日本化学療法学会雑誌
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54 巻, Supplement1 号
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  • 河野 茂
    2006 年 54 巻 Supplement1 号 p. 1-5
    発行日: 2006/10/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    イトラコナゾールは, non-albicans Candidaを含めたカンジダ属やアスペルギルス属に対しても強い抗真菌活性を示すトリアゾール系抗真菌薬である。日本ではカプセル薬のみしか市販されていないが, hydroxypropyl-β-cyclodextrin (HP-β-CD) に可溶化させることで内用液と注射薬がようやく日本でも開発された。内用液はカプセル薬に比べ消化管からの吸収性が改善され, 注射薬は2日間のLoading dose (400mg分2/日) により, 深在性真菌症の治療に必要な高い血漿中濃度を早期に安定して維持することが可能となった。
    海外では, すでにイトラコナゾールの内用液や注射薬による標的治療や経験的治療の臨床試験が実施され, 優れた効果が報告されている。侵襲性アスペルギルス症に対する標的治療では, 試験対象例にアムホテリシンB (AMPH) 静注無効例が多く含まれていたが, イトラコナゾール静注後にカプセル薬を継続投与することにより, 寛解率 (寛解+部分寛解) は静注投与終了時に32%, 試験終了時に48%と優れた効果を示した。また, 好中球減少時の広域抗菌薬無効の持続発熱における経験的治療では, イトラコナゾール静注と内用液を継続使用することにより, AMPH静注と同程度の効果が得られ, 腎毒性を含めた有害事象や治療脱落は有意に少ないと報告されている。
    日本では, すでにカプセル薬が1993年から発売されており, 皮膚真菌症および内臓真菌症に広く臨床応用されている。今後, 内用液や注射薬の使用可能になることで, イトラコナゾールは深在性真菌症の有用な選択肢の一つになると思われる。
  • 丁 宗鉄, 山本 慧, 井上 晃一, 鳥居 慎一
    2006 年 54 巻 Supplement1 号 p. 6-17
    発行日: 2006/10/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Itraconazole (ITCZ) は高い抗真菌活性と広い抗真菌スペクトラムを有する優れた抗真菌薬で, すでにカプセル薬が深在性真菌症, 表在性真菌症に広く使用されている。ITCZ内用液 (ITCZ-OS) は, 脂溶性のITCZを溶解補助薬 (hydroxypropyl-β-cyclodextrin: HP-β-CD) の添加により可溶化し, 吸収性を改善/安定化させた製剤として開発された。
    今回, われわれはITCZ内用液を健康成人男性に100~400mgを単回投与, 100mgおよび200mgを12日間反復投与して薬物動態を検討した。まず, ITCZ内用液100mgを空腹時または食直後に単回投与して食事の影響を検討したところ, 空腹時に投与した時の血漿中ITCZ濃度は食直後投与に比べてCmaxは1.7倍, AUC0→∞は1.1倍高かった。次に, ITCZ内用液を空腹時単回投与で用量相関性を検討したところ, ITCZとOH-ITCZ (活性代謝物) はCmaxおよびAUC0→∞は用量に依存して増加したが, Tmax, t1/2は投与量により影響を受けなかった。また, 反復投与するとITCZおよびOH-ITCZの血漿中トラフ濃度は, 100mg投与時には投与9日目に, 200mg投与時には投与12日目にほぼ定常状態に達しており, 顕著な蓄積は認められなかった。ITCZ内用液投与によりHP-β-CD起因と思われる軟便が認められたが, 軽度であり臨床上問題ないと考えられた。ITCZ内用液はITCZカプセルと比較して早期に高い血中濃度に達し, 吸収が安定していることが確認された。
  • 山口 英世, 榎本 昭二, 賀来 満夫, 坂巻 壽, 田中 廣一, 吉田 稔
    2006 年 54 巻 Supplement1 号 p. 18-31
    発行日: 2006/10/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Itraconazole (ITCZ) は広域でしかも強力な抗真菌活性を有するアゾール系抗真菌薬である。ITCZ自体は脂溶性が高く, 従来はカプセル薬 (ITCZ-Cap) のみが製剤化されていたが, この製剤には経口投与後の吸収率が一定しないといった薬物動態上の難点があり, ITCZの臨床的有用性を制約していた。近年, この問題を克服するために, 溶解補助薬のhydroxypropyl-β-cyclodextrin (HP-β-CD) 添加により可溶化したITCZ内用液 (ITCZ-OS) が開発された。この新製剤について, 従来製剤のITCZ-Capとの間で臨床的有用性を比較検討するため, 口腔咽頭カンジダ症の患者を2群に分け, 一方にITCZ-OSを, 他方にITCZ-Capをいずれも200mg/日, 1日1回, 原則7日間経口投与するという治験デザインによる非盲検並行群間比較治験を全国39施設41診療科において実施した。なお, 投与期間については, 投与開始から8日目の時点で治癒 (臨床症状スコア合計が0) には至らないものの投与前値からスコアが減少した例においては, さらに7日間の投与継続を可能とした。主要評価項目である投与8日目の著効率は, ITCZ-OS群で70.3%(52/74例) となり, ITCZ-Cap群での49.4%(42/85例) に比べて劣らないばかりか, むしろ高いことが示された。投与期間中の最終評価時の著効率は, ITCZ-OS群が78.4%(58/74例), ITCZ-Cap群が68.2%(58/85例) であった。ITCZ-OSは効果発現が早く, 7日間の投与で70.3%の症例に著効を示したが, 効果不十分とされた症例においても投与継続により, 効果改善のさらなる向上が期待できることが示された。真菌学的効果の指標である菌陰性化率は, ITCZ-OS群およびITCZ-Cap群において, それぞれ投与8日目で71.6%(53/74例) と32.9%(28/85例), 投与15日目では69.0%(20/29例) と43.2%(19/44例) となり, いずれの時点でもITCZ-OS群が有意に高い治療効果を示した (それぞれp<0.0001, p=0.006)。治験期間中に認められた副作用は両群ともに重度のものはなく, 多くが軽度であり, いずれの症状も投与中あるいは投与終了後に消失または軽減した。ITC各OS群においてのみ溶解補助薬に起因すると思われる軽度の胃腸障害が認められた。
    以上の成績から, ITCZ-OSは200mg/日, 1日1回空腹時投与によって, 口腔咽頭カンジダ症に対する優れた治療効果を投与早期から発揮する薬剤であることが確認され, したがって口腔咽頭カンジダ症の治療における臨床的有用性が示唆された。
  • Itraconazole深在性真菌症研究班
    河野 茂, 山口 英世, 森 健, 平井 久丸, 折津 愈, 二木 芳人, 吉田 稔, 前崎 繁文, 平岡 諦, 倉島 篤行
    2006 年 54 巻 Supplement1 号 p. 32-47
    発行日: 2006/10/20
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    今回, 深在性真菌症患者に対して, イトラコナゾール (Itraconazole: ITCZ) 注射薬200mg/回を2週間 (1日2回2日間, その後1日1回12日間) 静脈内投与した後, 引き続きITCZカプセル薬200mg/回を1日2回最長12週間経口投与し, その有効性と安全性を検討した。
    有効率は67.7%(21/31例) であり, その内訳はアスペルギルス症579%(11/19例), カンジダ症714%(5/7例), クリプトコックス症100%(5/5例) であった。副作用発現頻度は, 注射薬投与期間とカプセル薬投与期間との間に差は認められず, ITCZの副作用としてすでに知られている事象がほとんどであった。
    血漿中ITCZトラフ濃度は, ITCZ注射薬投与 (200mg/回, 1日2回) 2日後には主要病原真菌 (アスペルギルス属, カンジダ属, クリプトコックス属) に有効な血漿中濃度が得られ (811.3±316.0ng/mL, 平均±S.D.), カプセル薬の継続投与によってITCZ注射薬投与で得られた高い血漿中濃度の維持が可能であった。
    以上より, ITCZ注射薬はITCZカプセル薬と比べて確実かつすみやかに有効な血漿中濃度が得られる製剤であり, ITCZカプセル薬の深在性真菌症に対する承認用量上限である200mg/日では効果不十分であった重篤または急性期の病態に対しても有用と考えられた。また, ITCZカプセル薬の継続投与 (200mg/回1日2回) により, ITCZ注射薬によって得られた血漿中濃度の維持が可能であり, ITCZ注射薬を2週間投与した後に経口薬を継続投与する治療は深在性真菌症に対して有用と考えられた。
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