本稿は,地域包括ケアシステムと地域共生社会に関わる政策の進展を踏まえ両者の関係性を整理しつつ,政策としての連続性・相似性の整理を試みている.地域包括ケアシステムにおいては,支援の包括化が進められてきたが,同様の機能を地域共生社会でも目指していること,また地域に対しては制度の隙間を埋める役割も期待されていることを示唆する.
地域共生社会の理念は,地域の実践から形づくられたものであり,その実践は,地域の創造力ですでに多種多様な形で広がっている.この豊かな地域の創造力こそが,地域共生社会の最大の推進力である. 他方,日本社会はこの数十年で大きく変容した.人口減少,単身世帯の増加,意識の変化などに伴い,共同体の基盤が揺らいでいる.こうした変化を踏まえ,国において地域共生社会の理念を掲げ,施策を推進している.本稿では国の視点から,地域共生社会の歩みと今後の展望を概観する.地域の実践と行政の取り組みが相まって,地域共生社会の更なる発展への一助となることを願い,拙稿させていただくものである.
地域の生活課題が複雑化・複合化する中で,スピード感のある対応や寄り添い伴走型支援が必要となる.根拠法令の異なる分野ごとの縦割り行政対応ではなく,基礎自治体の現場では,シンプルな制度とオールマイティに対応できる体制が求められる. 名張市では,住民主体のまちづくり活動,地域福祉活動の拠点である「まちの保健室」,循環型支援システム「名張市地域福祉総合支援ネットワーク」など,住民自治の醸成により培われた地域のつながりによる支え合い,課題解決力を大きな強みとした地域共生社会の取り組みを進めている.
筆者の勤務地がある福岡県大牟田市では,介護保険制度施行時から官民協働の体制にて「認知症を地域で支えること」を目的にした活動を行ってきた. その結果,多くの住民が目的に従った意識を持つようになり,地域において認知症の人を見守る・支える活動が活発になった.しかし,認知症の当事者からは「支えられる対象(認知症)になりたくない」という意見が聞かれるようになる.私たちは長年にわたり,認知症の人が暮らしにくい地域を作ってしまったのか,その反省とともに現在取り組んでいる活動を紹介する.
地域共生社会の実現に向けて重要な要素は「つながりのチカラ」(ソーシャル・キャピタル)の醸成である.福井県高浜町では2015年より,地域主体に地域の「つながりのチカラ」を引き出す取り組みを各種始めており,実際に町の高齢者のソーシャル・キャピタル指標向上を確認している.「まず自分が楽しく,そしてみんなも楽しく」をモットーに,楽しく地域と向き合い続ければ,変わりゆく時代に適合した地域共生社会を実現することが可能と考えている.
市民活動における課題として,高齢化による担い手不足や組織運営の停滞,さらに個人の孤立などを挙げ,これらの課題解決に向けて,テーマ型コミュニティと地縁型コミュニティの連動,つながりの強弱と表現の陰陽といったグラデーションのある場づくりに取り組んでいる.その中でもコーディネーターとして地域住民との関係性を築き,市民活動の窓口となり,地域へ参加する機会を創出することが地域共生社会の実現につながる要素だと考える.
大阪市西成区通称釜ヶ崎で喫茶店のふりをするアートNPOココルーム.21年間,表現と社会の関わりをさぐるために,ほぼ年中無休で場を開いてきた.釜ヶ崎芸術大学や「まちかど保健室」,ゲストハウスの運営を手がけるようになったのは,地域や社会が変化したから.ひとりひとりの出会いの中から,その時つかんだ手触りをもとに,答えはなくともとぼとぼと歩いてきた.この文章では釜ヶ崎で亡くなったひとりの人との関わりを綴り,場の渦への考察とケアの循環性を考える.
目的:全国へき地医療拠点病院に勤務する理学療法士(physical therapist,以下PT)が在宅復帰を支援する際に重要視する在宅復帰の促進要因を明らかにすることを目的とする. 方法:へき地で在宅復帰を支援するPTを対象に横断的アンケート調査を行った.在宅復帰を支援する上で患者の基本属性,生活機能,人的環境,社会的環境に関して重要視する要因を調査し,階層的クラスター分析により重要視する要因の組み合わせを探索した. 結果:全てのクラスターでサービス資源の量を重要視することが共通しており,クラスター1では年齢,疾患,在院日数,退院時移動能力を重要視し,クラスター2は要介護度を重要視し疾患や在院日数の優先度が高くない,クラスター3は疾患,在院日数,要介護度,退院時認知機能を重要視することが明らかになった. 結論:へき地医療拠点病院におけるPTの在宅復帰支援は退院時の移動能力と認知機能,要介護度の3要因が特徴を分けていた.
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