日本化学療法学会雑誌
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56 巻 , 4 号
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  • 西野 邦彦, 山口 明人
    2008 年 56 巻 4 号 p. 443-452
    発行日: 2008/07/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    薬剤排出システムは細菌細胞内から抗菌薬等, 細菌にとって異物となる物質を能動的に排出する。かつてより, 薬剤排出システムは薬剤耐性細菌を生み出す因子として注目されてきた。ゲノム解析の結果細菌には薬剤排出システムをコードしていると推定される遺伝子が数多く存在していることがわかってきた。細菌ゲノム情報を入手できるようになり, われわれは, 細菌が保持している薬剤耐性遺伝子資源を解析することが可能になった。一方で, 近年の研究から, 薬剤排出システムは薬剤耐性だけではなく, 細菌病原性発現に関与していることがわかってきた。これら一連のシステムは, 薬剤だけではなく, 病原性に関与する生理基質を認識して排出している可能性が考えられる。薬剤排出システムが薬剤耐性および病原性に関与する点から考えて, これを阻害することができれば薬剤耐性化を克服しながら, 病原性を軽減させることのできる新しい感染症治療法開発に役立つものと期待される。
  • 黒木 春郎, 坂田 宏, 佐藤 吉壮, 高島 俊夫, 岩井 直一, 尾内 一信, 砂川 慶介
    2008 年 56 巻 4 号 p. 453-461
    発行日: 2008/07/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cefteram pivoxil細粒 (以下, CFTM・PI細粒) の承認最大用量での有効性と安全性を確認し, あわせて他の経口セフェム細粒群 (以下, CE群) と副作用発現頻度について比較した。2005年9月~2006年3月までに調査施設に受診し, 咽頭炎, 扁桃炎, 急性気管支炎, 肺炎と診断された15歳未満の小児CFTM-PI細粒群259例 (中央値4.2歳), CE群108例 (cefcapene pivoxi145例, cefditoren pivoxil 49例, その他14例)(中央値3.5歳) を対象とした。投薬量はCFTM-PI細粒18mg/kg. 原則5日間 (肺炎は7日間)・分3の投薬とし, 5日後 (肺炎は7日後) までに有効性を評価した。CE群の投薬量は承認用法・用量とし, 投薬期間は定めなかった。有害事象は投薬終了時に確認した。
    CFTM・PI細粒群およびCE群の投薬期間は各5.96±1.76日, 6.27±194日であった。CFTM-PI細粒群の有効性解析対象症例は223例であり, 臨床効果は421±1.18日後に評価され, 有効率は咽頭炎96.2%(128/133), 扁桃炎97.4%(37/38), 急性気管支炎97.4%(38/39), 肺炎100%(13/13), 全体で96.9%(216/223) であった。主な検出菌別の臨床効果は延べ症例数で, Streptococcns pneumoniae 100%(28/28), Streptococcus pyogenes98.8%(85/86), Haemophilus influenzae95.0%(57/60), Moraxella (Branhamlla) catarrhalis100%(24/24) であった。このうち, S. pneumoniae28例中PISP6例, PRSP7例, H. influenzae60例中にBLNAR9例が認められた。服薬性は, 70.7%(183/259) が「飲みやすい」以上であった。副作用はCFTM-PI細粒群, CE群ともに全例消化器症状であり, 発現率は各54%(14/259), 130%(14/108) であり, 3歳未満の副作用発現率はCFTM-PI細粒群9.4%, CE群2a2%でCFTM-PI細粒群が有意に低かった (p=0.0129)。
    以上のことより, CFTM-PI細粒の高用量投薬は, 小児呼吸器感染症に対して十分な治療効果を示し, 耐性菌による感染症への有効な治療法として期待できる。
  • 古久保 拓
    2008 年 56 巻 4 号 p. 462-466
    発行日: 2008/07/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン系合成抗菌薬のpazufloxacin mesilate (PZFX) の腎不全患者における体内動態に関する検討は十分でない。今回, のう胞腎感染症と診断された4名 (年齢65.3±9.7歳, 体重49.0±4.1kg, 男1名) の血液透析 (HD) 患者を対象として, PZFX 300mgを週3回HD後に投与し, 体内動態を評価した。初回投与時のPZFXのCmaxは10.47±2.19μg/mL, AUC(0-∞)は421±175μg・h/mLであり, 腎機能正常者に比べ消失の著しい遅延が認められた。一方で, 3回目投与時の投与終了2時間後の血漿濃度は11.12±2.30μg/mLであり, この値は健常成人に常用量を反復投与した成績と同レベルであり, 消失の遅延から予測される程度には上昇していなかった。HD除去率は4時間のHDによりみかけ上58.7±7.7%であったが, HD終了1時間後までに認められた平均13.5%のリバウンド現象を考慮すると45.2±5.9%と算出された。全例において治療期間内に血漿濃度依存的な毒性は認めなかった。以上より, HD患者におけるPZFXの消失は腎機能正常患者に比べ大幅に遅延しているものの, HD除去性が高いために血漿濃度の蓄積性は小さいと考えられ, 毎HD後の投与が合理的であると考えられた。
  • 田口 善, 馬庭 厚, 小松 方, 阿部 教行
    2008 年 56 巻 4 号 p. 467-471
    発行日: 2008/07/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    当院で2005年5月~2005年10月に入院した市中肺炎患者に対し, メシル酸バズフロキサシン (pazufloxacin mesilate, 以下PZFX) による治療を行った7症例, 8エピソード (男性6エピソード, 女性2エピソード, 平均年齢71歳, 平均推定クレアチニンクリアランス64.7±35.4mL/min) を対象に, PZFXの血中濃度解析と臨床効果について検討した。PZFXは単剤投与で500mgを12時間ごとに30分かけて点滴静注を行った。血中濃度測定用の採血は投与3日目に,(1) 投与直前 (2) 投与終了直前,(3) 投与開始1~1.5時間後,(4) 投与開始3~3.5時間後,(5) 投与開始5~5.5時間後の5ポイントで行った。また, 臨床効果は, PZFX投与3日目の発熱, 症状白血球数から評価した。
    結果, 8エピソードのT1/2β, CmaxおよびAUCの平均値は, それぞれ2.87±1.02hr, 30.39±12.18μg/mLおよび67.89±27.87hr・μg/mLであった。臨床効果は8エピソード中7エピソードが有効 (87.5%), 完全解熱までの期間は4例が3日以内, 3例が5日以内であった。
    本検討で算出されたCmaxおよびAUCは, 臨床第I相試験や高齢者を対象とした報告例と比較していずれも, およそ1.7~3.1倍程度高い値を示したが, これらは症例の腎機能, 基礎疾患等種々の病態が原因と考えられた。すなわち, PZFXを含む抗菌薬の体内動態は, 患者個々で変化するため, 抗菌薬のpharmacokinetics/pharmacodynamicsを考慮した適正使用のためには, 症例ごとの体内動態の算出が重要であると考えられた。
  • 名取 一彦, 和泉 春香, 石原 晋, 長瀬 大輔, 藤本 吉紀, 加藤 元浩, 梅田 正法, 倉石 安庸
    2008 年 56 巻 4 号 p. 472-474
    発行日: 2008/07/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍症例では腫瘍細胞の浸潤, 感染, 薬剤の副作用などで脳神経障害を呈することがある。われわれは悪性リンパ腫の化学療法終了後に末梢性顔面神経麻痺を発症した2例を経験した。2例はいずれも病理組織型はdiffuse large B cell lymphomaであり, 臨床病期はIA期であった。おのおのR-CHO療法 (rituximab, cyclophosphamide, adriamycin) およびR-CHOP療法 (R-CHO+prednigolone) が施行された。おのおの化学療法終了後, 66日目, 31日目に右顔面神経麻痺が出現した。1例はデキサメサゾンの投与で症状が消失したが. 他の1例は塩酸バラシクロビルとプレドニソロンが投与されたが, 右口角下垂が残存した。末梢性顔面神経麻痺の原因としてherpes simplex zoster virus (HSV) によることが最も高頻度であり, 副腎皮質ステロイド薬と抗ウイルス薬の併用が有効である。抗がん薬による化学療法施行後に発症した場合は腫瘍細胞の中枢神経系への浸潤の除外とHSVによる感染を想定して検索し, 発症から治療開始までの期間が予後に影響することから早急に治療を開始する必要がある。
  • 継田 雅美, 塚田 弘樹
    2008 年 56 巻 4 号 p. 475-478
    発行日: 2008/07/10
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    大動脈弁置換術後にCorynebacferim jeikeiumによる細菌性心内膜炎を発症した症例に対し, 薬剤感受性結果よりteicoplanin (TEIC) を投与した。血中トラフ濃度を測定し, TEIC解析ソフトにて解析し投与量を調節した。開始時に3回ローディングを行ったが3日目トラフ値が低値であったため4日目に再ローディングを行った。トラフ値は17μg/mLとなり目標値に達したがCRPの上昇と発熱が認められたため目標値を変更しながら再ローディングを繰り返し, 最終的に23~24μg/mLに調節した。約7週間の投与でベジテーションは消失し, 副作用の発現はみられなかった。自己弁感染例に比べ, 人工弁置換術後の感染性心内膜炎は予後不良例が多く, TDMにより効果的にTEICを投与できた例と考える。
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