アミノグリコシド系抗菌薬 (AGs) におけるPKPD (pharmacokinetics-pharmacodynamics) パラメーターはCmax/MICとされており, その投与方法は1日1回投与 (once a day, OD) が1日複数回投与 (multiple daily dose, MDD) より臨床効果や副作用抑制に有利であるとされている。これを検証する目的で, 杏林大学医学部付属病院において2006年1月1日から12月31日までの期間にamikacin (AMK), dibekacin (DKB), gentamicin (GM), isepamicin (ISP), tobramycin (TOB) が投与された362症例について, OD群とMDD群について臨床効果と副作用についての比較検討を行った。結果, ピーク濃度が有効濃度域に達していなかったのはAMKとGMのMDD群, 投与日数ではGMのOD群とISPのMDD群が有意 (GM: p=0.0226, ISP: p=0.0263) に短期であり, 末梢血白血球数と血清CRP値の変化, 検出菌消失の有無では両群間に有意な差はなかった。副作用ではISPのMDD群で有意に血清Cr値の上昇はみられなかった (P=0.0465)。両群の比較においてOD群のピーク値は有効濃度域に達していたが, 投与日数以外にMDD投与群との効果の差は認められず, 副作用についても差が認められない結果となった。臨床で投与される用法用量ではPK-PD理論から予測される効果と副作用の差を明らかに検証することはできなかったが, 今後はAGsの投与量の増量を含めた投与法の再検討が必要と示唆された。
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