日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
最新号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 西 圭史, 金井 隆康, 永井 茂, 篠原 高雄, 小林 治, 河合 伸
    2008 年 56 巻 6 号 p. 625-630
    発行日: 2008/11/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    アミノグリコシド系抗菌薬 (AGs) におけるPKPD (pharmacokinetics-pharmacodynamics) パラメーターはCmax/MICとされており, その投与方法は1日1回投与 (once a day, OD) が1日複数回投与 (multiple daily dose, MDD) より臨床効果や副作用抑制に有利であるとされている。これを検証する目的で, 杏林大学医学部付属病院において2006年1月1日から12月31日までの期間にamikacin (AMK), dibekacin (DKB), gentamicin (GM), isepamicin (ISP), tobramycin (TOB) が投与された362症例について, OD群とMDD群について臨床効果と副作用についての比較検討を行った。結果, ピーク濃度が有効濃度域に達していなかったのはAMKとGMのMDD群, 投与日数ではGMのOD群とISPのMDD群が有意 (GM: p=0.0226, ISP: p=0.0263) に短期であり, 末梢血白血球数と血清CRP値の変化, 検出菌消失の有無では両群間に有意な差はなかった。副作用ではISPのMDD群で有意に血清Cr値の上昇はみられなかった (P=0.0465)。両群の比較においてOD群のピーク値は有効濃度域に達していたが, 投与日数以外にMDD投与群との効果の差は認められず, 副作用についても差が認められない結果となった。臨床で投与される用法用量ではPK-PD理論から予測される効果と副作用の差を明らかに検証することはできなかったが, 今後はAGsの投与量の増量を含めた投与法の再検討が必要と示唆された。
  • 野村 憲一, 藤本 佳子, 山下 美穂子, 大城 宗生, 谷脇 雅史
    2008 年 56 巻 6 号 p. 631-633
    発行日: 2008/11/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    発熱性好中球減少症に対する第1選択薬として, 第IV世代セフェムが推奨されている。すでに多数の研究により, セフェムは, 従来の2回/日投与法よりも3回/日投与法のほうが臨床的に優れていることが明かにされている。しかし, 3回/日投与法のほうが経済的にも優れているかは不明である。われわれは, 2006年4月より12月まで, 化学療法後の好中球減少期に生じた重症感染症 (発熱性好中球減少症) に対して, cefozopranの3回/日投与を行った。この投与法を行った患者 (30事例) について, 期待有効1 (有効であった発熱事例1例) に対する期待費用を算出した。1発熱事例あたりの平均投与日数は75日であった。有効率は83%であったので, 期待有効1に対する期待費用は6万3,036円と計算された。われわれはすでに2回/日投与法の成績も発表しているが. この成績に基づいた2回/日投与法のそれは, 7万8,327円であった。早期に解熱が得られることによる入院期間の短縮, 偽膜性腸炎の発症率の低下なども考慮すれば, 差はさらに拡大すると考えられる。3回/日投与法は, 経済的にもきわめて有利な投与法と言える。
  • 長瀬 大輔, 名取 一彦, 石原 晋, 藤本 吉紀, 和泉 春香, 倉石 安庸
    2008 年 56 巻 6 号 p. 634-637
    発行日: 2008/11/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    vincristine (VCR) とitraconazole (ITCZ) の相互作用と思われる有害事象を来した急性リンパ性白血病 (ALL) を経験した。症例は51歳男性, 腰背部痛を主訴に受診。精査の結果ALLと診断され, VCRを含む多剤併用療法と真菌感染予防としてITCZの内服を開始。開始後肝障害に加え, 便秘, 痺れや低Na血症等, VCRによると思われる有害事象を認めた。ITCZを中止, 水分制限, Na補充などで改善を得た。以降ITCZをfluconazoleへ変更, 有害事象は認めず化学療法を継続している。ビンカアルカロイド系抗悪性腫瘍薬はcytochrome P450の一つであるCYP3A4で代謝されるが, アゾール系抗真菌薬はCYP3A4阻害薬として知られており, 特にITCZはCYP3A4を強力に阻害するとされる。本症例はこれらの相互作用によりVCRの代謝が遷延, 有害事象が重篤化したと考えられた。
feedback
Top