消化器内視鏡診療はこの40~50年の間に目覚ましい発展を遂げた.胃カメラ,ファイバースコープ,電子スコープへと進化し,その役割も単に診断機器としてのみならず,低侵襲治療機器として発展している. 診断においては高画質,拡大観察,特殊光観察,AIの導入などでますます精度が向上している.治療においても治療用内視鏡の改良,処置具の開発,手技の工夫などの積み重ねにより低侵襲でかつ確実性の高い内視鏡治療が可能となってきている. 本稿では私自身が開発に関わったダブルバルーン内視鏡と内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を中心に近年の消化器内視鏡の進歩に関して解説した.
適切な酸分泌抑制治療によりバレット食道患者の生存率が有意に上昇し,最近では酸関連疾患として食道扁平上皮癌が報告されている.欧米と同じHelicobacter pylori 陰性時代を迎え,肝代謝酵素CYP2C19のバラツキが大きい日本人では酸関連疾患に対する治療には注意を要する.特に日本人に多いExtensive metabolizerには効果が弱い酸分泌抑制剤が多い.また,食道裂孔ヘルニアでは高酸を示すため,その合併症である逆流性 食道炎や食道癌には酸分泌抑制剤の選択が重要になる.バレット食道腺癌および胃噴門部癌では,酸分泌抑制による症状の完全消失はその罹患率を大幅に減らすことが期待され,世界で初めて開発に成功したPCABは,酸関連疾患治療の種々の問題を解決してくれる可能性がある.
2013年に“ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎”が保険収載され, 全例除菌するようになった.H. pyloriが関連する消化管外疾患では, ITPのほか, 鉄欠乏性貧血で除菌治療の効果が考えられている. H. pylori 以外のHelicobacter 属細菌のNon-Helicobacter pylori Helicobacter (NHPH)が注目されている. 除菌後の胃癌発症リスクは10年以上経過後でもあり, 萎縮軽度例で未分化型胃癌の注意が必要である.
低侵襲手術は,小切開鏡視下手術,胸腔鏡/腹腔鏡手術からロボット支援手術に向かって,次の転換期を迎えている.低侵襲手術に求められることは,術後回復が早いこと,整容性が優れることだけでなく,術後合併症が少ないこと,悪性腫瘍であれば長期予後に影響がないことである.1990年に本邦で初めて腹腔鏡下胆嚢摘出術(Laparoscopic cholecystectomy: Lap-C)が行われ,その適応は当初,炎症のない胆嚢結石や良性の胆嚢ポリープだけであったが,近年,急性胆嚢炎や早期胆嚢癌へと適応が拡大している.安全にLap-Cを行うためのガイドラインが整備され最大の合併症である胆管損傷の発生率は低下傾向にあるが,合併症死亡率ゼロを目指してさらに取り組む必要がある.
鼠径ヘルニアの手術は,世界で年間約2,000万件,本邦で約15万件実施されている.治療目的は鼠径部の膨隆や疼痛といった愁訴の改善であるが,悪性疾患と異なり,生死に関わる疾患ではないため,手術が誘因となる新たな疼痛や術後の再発は限りなくゼロであることが求められる.本稿では,本邦での鼠径ヘルニア手術の歴史・変遷について述べた後,近年議論となっている①鼠径部ヘルニア分類の改訂,②機能温存や神経損傷 に配慮したLichtenstein法の再評価,③鏡視下手術,④慢性術後鼠径部痛,⑤手術手技の教育,⑥ロボット支援下前立腺手術と鼠径ヘルニアの関連,等とともに,今後の鼠径ヘルニアの治療の課題について詳述する.
抗がん薬のアイデアは,1900年代初頭にエールリヒが開発した抗生物質から生まれた.第二次世界大戦で使用されたマスタードガスからアルキル化薬が開発され,最初の抗がん薬となった.その後,シスプラチン等の発見が続き,個性豊かな殺細胞性抗がん薬の開発が進められた.これら抗がん薬の高用量多剤併用による根治が試みられたが,固形がんでは不可能であった.そこで,がん遺伝子などからがんの仕組みを解明し,その 弱点を突く分子標的薬の開発が進められるようになった.1990年代後半になり,増殖シグナル阻害薬としてハーセプチン®やグリベック®が登場し,エールリヒの夢であったがんに対する特効薬が現実のものとなった.その後,がんの特徴的な能力である血管新生や免疫逃避をターゲットとする抗がん薬の開発が進められた.
公益社団法人地域医療振興協会ではファイザー株式会社と協同して「地域格差を是正する為の医療提供体制の効率化・最適化を推進する取り組み」というテーマで公募型医学教育プロジェクト助成を実行するコラボレーショングラントを開始した. 当事業は,医療における地域格差を是正することを目的として,① 医学的・科学的知識を実践にうまく活かせていない,② 医学的・科学的知識を実践に活かしてはいるものの結果や成果が伴わない,という状況を改善するため,医療従事者の行動の変容を促すようなプロジェクトを支援するものである.循環器疾患,がん疾患を対象疾患とし,2023年5月~7月に公募を行い,審査の結果,5プロジェクトが選定された.助成金を使用したプロジェクトは2024年1月からスタートしている. 各プロジェクトについて簡単に紹介する.
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