マルチモビディティとフレイルはそれぞれ異なる状態であるが,両者には重複がある.フレイルはマルチモビディティを伴うことが多い.マルチモビディティとフレイルは双方向の関連性があり,そのことが健康状態を悪化させ,障害や死亡などの負の健康アウトカムをもたらすことが共通している.糖尿病患者は,マルチモビディティとフレイルになりやすい.うつなどの精神障害やフレイルがあると,臨床転帰にとりわけ悪影響を及ぼしやすいので,その対応が求められる.
健康寿命の延伸を目的としたフレイル診療に,プライマリ・ケア診療所が意図的に取り組むことは重要である.しかしながら,現在の医療制度と環境におけるフレイル診療の実践にはさまざまな制約がある.日常診療での実践につなげるためには,①フレイルの概念を日常診療に組み込むこと,②電子カルテを工夫した包括的な情報収集を意識すること,③既存の介護保険制度と地域資源を適切に理解・活用することが重要である.
我が国の高齢化は諸外国よりも進んでおり,心不全パンデミックと呼ばれている.心不全患者は認知機能低下やフレイルのリスクが高く,その予防と生活の質を考慮した治療が必要となる.心不全患者はフレイル・サルコペニアから要介護状態となり,心臓カヘキシアに陥るため栄養状態に注意する必要もある.生活活動度に応じた四肢骨格筋のリハビリ,栄養管理,社会ネットワークとのつながりを看護師,栄養師,薬剤師,理学療法士,ソーシャルワーカーなどを含めた多職種で行う.
高齢化の進行に伴い,診療所によるフレイル予防の重要性が高まっている.当院では地域包括診療の枠組みを活用し,外来CGA(高齢者総合的機能評価)となる個別評価プログラムを開発し,栄養・運動指導を中心に介護予防につながる介入を実施している.さらにICTを活用した多職種連携を推進し,医療・介護の効率的な統合的実践を目指している.これからの診療所には地域包括ケアのハブとして,住民が安心して生活できる支援体制への参加が求められている.
高齢者に必要な医療とは,臓器機能と生活機能の両面からアプローチする全人的医療であり,「フレイル」の提唱は,高齢者の生活機能とその障害の把握の重要性を示した.超高齢社会を迎え,全人的医療実践のニーズはさらに高まっているが,組織としての体制を有する病院は少ない.病院での高齢者診療体制として,院内に診療組織を作り活動している虎の門病院高齢者総合診療部と,地域住民への健康サービスに重点をおく鹿児島共済会南風病院の活動という2つのモデルを紹介する.
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