日本化学療法学会雑誌
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54 巻, 2 号
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  • 生方 公子
    2006 年 54 巻 2 号 p. 69-93
    発行日: 2006/03/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    肺炎球菌, インフルエンザ菌, A群溶血レンサ球菌 (GAS), あるいはマイコプラズマニューモニエは, 市中における呼吸器感染症の最もポピュラーな起炎菌である. 本邦においては, これらの菌における多剤耐性菌の急速な増加が臨床上の問題として注目されている. 肺炎球菌とインフルエンザ菌のβ-ラクタム系薬耐性は, pbp遺伝子がコードするPBP酵素の変化に起因している. 肺炎球菌とGASにおけるマクロライド耐性には2つのメカニズムが関わっている. すなわち, mefA遺伝子による排出システムと, ermBあるいはermA (ermTR) 遺伝子によるリボソームタンパクのメチル化である. マイコプラズマニューモニエのマクロライド系薬耐性には, 23S rRNA遺伝子のドメインV内に認められる変異が関わっている. 一方, 本邦で分離された肺炎球菌の中には, ニューキノロン系薬耐性菌は約1-2%存在するが, その耐性にはDNA gyraseをコードするgyrA上の変異と, トポイソメラーゼIVをコードするparCおよびparE遺伝子上の変異であることが明らかにされている.
    病原体が本質的に保持する構成物上に生じた質的変化によるこれらの耐性は, 通常の感受性試験では明確に識別することが困難な軽度耐性であることが特徴である. もうひとつの特徴は, このような耐性レベルは, 多くの場合, β-ラクタム系薬, マクロライド系薬, ニューキノロン系薬のような経口抗菌薬によって得られる血中濃度と似通ったレベルであるということである.
    このような耐性に関与する酵素をコードする遺伝子上の変異は, 経口抗菌薬の不適切な濃度によって容易に選択される.
    最後に, このような耐性菌の増加を防止するためには, 起炎菌の迅速な識別, ワクチンによる予防, PK/PDに基づく抗菌薬の適切な選択と使用, 抗菌薬の市販後調査の確立などが必要であることを述べた.
  • 佐藤 吉壮, 山藤 満, 岩田 敏, 秋田 博伸, 砂川 慶介
    2006 年 54 巻 2 号 p. 95-101
    発行日: 2006/03/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新生児集中治療施設収容の新生児から分離した49株のmethicillin耐性Staphylococcus aureus (MRSA) を用いて, teicoplanin (TEIC) あるいはvancomycin (VCM) と6種のβ-ラクタム系抗菌薬とのin vitro併用効果を検討した.
    TEICとimipenem (IPM), meropenem (MEPM), panipenem (PAPM), cefpirome (CPR), flomoxef (FMOX) あるいはsulbactam (SBT)/ampicillin (ABPC) を併用したところ, 相乗作用を示した菌株数は16~48株であった. 特にIPM, MEPM, PAPMのカルバペネム系抗菌薬あるいはFMOXとの併用で多くの菌株で相乗作用を示すことが確認された. なお, CPRとの併用で不変が3株にみられたが, 拮抗作用を示す菌株はなかった. 一方, VCMでは相乗作用を示した菌株数は1~32株であり, 不変を示す株が1~17株, 拮抗作用を示す株が2~6株みられた.
    以上の結果より, TEICは供試したβ-ラクタム系抗菌薬との併用では, VCMよりも優れた協力作用を示すことが確認された.
  • 小松 充孝, 田島 裕, 伊藤 輝代, 山城 雄一郎, 平松 啓一
    2006 年 54 巻 2 号 p. 102-110
    発行日: 2006/03/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Vancomycin (VCM) に対して感受性が低下したmethicillin-resistant staphylococcus aureus (MRSA) の分離株が増加している現在, その対策は急務である. われわれは多剤耐性グラム陽性菌に対処する抗菌薬として開発されたオキサゾリジノン系薬であるlinezolid (LZD) のVCM低感受性株に対する効力を, 従来の微量液体希釈法によるMICの測定に加えて, 化学発光および呈色試薬を用いた菌の代謝活性を測定する方法で評価した. 微量液体希釈法で測定したLZDのMICは, 既知のLZD低感受性株を除きVCMに対する耐性度 (MIC=0.5~8μg/mL) にかかわらずすべて0.5~3μg/mLの範囲内であった. 化学発光法を用いて菌の代謝活性を測定した場合, 薬剤濃度の上昇に伴って化学発光強度の急峻な低下がみられ, LZDは短時間で菌の代謝活性を抑制する効果をもつことが確認された. LZDの殺菌力は弱く, 作用はほとんど静菌性と判断されたが, 呈色試薬alama Blue®を用いた実験では, 代謝抑制の時間経過がほぼVCMと同様であり, 初期効果としては遜色ないと思われた. 以上の結果より, LZDはMRSAに対して強力な抗菌活性を有しており, VCMを用いた治療に抵抗するMRSA感染症に対しても効果が期待できると思われた.
  • 砂川 慶介, 小林 慎, 後藤 元, 和田 光一
    2006 年 54 巻 2 号 p. 111-124
    発行日: 2006/03/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症の初期治療におけるカルバペネム系抗菌薬panipenem/betamipron (PAPM/BP) および第三世代セフェム系抗菌薬cefozopran (CZOP) の治療日数および治療費を比較検討した. 中等症以上の細菌性市中肺炎および慢性呼吸器疾患の二次感染の入院患者を対象に, 登録された被験者をPAPM/BPまたはCZOPによる治療にランダム化割付し, 注射用抗菌薬投与日数 (治療途中に切替えた注射用抗菌薬を含む投与日数) および症状改善日数 (体温・CRP・白血球数が基準値以下となるまでの日数) を最長試験薬投与28日後まで評価した. また入院期間および注射用抗菌薬投与期間における治療費を推計した. 登録された120例のうち非細菌感染症例等を除く有効性・経済性の解析対象症例92例 (PAPM/BP群45例, CZOP群47例) の注射用抗菌薬投与日数 (中央値) はPAPM/BP群8.0日, CZOP群10.0日 (p=0.1480), 症状改善日数 (中央値) はPAPM/BP群6.0日, CZOP群8.0日 (p=0.0268) といずれもPAPM/BP群の方が短期間であった. 治療費 (入院費, 試験薬費, 切替え・併用抗菌薬費, 副作用治療薬費, 検査費) の平均は, 入院期間では, PAPM/BP群262,862円, CZOP群276, 720円 (差額-13,858円), 注射用抗菌薬投与期間では, PAPM/BP群218, 604円, CZOP群236, 421円 (差額-17, 817円) といずれもPAPM/BP群の方が低額であった. 内訳では, 試験薬費は, CZOP群に比べPAPM/BP群が高額であったが, 入院費, 検査費, 切替え・併用抗菌薬費はPAPM/BP群の方が低額であった. 試験薬投与終了時の有効率は, PAPM/BP群97.8%(44/45例), CZOP群872%(41/47例) であった. また副作用発現率はそれぞれ22.0%(13/59例), 32.2%(19/59例) で, 重篤なものはなく, 試験薬の投与中止または投与継続中に回復または軽快した. 以上より中等症以上の呼吸器感染症においてPAPM/BPを第一選択薬とする治療は, CZOPによる治療に比べて治療日数が短縮され, 治療費が経済的であることが示唆された.
  • 石川 崇彦, 高田 徹, 友寄 毅昭, 増田 昌人, 仲地 佐和子, 古賀 震, 塚田 順一, 松浦 愛, 宇都宮 與, 佐分利 能生, 田 ...
    2006 年 54 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2006/03/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    抗菌薬不応性の発熱性好中球減少症に対するMicafungin (MCFG) の経験的治療についてその有効性と安全性を検討した. 成人造血器疾患や固形癌で化学療法施行後に発熱性好中球減少症を来し, 抗緑膿菌作用を有する広域抗菌薬使用にもかかわらず発熱が持続する症例に適切な検査を行った後MCFGの投与を行った. MCFGの投与量は主治医の判断により50mg/日から150mg/日を1日1回投与として最大300mg/日まで投与可能とした. MCFGは重大な副作用が認められない限り最低7日間投与して, 全身状態, 画像検査, 血液学的検査を行い主治医による総合効果判定を行った. 本研究は九州血液疾患治療研究会 (K-HOT) による多施設共同試験とした. 期間は2003年4月以降2年間の前向き研究とした. 対象症例は13例 (男性4名, 女性9名), 基礎疾患は造血器疾患が12例, 乳癌が1例で, MCFG投与開始時の好中球数は, 100/μL未満が6例, 100/μL~500/μL未満が4例, 1,000/μL以上が3例であった. 総合評価では有効が11例 (85%) であり無効が2例 (15%) であった. 無効例のうち1例はMCFGの投与を継続し14日目には有効と判断, 他の1例は肝障害のため7日目にMCFGの投与を中止した. 臨床試験中の真菌感染による死亡例はなく, 抗菌薬不応性の発熱性好中球減少症に対しMCFGは有効で安全な抗真菌薬であることが示唆された.
  • 2006 年 54 巻 2 号 p. 129-155
    発行日: 2006/03/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
  • 2006 年 54 巻 2 号 p. 155-173
    発行日: 2006/03/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
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