日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
54 巻 , 5 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 源河 いくみ
    2006 年 54 巻 5 号 p. 435-439
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    赤痢アメーバ症の病原体はEntamoeba histolyticaであり, 赤痢アメーバ嚢子に汚染された飲食物などの経口摂取により感染が成立し, 嚢子は胃を経て小腸に達し, そこで栄養型となり大腸に到達する。栄養型原虫は大腸粘膜面に潰瘍性病変を形成しアメーバ性大腸炎を起こす。さらに栄養型原虫は門脈を通り肝臓に達し肝膿瘍を形成する。感染者の多くは開発途上国に分布するが先進国では, 開発途上国からの帰国者, 知的障害者施設入所者, MSM (men who have sex with men) などに感染のリスクが高い。治療は, 肝膿瘍や腸炎などの侵襲性疾患の場合には, tissue agentとしてメトロニダゾールの投与を行う。通常治療後すみやかに臨床症状の改善をみとめる。その後にluminal agentとしてジロ酸ジロキサニドやパロモマイシンなどの非吸収性の抗嚢子薬を投与し腸管内に残っている嚢子を駆除し再発予防を行う。抗嚢子薬は現在, わが国では未承認薬であるが, 「熱帯病・寄生虫症に対する稀少疾病治療薬の輸入・保管・治療体制の開発研究」班より入手可能である。開発途上国からの帰国者やMSMの症例において, 粘血便, 下痢, 発熱などの症状がある場合には赤痢アメーバ症を疑い早期診断, 治療することが重要である。
  • ラット大腿筋組織内濃度との相関
    山野 佳則, 井澤 政明, 中村 理緒, 川井 悠唯, 竹間 盛夫
    2006 年 54 巻 5 号 p. 440-446
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口セフェム系抗菌薬S-1090のラット大腿部Staphylococcus aureus感染モデルに対する治療効果と, 大腿部筋肉内薬剤濃度との相関性を血清蛋白結合率の異なるcefcapene (CFPN), cefdinir, cefpodoximeおよびcefditorenを対照として検討した。
    薬剤静脈内投与後の血漿中濃度推移とマイクロダイアリシス法により測定した筋肉中の細胞外液遊離型薬剤濃度推移は, いずれの薬剤についても大きな乖離がみられた。一方, 血清蛋白結合率をもとに算出した血漿中遊離型薬剤濃度と, 筋肉中の遊離型薬剤濃度推移については, AUCの比は2倍以内とよく一致していた。
    S-1090あるいはCFPNがラット大腿部S. aureus感染モデルの筋肉内生菌数を1/100に減少させるために必要な投与量は4.73あるいは7.16mg/kgであった。これらの投与用量における筋肉内遊離型薬剤濃度を基に算出した治療期間内におけるTime above MIC (T>MIC) は両薬剤とも23~33%とほぼ同一であった。
    以上の結果より, 血清蛋白結合の高いS-1090の血漿中総濃度はCFPNに比し大きくなるものの, 感染局所における遊離型濃度推移は血漿中遊離型濃度と同様に低く推移し, 大腿部における遊離型濃度がT>MICとして23~33%となることが大腿部感染モデルに対する優れた治療効果が得られる理由であると考えられた。
  • 若松 篤, 黒川 博史, 芹澤 亜矢子, 石松 尚, 永田 明義
    2006 年 54 巻 5 号 p. 447-452
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2005年5月から7月に, 各種臨床材料から分離されたCTX-M-2グループβ-ラクタマーゼ産生Proteus mirabilis148株に対し, 各種抗菌薬のMICを測定した。その結果, β-ラクタム系抗菌薬であるceftibuten, ceftazidime, cefmetazole, latamoxef, imipenem, meropenem, aztreonamのMIC90は順に, 1μg/mL, 0.5μg/mL, 4μg/mL, ≦0.25μg/mL, 2μg/mL, ≦0.25μg/mL, 2μg/mLと良好な感受性を示した。一方, ampicillin, piperacillin, cefazolin, cefotaximeのMIC90は,≧256μg/mLと高値を示した。テトラサイクリン系抗菌薬であるminocyclineのMIC90は128μg/mLと高く, アミノグリコシド系抗菌薬のamikacin, tobramycin, gentamicinのMIC90は順に8μg/mL, 16μg/mL, 16μg/mLであった。ニューキノロン系抗菌薬であるlevofloxacin, ciprofloxacin, gatifloxacinは幅広いMIC分布を示し, それらのMIC rangeは, 順に≦0.25~≧256μg/mL, ≦0.25~≧256μg/mL, ≦0.25~128μg/mLであった。またMIC90は, すべて32μg/mLであった。Extended spectrum β-lactamase (ESBL) 産生菌は医療関連施設での感染対策上, 重要な菌である。よって各種抗菌薬の感受性検査は, さらに重要視されよう。
  • 河野 茂, 渡辺 彰, 松島 敏春, 院内肺炎研究会
    2006 年 54 巻 5 号 p. 453-464
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    日本呼吸器学会 (JRS)「呼吸器感染症に関するガイドライン-成人院内肺炎診療の基本的考え方-」に基づき, 院内肺炎の病態と初期治療の実態を調査し, メロペネム (MEPM) の院内肺炎初期治療における位置づけを検討した。2002年6月~2004年5月を調査期間として, 連続登録方式により院内肺炎症例をプロスペクティブに調査対象とし, 全国254施設より院内肺炎症例計1, 460例を収集し1, 356例を解析対象とした。初期治療におけるMEPM使用例は661例であり, そのうち506例 (76.6%) が単剤使用であった。他薬剤併用例では, 重症例を中心にクリンダマイシン, テトラサイクリン系薬, アミノ配糖体系薬の順に多く使用された。また, MEPMは重症例やJRS院内肺炎ガイドラインで規定された危険因子の多い症例に多く使用され, 病型別でも中等症で危険因子あり。または重症の肺炎 [III群: タイプC] や特殊病態下の肺炎 [IV群: タイプD~H] といった重篤な病態の症例が91.7% (606/661) を占めたが, MEPM初期治療使用例の有効率は54.4% (349/641) であり, カルバペネム系薬非使用例の有効率 (47.2%: 238/504) に比較して有意に高値であった。また, 初期治療におけるMEPM投与量は, 90%以上の症例が常用量 (0.25~0.5g×2回/日) であり, 1日3回投与や承認上限用量である1日2g投与が行われた症例は少なかった。院内肺炎の原因菌が緑膿菌等の抗菌薬に低感受性の細菌が主体であることも考慮すると, 次回ガイドライン改訂時にはPK/PD理論に基づいた抗菌薬投与量設定の重要性について言及する必要があるものと考えられた。安全性について, MEPM投与症例での主な副作用は肝機能障害であり, 添付文書の「使用上の注意」から予測できない重篤な副作用は認められなかった。以上の結果より, MEPMは院内肺炎の初期治療において重要な位置づけを占める薬剤であることが示唆された。
  • 砂川 慶介, 西村 忠史, 本廣 孝, 岩井 直一, 矢野 義孝, 輪嶋 恵宏, 藤井 良知
    2006 年 54 巻 5 号 p. 465-477
    発行日: 2006/09/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経口セフェム系抗菌薬であるcefcapene pivoxil (CFPN-PI, フロモックス (R) 小児用細粒100mg) の小児患者における薬物動態と有効性および安全性を検討するために, 市販後臨床試験を多施設共同試験として実施し, 集積した128例において以下の結果を得た。
    (1) 薬物動態評価対象症例110例のデータについてポピュレーション解析を行った結果, みかけのクリアランス (CL/F), みかけの分布容積 (Vd/F) はともに体重に比例することが示され, また, 体重が10kg以下の群と10kgを超える群との間で薬物動態に差はみられなかった。
    (2) 臨床効果については, 呼吸器感染症に対して88.1% (96例/109例), 尿路感染症に対して100% (6例/6例) と, 高い有効率が得られた。
    (3) Penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae (PRSP) を含む肺炎球菌に対するMICを他の経口セフェム系薬と比較した結果, CFPN-PIが強い抗菌力を保持していることが確認された。
    (4) 副作用 (症状) は128例中18例 (18件) に認められ, 発疹1件を除き, 残り17件はすべて消化器症状であった。副作用 (臨床検査値異常) は116例中11例 (15件) に認められ, AST上昇, ALT上昇が各4件で最も多かった。
    以上より, 本薬は乳児 (新生児を除く) を含む小児の患者において, 承認された用法・用量で十分な薬物動態が得られ, また, 高い有効性および安全性を示すことが確認できた。
feedback
Top