近年,医療界では多くの課題が浮き彫りになっている.例えば,コロナ補助金の打ち切りや医療材料費の高騰,働き方改革による医師の実働時間削減が深刻な赤字経営を招いている.また,後発品の供給不足や医薬品物流の問題も指摘され,病院内の薬剤師不足も深刻化している.一方で,デジタル化が進み,リアルワールドでの医薬品評価や臨床データ収集が効率化されつつある.また医薬品としては特に抗体医薬品や遺伝子治療 などの新規医薬品開発は目覚ましく,多くの新規医薬品が上市されており,分野によっては大きなパラダイムシフトが進みつつある.本稿ではこのような最近の本邦における新規医薬品の状況をレビューさせていただく.
心不全はリスク状態であるステージAから治療抵抗性のステージDへと段階的に進行する(図1).心不全増悪のイベントを経験したステージCの時点,さらにいえば実臨床では左室収縮能が低下しているステージBの段階で最適な薬物治療を導入することで予後が改善される.本稿では,比較的新規の薬剤である,ARNI,SGLT-2阻害薬,sGC刺激薬の3剤を取り上げる.
糖尿病・肥満症の分野で,近年新たな薬剤が使用できるようになってきている.今回はその中でナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2: sodium–glucose co-transporter 2)阻害薬(エンパグリフロジン,ダパグリフロジン),GLP-1受容体作動薬(セマグルチド),GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド),およびイメグリミンについて述べる.これらの薬剤は,低血糖が生じにくく,体重が増加しない特徴がある.SGLT2阻害薬,GLP-1受容体作動薬には,同種同効薬が複数あるが,保険適用は薬剤により異なる.
C型肝炎ウイルスの持続感染は慢性肝炎や肝硬変の原因となり,最終的には肝細胞癌を発症させる.治療法の進歩により,C型肝炎ウイルスは容易に排除できる時代に突入したが,それは,今回のテーマである“知っておきたい最近の薬”の功績であろう.しかし,C型肝炎が難治であった時代が長く,いまだその“呪縛”に囚われている患者も多いと思われる.また患者自身が感染していることに気づかず,恩恵を受けられない方々も存在する.よって,治療未介入の患者の拾い上げも課題である.本稿ではC型肝炎治療の歴史とともに,治療,対策の現状を紹介する.
潰瘍性大腸炎に対する治療薬は種類が多く,複雑である.特に難治例の治療においてはガイドラインに記載されている選択肢の中からどの薬剤を選択するべきなのか,悩まれる先生方は多いと考える.逆を言えば,ここ数十年でこれまでにない治療選択肢が次々と生まれており,治療できる患者数は確実に増えている.症状の重さ,病変の広がり,患者背景を十分考慮した上でShared Decision Making(共同意思決定)を行うためには,使用しうる全ての薬剤を把握する必要がある.
気管支喘息の病態メカニズム解明の進展により,種々の生物学的製剤が開発され,難治性・重症喘息患者に対して使用されている.生物学的製剤は既存の治療によって喘息症状が安定しない例や,全身性ステロイド薬(oral corticosteroid: OCS)投与が必要な難治性・重症喘息例に用いられる.生物学的製剤の選択にあたっては,末梢血好酸球数,総IgE値,呼気中一酸化窒素濃度(FeNO),などのマーカーを確認し,併存症などを考慮した上で選択される.
HIF-PH阻害薬は,低酸素誘導因子(HIF)プロリン水酸化酵素を抑制する新しい腎性貧血の治療薬である.従来のエリスロポエチン製剤との違いとして,経口内服製剤であること,鉄代謝の改善作用があることが挙げられる.一方で,悪性腫瘍,血栓症,網膜症の増悪といった副作用の懸念もあり,プライマリ・ケア医が知っておくべき内容について概説する.
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