の内訳はC.pneumoniae70例 (13.2%),C. psittaci12例 (2.3%),C.pneumoniaeC. psittaciの混合感染8例 (1.5%),M.pneumoniae 8例 (1.5%), M. pneumoniaeC. psittaciの混合感染1例 (0.2%) であった。L. pneumophilaは全例で血清抗体価は陰性で, 尿中抗原も陰性であった。また, 各疾患における非定型病原体陽性率は肺炎19.2%(5/26例), 気管支炎19.9%(36/181例), 咽頭・喉頭炎18.6%(39/210例), 扁桃炎22.2%(12/54例), その他疾患が重複している症例では11.5%(7/61例) であった。非定型病原体ごとの年齢分布に明らかな差はみられなかった。C. psittaciの陽性率が4%と従来の報告に比べて高かったが, 患者年齢, 地域に一定の傾向はみられず鳥類飼育者は21例中2例のみであった。
  • 柳原 克紀, 東山 康仁, 泉川 公一, 大野 秀明, 宮崎 義継, 平潟 洋一, 河野 茂, Ngasaki Respiratory T ...
    2006 年 54 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/09/13
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン系抗菌薬gatifloxacin (GFLX) は, 2002年6月に発売後, 血糖値異常の副作用が報告され, 2003年3月には糖尿病患者に禁忌となった。しかしながら, 本薬剤の優れた抗菌力および喀痰・組織移行性からレスピラトリーキノロンとして日本呼吸器学会発刊 (2003年) の「呼吸器感染症に関するガイドライン」成人気道感染症診療の基本的考え方にも推奨されている。また, 肺炎球菌に対するGFLXのAUC/MICは200mg×2回/日 (400mg/日) で74.4 (29.0/0.39), 100mg×2回/日 (200mg/日) では35.9 (14.0/0.39) および97.2 (37.9/0.39: 高齢者) である。これらの成績から, 高齢者においては200mg/日で治療可能と考えられた。
    今回, 慢性呼吸器疾患の二次感染を対象として, 65歳以上の高齢者への200mg/日投与が非高齢者への400mg/日投与と同等の有効性が認められるかどうかを比較検討した。
    2004年11月から2005年3月までに長崎大学第二内科ならびに関連施設において, 52例がエントリーされ, 評価可能症例は32例であった。臨床効果は高齢者200mg/日で87.0%(20/23例), 非高齢者400mg/日で88.9%(8/9例), 全体で875%(28/32例) であった。原因菌の消長も考慮した最終評価判定でも, 臨床効果と同等であった。また, 安全性は有害事象が高齢者で1例, 非高齢者で2例の計3例, 臨床検査値異常が高齢者で2例, 非高齢者で2例の計4例で, いずれも軽度であった。
    高齢者慢性呼吸器疾患の二次感染に対して, GFLX200mg/日は, 非高齢者400mg/日と同等の有効性と安全性を有することが示唆された。
  • 佐藤 勝昌, 佐野 千晶, 清水 利朗, 冨岡 治明
    2006 年 54 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2006/01/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Mycobacterium avium complex (MAC) 感染症は抗菌化学療法に抵抗性であり, 新しい治療レジメンの開発が望まれている。今回はキチン, キトサンおよびキトサンオリゴ糖のマウス腹腔マクロファージ (MΦ) 内感染MAC菌に対するclarithromycin (CAM)/rifampicin (RFP) の抗菌活性発現に及ぼす効果について検討した。その結果, キチン単独ではMΦ 内MAC菌の増殖能に影響を与えなかったが, キチンをCAM/RFPと併用した場合にはCAM/RFPの殺菌能の増強がみられた。同様な効果はキトサンでも認められたが, キトサンオリゴ糖では認められなかった。次に, MAC全身感染モデルマウスに対するキチン・キトサン (経口投与) とCAM/RFP (皮下投与) の感染治療実験を試みたが。CAM/RFPのin vivo治療効果を増強させるような活性は認められなかった。したがって, 別の治療レジメンを考える必要があるものと思われる。
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