日本化学療法学会雑誌
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54 巻 , 3 号
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  • 基礎の立場から
    白木 公康
    2006 年 54 巻 3 号 p. 217-220
    発行日: 2006/05/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    性器ヘルペスの抑制療法を考える際に重要なことは, 「なぜ性器ヘルペスは再発するのか?」を理解することであると思われる。そこで, 単純ヘルペスウイルス (HSV) の感染様式の特徴と再活性化に関して概説し, 抗菌薬と対比して抗ヘルペス薬の特徴と耐性機序について概説する。
    HSVは皮膚・粘膜で感染して, 感染部位の感覚神経終末から取り込まれて逆行性軸索輸送により脊髄後根神経節の感覚神経細胞にいたる。そこでHSVは神経節内で増殖・拡散し, 感染した神経細胞の神経線維を下降・増殖し, 皮膚・粘膜病変を形成する。したがって, 初感染時に神経細胞には多数のHSVゲノムが残存・潜伏し, 残存したHSVがその後の再発を起こす。最近, 初感染時の神経節内HSV数が再活牲化率を決定することが報告され, 初感染時に充分に治療して潜伏するHSV数を減少させれば, 再発を減少できる可能性が示された。このように, 初感染時治療の重要性が明らかとなった。
    一方, 頻回に再発を繰り返す性器ヘルペスに対しては, 長期に抗ヘルペス薬を服薬する抑制療法が行われるため, 耐性HSVの出現が懸念される。耐性株出現に関しては, 抑制療法ではHSV量が限られ, 通常の治療に比べ, 抗ヘルペス薬の暴露される母集団が大きく桁が異なること, 細胞内増殖様式が耐性を生じにくいこと, HIVやインフルエンザなどに比べHSVのDNA合成酵素のfidelityが高い (変異を生じにくい) ことなどにより, HSVは耐性が生じにくいという特徴がある。この点は, 抗ヘルペス薬の特徴であり, 適切に管理されている限り, 耐性が問題となることは考えにくい。
  • 造血器悪性腫瘍
    倉石 安庸, 名取 一彦
    2006 年 54 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 2006/05/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    造血器悪性腫瘍は白血病, 悪性リンパ腫, 多発性骨髄腫に大別され, 白血病悪性リンパ腫についてはさらに細分類されることになる。種々の病型で新たなる化学療法の展開がみられているが, 特に注目すべき疾患としては慢性骨髄性白血病 (chronic myelogenous leukemia; CML), 急性前骨髄球性白血病 (acute promye locytic leukemia; APL), diffuse large B-Cell lymphoma; DLBCL), 多発性骨髄腫 (multi-Plemyeloma; MM) を挙げなければならないであろう。すなわち, CMLにおいてはその病因に深くかかわっているチロシンキナーゼに対する阻害薬により, 本症に対する細胞遺伝学的有効率は飛躍的に向上し, 長期的な予後の改善も期待され, 同種造血幹細胞移植の適応についての議論にも影響を与えている。APLにおいては特有な染色体転座によって生じた融合遺伝子を標的とした薬剤である全トランス型レチノイン酸とアンスラサイクリン系抗白血病薬を中心とした化学療法との併用によりその治療成績が著しく向上している。DLBCLに関しては長らCHOP療法療 (cyclophosphamide, adriamycin, vincristine, prednisolone) が標準的治療であるとされてきたが, B細胞リンパ腫の95%以上に発現しているCD20に対するマウス/ヒトキメラ抗体であるrituximabをCHOP療法と併用することにより完全寛解率, 無再発生存率, 生存率でCHOP療法単独よりも優れていることが判明している。MMについては近年, 自家造血幹細胞移植を併用した大量化学療法の導入, 加えて特異な作用機序を示すサリドマイドやプロテアゾーム阻害薬の登場により新たな局面を迎えている。
  • 上岡 博
    2006 年 54 巻 3 号 p. 227-231
    発行日: 2006/05/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    非小細胞肺癌に対する化学療法の役割に関して概説する。I期II期の症例では, 切除後に補助化学療法を行うのが標準的治療法と考えられている。IIIA期の症例に対しては, 術前化学療法が広く行われているが, 現時点ではこの方法を推奨すべきエビデンスは乏しいので, 切除が必要か否かを含めさらなる検討が必要である。IIIB期の症例に対しては, 化学療法と胸部照射の同時併用療法が標準的治療法である。IV期症例に対しては, プラチナ化合物と1990年代に関発された新規抗癌薬の2薬剤併用が標準的治療法であり, 既治療例に対しては, docetaxelの単剤療法が推奨されている。Gefitinib, erlotinibなどの分子標的治療薬は非常に期待されているが, その有効性はまだ確認されていない。
  • 田村 孝雄
    2006 年 54 巻 3 号 p. 232-238
    発行日: 2006/05/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    消化管癌の内科的治療の最近の進歩は目覚しく, 進行大腸癌においても有効な薬剤が以前ではfluorouracil (5-FU) のみであったが, 近年になってirinotecan (CPT-11, カンブトTM, トポテシンTM) やoxaliplatin (L-OHP, エルプラットTM) といった新しい有効な薬剤が開発され, ここ数年は第一選択とすべき治療法が毎年のように更新されている。そして現在の大腸癌に対する各レジメンの生存期間延長への寄与は5-FU/LV=irinotecan<IFL<FOLFOX=FOLFIRIの順になると考えられており, irinotecanやoxaliplatinと5-FUの併用レジメンであるFOLFIRIとFOLFOXの2つのレジメンが第一選択の標準とすべき治療とされる。さらにこれらのレジメンが開発される過程において, 5-FUの持続点滴とbolus静注の違いや, 5-FUとirinotecanの相互作用などいくつかの薬物動態に関する内容も明らかとなってきた。
    最近ではuracil/tegafur (UFTTM), S-1 (TS-1TM), capecitabine (XelodaTM) などの経口制癌薬の開発も進み, FOLFOXやFOLFIRIのレジメンのなかに含まれる5-FUの持続点滴を, 利便性の面からもこれらの経口薬で置き換える試みがなされつつある。加えてvascular endothelial growth factor (VEGF) やepidermal growth factor receptor (EGFR) などの働きを阻害するbevacizumab, cetuximabなどの分子標的治療薬もヒトでの使用が可能となり, それらも併用することで進行大腸癌の50%生存期間は2年に達しようとしている。
    化学療法を行わなかった場合の進行大腸癌の生存期間がおよそ3~6カ月という事実より考えて大腸癌に対する積極的薬物療法の意義が明らかになってきている。
  • 杉山 徹
    2006 年 54 巻 3 号 p. 239-248
    発行日: 2006/05/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    婦人科悪性腫瘍の標準的化学療法はプラチナ製剤, タキサン製剤をkey drugとして, トポイソメーラーゼI阻害薬, アントラサイクリンなどで構成されている。主な婦人科悪性膿瘍である卵巣癌, 子宮頸・体癌に対する2005年の標準的治療を簡潔に示すと, (1) 卵巣癌: 初回治療は手術療法で, 基本手術+surgical staging, さらに進行癌では腫瘍減量術が行われる。術後化学療法は, パクリタキセル (TXL) 175mg/m2/3h+カルボプラチン (CBDCA) AUC5~6 (TC療法) で, I期癌では3~6コース, 進行癌では6コース行う。毒性や組織型により, ドセタキセルやイリノテカン (CPT・11) を用いることもできる。再発時には, 再発までの期間が長い (>6カ月) 化学療法感受性腫瘍では初回レジメンと同じあるいは類似レジメンでの治療, 抵抗性腫瘍では初回治療薬と交叉耐性を有さない新規薬剤を用いた治療が行われる。(2) 子宮体癌: 初回手術後 (surgical staging) のハイリスク例 (低分化度, 深い筋層浸潤, リンパ節転移, 腹腔内細胞診陽性など) に対し, 欧米では放射線療法が標準的, わが国では化学療法を行う施設が多い。再発・進行癌や術後ハイリスク症例に対して, 標準的な薬剤は, シスブラチン (CDDP), ドキソルビシン (DXR), TXLであり, AP (CDDP/DXR) 療法が標準的レジメンである。最近, TAP (TXL/DXR/CDDP)+G-CSFやTC (TXL/CBDCA) での標準化の検討が進んでいる。(3) 子宮頸癌: 欧米ではIb2期癌以上で放射線化学療法 (chemoradiation) が標準的である。わが国では, Hb期までは手術療法が基本であり, bulky massを有するIb2~IIb期では術前化学療法+広汎子宮全摘術, III/IV期では欧米のエビデンスに基づきCDDPを用いたchemoradiationが広く導入されている。
  • 村上 日奈子, 松本 哲哉, 岩田 守弘, 安井 久美子, 前原 千佳子, 古谷 信彦, 石井 良和, 舘田 一博, 山口 惠三
    2006 年 54 巻 3 号 p. 249-254
    発行日: 2006/05/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Gardnerella vaginalisは細菌性膣症 (bacterial vaginosis: BV) に関与する細菌のーつとされているが, 本菌感染症の診断は一般的に細菌培養の結果をもとに判断されているわけではないため薬剤感受性に関する報告はまれである。そこで今回われわれは, 2002年から2004年までの3年間に当院で分離されたG. vaginalis 607株について17薬剤を対象に微量液体希釈法により薬剤感受性を測定した。
    その結果, ペニシリン, カルバペネム, マクロライド, グリコペブチド系抗菌薬についてはいずれもMIC90が≦1μg/mLを示し, 全般的に良好な感受性を示した。ただし一部のセフェム系抗菌薬については, MIC≦1μg/mLを示す株が全体の10%程度しか認められず, 他の薬剤と比較するとセフェム系抗菌薬への低感受性が指摘される。
    今回検討対象とした3年間において経年的な薬剤感受性について検討した結果, 明らかな感受性の変化は認めなかった。さらに今回のわれわれの結果と国内外で過去に報告された結果を比較検討したところ, MIC50, MIC90について報告間の顕著な差はみられなかった。これらの結果から総合的に判断して, 本菌に関してはこれまでのところ抗菌薬に対する耐性化を裏づける確証は得られなかった。
    BVの診断はグラム染色などによっても可能であるため, 必ずしも本菌の培養や薬剤感受性検査まで行わずとも, 診断後は有効性が期待される抗菌薬の選択により治療が可能であると考えられた。
  • 池田 文昭, 松本 哲, 若井 芳美, 中井 徹, 波多野 和男, 牧 克之
    2006 年 54 巻 3 号 p. 255-259
    発行日: 2006/05/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    モルモットを用いて致死性の播種性カンジダ症および肺アスペルギルス症モデルを作製し, micafungin (MCFG) およびvoriconazole (VRCZ) の延命効果を検討した。感染したモルモットにMCFGを1日2回, 9日間皮下投与してvehicle投与群と生存数変化を比較したところ, 播種性カンジダ症: 0.32mg/kg投与群, 肺アスペルギルス症: 1.0mg/kg投与群において有意な延命効果が認められた。また, VRCZも1日2回, 9日間経口投与して生存数変化を無治療群と比較したところ, 播種性カンジダ症: 1.0mg/kg投与群, 肺アスペルギルス症: 3.2mg/kg投与群で有意な延命効果が認められた。モルモットに両薬剤の5mg/kgを皮下または経口投与したときの血漿中CmaxおよびAUCはヒトにMCFGを50~75mg/body (ヒトの体重を50kgとしたとき1.0~1.5mg/kg) またはヒトにVRCZを3.0~4.0mg/kg静脈内投与したときと近似していることから, MCFGおよびVRCZの臨床投与量において播種性カンジダ症および肺アスペルギルス症に対して有効性を示すことが示唆された。
  • 遠矢 幸伸, 神山 浩子, 疋田 宗生, 八代 純子
    2006 年 54 巻 3 号 p. 260-262
    発行日: 2006/05/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ネコおよびイヌカリシウイルスに対するポビドンヨード (PVP-I) 製剤のin vitroにおける抗ウイルス活性を検討した。供試したいずれのPVP-I製剤 (PVP-I消毒液, PVP-I含嗽液, PVP-I手指消毒液, 速乾性PVP-I手指消毒液, PVF-I喉用液) も10秒間作用でほぼ検出限界以下までウイルス感染価を低下させ, れたカリシウイルス不活化作用を有することが示された。本研究で示されたPVP-I製剤の高い抗ウイルス作用は, 同じカリシウイルス科に分類されるノロウイルスに対する有効性をも示唆するものと考えられた。
  • 小林 芳夫, 墨谷 祐子, 杉田 香代子, 上遠野 保裕
    2006 年 54 巻 3 号 p. 263-270
    発行日: 2006/05/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2004年1月~2004年10月に慶慮義塾大学中央臨床検査部にて血液培養検体から分離・同定した144株を対象とし, meropenem (MEPM) の抗菌力を対照薬剤とともに測定した。さらに, 本検討における成績を同様に調査した1997年10月~1998年3月の分離株, 1999年1~6月の分離株および2002年9月~2003年3月の分離株における成績と比較することにより, MEPMに対する血液由来臨床分離株の感受性動向を検討し, 以下の結果を得た。
    (1) MEPMは.カルバペネム系薬のなかでも, グラム陰性菌に対して特に優れた抗菌活性を示し, Pseudomonas aeruginosaに対する耐性株 (MIC≧16μg/mL) も認められなかった。
    (2) MEPMを含むカルバペネム系薬は, 本来抗菌活性を期待できないmethicillin-resistant Staphylococcus aureusなどのブドウ球菌の多剤耐性株を除く菌株に対しては概ね良好な抗菌力を示した。
    (3) 1997~1998年, 1999年および2002~2003年における分離株での成績と比較して, 2004年分離株においてはMEPM耐性株の顕著な増加は認められなかった。
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