抗菌薬の濫用は耐性菌の増加を招く。このため抗methicillin-resistant
stapkylococcus aureus (以下, MRSA) 薬およびcarbapenem系抗菌薬の使用制限を行う試みがなされている。飯塚病院 (以下, 当院) では, これらの抗菌薬に対する使用理由書の提出を義務づけるとともに, 血液培養陽性患者の主治医に対して感染管理医師による指導的介入 (以下, 血培ラウンド) を行っている。さらには抗MRSA薬投与患者の主治医に対して, therapeutic drug monitoring (以下, TDM) に基づき至適投与量の提案を行っている。そこで, これらの取り組みに対する抗菌薬使用制限効果を検証した。その結果, 血培ラウンド開始後に抗MRSA薬の使用患者数は減少した。また使用理由書に血培ラウンドとTDMを加えることで, 使用理由書のみの期間に比べ, vancomycinの1日処方量は有意に減少し, teicoplaninも減少傾向であった。一方, carbapenem系抗菌薬に関しては使用理由書の提出と血培ラウンドの併用で, これらの対策前に比べて, panipenem/betamipron (0.59/V) の1日処方量は, むしろ増加した。
以上のことから, TDMと血培ラウンドは抗MRSA薬の使用抑制効果があり, 抗MRSA薬の適正使用を推進し, 耐性菌の出現を抑えるために有効な手段と考えられる。またcarbapenem系抗菌薬の使用量の抑制は, 使用理由書の提出と血培ラウンドのみでは不十分であり, 薬物動態/薬力学 (以下, PK/PD) 理論に基づく明確な投与基準を確立することが望まれる。
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