日本化学療法学会雑誌
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54 巻 , 6 号
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  • 室 高広, 秀島 里沙, 中村 権一, 神村 英利
    2006 年 54 巻 6 号 p. 511-519
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    抗菌薬の濫用は耐性菌の増加を招く。このため抗methicillin-resistant stapkylococcus aureus (以下, MRSA) 薬およびcarbapenem系抗菌薬の使用制限を行う試みがなされている。飯塚病院 (以下, 当院) では, これらの抗菌薬に対する使用理由書の提出を義務づけるとともに, 血液培養陽性患者の主治医に対して感染管理医師による指導的介入 (以下, 血培ラウンド) を行っている。さらには抗MRSA薬投与患者の主治医に対して, therapeutic drug monitoring (以下, TDM) に基づき至適投与量の提案を行っている。そこで, これらの取り組みに対する抗菌薬使用制限効果を検証した。その結果, 血培ラウンド開始後に抗MRSA薬の使用患者数は減少した。また使用理由書に血培ラウンドとTDMを加えることで, 使用理由書のみの期間に比べ, vancomycinの1日処方量は有意に減少し, teicoplaninも減少傾向であった。一方, carbapenem系抗菌薬に関しては使用理由書の提出と血培ラウンドの併用で, これらの対策前に比べて, panipenem/betamipron (0.59/V) の1日処方量は, むしろ増加した。
    以上のことから, TDMと血培ラウンドは抗MRSA薬の使用抑制効果があり, 抗MRSA薬の適正使用を推進し, 耐性菌の出現を抑えるために有効な手段と考えられる。またcarbapenem系抗菌薬の使用量の抑制は, 使用理由書の提出と血培ラウンドのみでは不十分であり, 薬物動態/薬力学 (以下, PK/PD) 理論に基づく明確な投与基準を確立することが望まれる。
  • 木村 利美, 佐藤 雅彦, 野々山 勝人, 矢後 和夫, 石井 正浩, 砂川 慶介
    2006 年 54 巻 6 号 p. 520-525
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    小児添付文書用量 (2~3mg/kg×2/24hr) に基づいてarbekacin sulfate (ABK) が投与された新生児41例 (小児添付文書投与量群) を対象とし, 非線形薬物動態解析プログラム (Nonlinear Mixed Effects Model; NONMEM) により母集団薬物動態パラメータを算出した。さらにそのパラメータに基づき新生児におけるABK初期投与法を設定し, レトロスペクティブな血中濃度の調査により投与法の再評価を行った。ABK初期投与法はABKのピーク値が7mg/L以上, トラフ値が2mg/L以下となるように投与量・投与間隔を設定した。クリアランス (CLABK) は受胎後週数 (postconceptionat age;PCA) 33週付近を境に急激に変化したため, 初期投与法はPCA33週におけるCLABKの±30%のCLABKを与える28週, 37週を境界とし, 以下の4群に設定した。PCA<28週 (4mg/kg×1/48hr), PCA≧28週. 3<3週 (3mg/kg×1/24hr), PCA≧33週, <37週 (4mg/kg×1/24hr), PCA≧37週 (7mg/kg×1/24hr)。
    初期投与法の再評価を行った対象患児は19例 (NONMEM初期投与群) であった。小児添付文書投与量群ではピーク値 (平均±SD, 以下同様); 10.3±5.6 (35~22.2) mg/L. トラフ値: 6.0±4.7 (0.4~17.6) mg/Lと高値を示したが, NONMEM初期投与群ではそれぞれ9.0±22 (5.6~13.3) mg/L. 1.6±0.8 (0.4~3.2) mg/Lと血中濃度は良好にコントロールされた。
    新生児では1日2回投与によってトラフ値の上昇が認められ, 24~48時間間隔投与の本初期投与法の有用性が示された。
  • 坂田 宏
    2006 年 54 巻 6 号 p. 526-530
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2005年7月から9月に, A群溶血連鎖球菌 (GAS) 感染症の6カ月から15歳まで (平均5.2±2.4歳) の小児に対してcefcapene pivoxil (CFPN-PI) を原則的に3mg/kgを1日3回7日間投与し, 臨床効果, 除菌率, 再燃の有無を検討した。分離された129株のT血清型は12型が52株 (40.3%) と最も多く, 次いで4型の35株 (27.1%), 1型が12株 (9.3%) であった。3名が服薬困難, 14名が再受診しなかったため112名で臨床効果および細菌学的効果を判定した。全員臨床所見の改善を認めたが。6名 (5.4%) で投与終了時にGASが検出された。6名のうち5名では検出されたT血清型とPFGEパターンは一致していた。合併症と再燃の有無を観察した108名中, 合併症を発症した児はなかったが, 7名 (6.5%) で再燃が確認された。投与終了後1~11日に発症しており, 投与終了時にGASが残存していた児が4名であった。1名ではT血清型もPFGEパターンも異なっていた。
    4名 (3.3%) に副作用が認められ, 3名が下痢・軟便, 1名が嘔吐であったが, 重篤な症状ではなかった。
  • 杉目 史行, 杉野 繁一, 山内 正憲, 岩崎 創史, 中山 雅康, 金谷 憲明, 並木 昭義
    2006 年 54 巻 6 号 p. 531-534
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    2003年, 日本化学療法学会の提言により, 全国の病院でいわゆる抗生剤テストが省略されることになった。アナフイラキシー発症への懸念が増すことになったが, 本学会では「抗菌薬投与に関連するアナフイラキシー対策のガイドライン」(以下ガイドライン) を作成して, 従来以上の観察と対応を喚起した。今回, われわれは手術中のアナフイラキシーショックに対し, ガイドラインに基づき迅速に対応しえたので報告する。
    症例は63歳, 女性。肛門部のBowen病に対し肛門部周囲切除と人工肛門造設が予定された。全身麻酔導入後にセフメタゾール点滴静注を開始した。5分後, 収縮期血圧が53 mmHgまで急激に低下し, 顔面と手掌の発赤・浮腫を認めた。セフメタゾールによるアナフイラキシーショックを疑い, ただちに投与を中止して, エピネフリンの静脈内投与をはじめとするガイドラインに沿った治療を開始した。患者は気管挿管されたままICU入室となったが順調に回復した。
    抗菌薬によるアナフイラキシーショックに対して, ガイドラインに沿って適切に診断, 治療を行った。ガイドラインは手術中のアナフイラキシーショックに対しても有用であるが, 麻酔科医はガイドラインに基づいた問診と厳重な観察, ショック時の迅速な対応が要求される。
  • 名取 一彦, 和泉 春香, 長瀬 大輔, 金子 開知, 藤本 吉紀, 石原 晋, 加藤 元浩, 梅田 正法, 倉石 安庸
    2006 年 54 巻 6 号 p. 535-537
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    日常の臨床においては転移巣の生検により悪性腫瘍の診断が得られながら, 広範な検査を施行してもなお原発巣が同定できない症例に遭遇することはしばしば経験するところである。われわれは4例の原発不明腺癌症例に対してpaclitaxel (TXL) とcarboplatin (CBDCA, JM-8) による併用化学療法 (TJ療法) を施行した。男性2例, 女性2例であり, 年齢中央値は58歳であった。TXL (200mg/m2, day1) とCBDCA (target AUC: 6mg/mL/min. day 1) の併用療法を3週間隔で施行した。1例でpartial response (PR) が得られ, 2例ではstable disease (SD), 1例は評価不能 (non evaluable; NE) であった。PRを得た症例の奏効期間は24カ月+であり, 生存期間はPR症例では26カ月+, SD症例の1例では20カ月, 他の1例は併用化学療法終了後15カ月以降は追跡されていず, NE症例では2カ月であった。
    近年, 原発不明癌の治療に関してはCBDCAを基本とした併用化学療法が推奨されており, その治療成績は改善されてきているが, 満足すべきものではなく, さらに予後の改善を目指して今後とも臨床試験の施行が必要であろう。
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