Well-beingとは,well(よい)とbeing(状態)からなる言葉である.健康と同じように日常生活の一要素であり,社会的,経済的,環境的な状況によって決定され,個人と社会の両方がよい状態であることを示している.人生100年時代とも言われる中で,わが国は国民が健康な生活と長寿を享受できる健康長寿社会の実現が急務となってきている.避けられない老いの過程を通して,確実に健康寿命の延伸を実現していくことも重要であるが,同時にWell-being向上にも大きく配慮する必要があり,いわゆる「幸福長寿」の実現も目指したい.人生100年時代のWell-being重視の健康長寿・幸福長寿の実現に向けて,「総合知」による多様なコミュニティ像に向けてのリデザインを推し進める時期に来ている.
地域医療におけるWell-beingは,地域全体の健康と幸福を指し,住民一人ひとりの身体的・精神的健康,社会的つながり,環境整備,経済的安定,教育啓発が重要である.医療提供者自身のWell-beingも重要であり,長時間労働やバーンアウトに対する対策が必要である.さらに,医療機関としても継続的な医療提供が求められ,地域全体の持続可能な幸福を考え,地域住民や他職種と連携した包括的なアプローチが必要である.
本稿では,主に社会老年学の領域で行われた高齢者のWell-being研究に触れ,わが国における高齢者のWell-being向上に向けた今日的課題をいくつか紹介する.社会老年学では,Well-beingとして主に主観的幸福感が取り上げられ,測定尺度や関連要因に関する研究が行われてきた.今後,高齢者の主観的幸福感を高める上で,孤立・孤独の予防が重要である.また高齢者の場合,主観的幸福感と身体的健康が必ずしも一致しないことに留意すべきである.最後に今後も増加し続ける認知症の人や家族の主観的幸福感を考えることがますます重要といえる.
世界保健機関(WHO)は健康を言い換える言葉として,初めてWell-beingという文言を使用した.以来70年以上にわたってWell-beingという言葉が使用され,徐々に概念が変化している.一方,終末期医療は終末期の患者に対して行う医療であり,病状が不可逆的かつ進行性で,近い将来の死が不可避となった状態の患者に対する医療である.終末期の多くの患者は全人的苦痛を持っているが,その全人的苦痛を改善し,患者の意思決定をサポートすることが患者のWell-beingに貢献すると考える.
令和6年元旦に能登半島地震が発生し,能登地域では一般住民のみならず医療・介護従事者も身体的にも精神的にも限界状態に追い込まれた.被災により急激な医療需要の増加と突然の医療提供体制の機能不全が発生したが,可能な限り医療需要を減らす一方で,全国から多くの医療支援が投入され急性期を乗り越えることができた.しかし,医療供給が需要に追い着かない場合には,命の選別ともいえるトリアージを強いられる.社会的に最も幸福な選択として治療を他人に譲る行動もみられたことから,身体的Wellbeing,精神・心理的Well-beingに加えて社会的Well-beingも災害時には非常に重要な要素と考えられた.
近年,我が国でも医療者のWell-beingに対する関心が高まっている.医療者は患者の健康を守り質の高い医療を提供するために重要な役割を果たしているが,その過重な労働環境が医師自身の心身の健康を脅かすことは少なくない.本稿では,医師のWellbeingの概念とその重要性について述べるとともに,医師のバーンアウトの要因とその対処方法について詳述する.特に,2024年4月から始まった医師の働き方改革という新たな局面を踏まえ,Well-beingの向上に向けた具体的な対策とシステムレベルでの取り組みを紹介する.
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら