抗methicillin-resistant
Staphylococcus aureus (MRSA) 薬teicoplanin (TEIC) のよりよい投与スケジュール設定を行うために, 入院中にTEICの血清中濃度が測定された120例を対象に母集団薬物動態解析を行い, 成人患者における薬物動態の変動要因と個体差の程度を評価した。解析は, 母集団薬物動態解析のコンピュータープログラムNONMEM (Nonlinear mixed-effect model, 非線形混合効果モデル) を用い, 2-コンパートメントモデルにより行った。個体間変動は, TEICの全身クリアランス (CL) とセントラルコンパートメントの分布容積 (V), コンパートメント間の移行速度定数k
21に仮定した。薬物動態パラメータに及ぼす変動要因の検討は, TEICの薬物動態に影響を及ぼすと報告されているクレアチニンクリアランス (Ccr), 血清アルブミン値 (Alb), 体重 (wt) を単独あるいは複数組み合わせたモデルにて行った。最終モデルの選択は, 各モデル式における目的関数値 (OBJ) の有意性およびパラメータの推定精度と汎用性を考慮して行った。その結果, CLの変動要因としてCcrあるいはCcr/Albとwtとを含む次式が最も優れていた。
CFL=0.00498×Ccr+0.00426×wt (LL/h)
CLL=0.0117×Ccr/Alb+0.00468×wt (L/h)
OBJではCcr/Albを用いたモデルの方がわずかに勝っているものの, パラメータの推定精度を血清中濃度の実測値と推定値で評価したところ, 明らかな差はなかった。母集団パラメータにおけるCLLの個体問変動 (%CV) は, いずれも約22%と低値であり, 変動要因を考慮しないモデル (46.9%) の1/2以下であった。今回の解析で得られた母集団パラメータは幅広いCcrを有する患者群のデータから構築されており, 特にTEICの薬物動態の主な変動要因である腎機能を基に, より精度の高い至適投与スケジュール設定への応用が期待された。
抄録全体を表示