日本畜産学会報
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23 巻, 3 号
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  • 第II報 X線透視及び間接撮影法による研究
    広瀬 可恒, 大谷 勲
    1952 年 23 巻 3 号 p. 85-90
    発行日: 1952年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1 3-4ヶ月令の仔山羊4頭について,胃洗滌を行なひ,硫酸バリウム澱粉粥をカテーテルを通じて第一胃中に注入し,X線透視法及び連続間接撮影法によつて,第一胃•第二胃運動及び嚥下食塊の流入経路を研究した。
    2 第二胃の運動は極めて短時間に経過する二拍子の全体的収縮弛緩運動で,最大収縮段階では,殆んどその姿が第一胃中に没する程に強力である。その際第二胃内容物を第一胃中へ抛出する。
    3 第二胃の弛緩と同時に,第一胃の蠕動的な収縮弛緩が緩慢な速度でなされる。その順序は背部嚢の収縮•腹部後盲嚢の膨大,次いで背部嚢の弛緩•腹部後盲嚢の収縮とが交代的に1回行はれた後原形に復し,長い休止期に移る。この運動は第1報でA型運動と呼称したものに相当する。
    4 長い休止期後再び第二胃運動-第一胃のA型運動が経過して一旦原形に復した後,殆んど休止期を置かず又第二胃運動を伴はずに第一胃背部嚢の収縮弛緩,腹部後盲嚢の波動的収縮運動がなされて原形に復し,前回より短かい休止期に移る。この運動はA型運動とは明かに運動様式を異にし,第1報でB型運動と呼称したものに相当し,後盲嚢部内容の掻き出し作用が示唆せられる。
    5 第一胃•第二胃運動の順序は次の通りで,キモグラフ研究結果とよく一致する。第二胃運動-第一胃AB型運動-短い休止期-第二胃運動-第一胃A型運動-長い休止期
    6 嚥下する固形飼料は,食道溝より第一胃起始盲嚢部に納り,第二胃運動の弛緩時に第二胃中に入り,収縮時に第一胃の奥深く抛出せられる。
    7 反芻を行はない場合に於ても,第一胃の半流動状になつた食粥は,第三胃を経て第四胃へ移行する。
    8 流動物を哺乳時の要領で吸飲嚥下する際は,食道溝を経て第三胃•第四胃の進路を取るが,飲水時の如く大のみする際は,悉く第一胃•第二胃へ流入する。
  • 第I報 Acidulationとクツキングの温度がチーズの水分含量に及ぼす影響に就て
    長沢 太郎, 棚橋 保
    1952 年 23 巻 3 号 p. 91-94
    発行日: 1952年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    半脱脂乳よりEdam型チーズを製造する際原料乳のAcidulationを0.203-0.248%,クッキングの温度を33-39°Cとした時それらがチーズの含水量に及ぼす影響に就いて実験した。又原料乳として半脱脂乳を利用する関係上ホヘー中に逃げる脂肪量の減少を図る様全乳Edamチーズ製造方法に検討を加えたが得られた主なる結果は次の如くである。
    1) 全脱脂のAcidulation 0.212-0.243%,クッキングの温度33°C,の場合生チーズ(製造後1ヶ月)中の水分含量は52~56%,平均53.76%であるが同一Acidulationでも34°Cになれば水分含量は急激に降下し約47%となる。
    2) 半脱脂チーズの場合含水量52%のものを製せんとせばAcidulation 0.207-0.248%の時はクッキングの最高温度は33°C,47-48%のものを得んとすれば36°C以下,46%程度のものは39°C以下が必要である。
    3) 全乳Edamの製法に依る場合のホヘーの脂肪率は0.39%にして高いので之を改良し脂肪の損失の減少を図る為めに原料乳を殺菌しAcidulationを行い切断の時期は稍々硬目としカードの大きさは大ぎ目即ちI/4インチ立方程度とすれば半脱脂乳に依るホヘー中の脂肪率は0.06%となり常法のI/6以下となる。従つて従来全乳Edamチーズを作るのには原料乳の脂肪率2.5%以上が必要となつていたが此の改良法に従えば遙かに低い脂肪率で可能である。即ち生チーズの水分含量52%の時は原料乳の脂肪率1.80%,48%の時は1.67%,46%の時は1.60%で可能であるが其の間多少の変動があるから,その安全性を加味して1.80-1.90%で充分であろう。
    本実験実施に当り種々便宜を与えられた岐阜県種畜場長中村貞八氏に深甚なる謝意を表す。尚又製造実験に熱心に協力せられたる岐阜県種畜場安江克己技師,及岐阜大学農学部研究生岡田増夫氏に感謝の意を表す
  • II 水分含量が該チーズの蛋白分解度,組織竝に貯蔵性に及ぼす影響に就て
    長沢 太郎, 棚橋 保
    1952 年 23 巻 3 号 p. 95-98
    発行日: 1952年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    半脱脂乳より含水量46~52%のEdam型チーズを計5回試製し1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月毎に風味,組織,貯蔵性を全乳チーズ(1/4脱脂)のそれらと比較対照した。猶味竝に其の発生状況は蛋白分解度の測定に依り行つた。得られた主なる結果は次の如くである。
    1) 生チーズの含水量(製造後1ヶ月)56%の脱脂チーズ及52%の半脱脂チーズは3ヶ月迄良好な風味を呈したが以後水溶性窒素は急激に上昇しアンモニヤの含量も全乳チーズに比して約2倍量となり微弱ながら腐敗臭が認められ貯蔵性が悪い,又半脱脂チーズのbodyはSoftである。
    2) 之に反し含水量46~49%(製造後1ヶ月)の半脱脂チーズ全乳チーズに比しアミノ酸の含量は反つて大でありアンモニヤの含量竝に水溶性窒素の生成割合は全乳チーズとほゞ同様にして何れも6ヶ月間何等の風味の変化なく貯蔵性は前二者に比し遙かに良好である尚風味の点に於ては全乳チーズは之等の半脱脂チーズに比して多少コクに於て勝る点が認められたが其の間の差異は僅少であり又半脱脂チーズの組織は脂水量大なる為特にmechanical holeが多いと云う事実は認められずbodyもhardでなかつた,之を要するに脂肪率1.5~1.6%の半脱脂乳よりEdam型チーズを製造する際その含水量の範囲を生チーズにあつては46~49%に調節すると共に其の脂肪率を約20%前後にすれば風味,組織,貯蔵性等に於て全乳チーズ(脂肪約30%)に遜色なきものを製造し得る。
    本実験遂行に当り研究生岡田増夫君の協力を得た茲に記して感謝の意を表する次第である。
  • 安田 徳治, 高橋 茂孝
    1952 年 23 巻 3 号 p. 99-101
    発行日: 1952年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    精液中の酵素Hyaluronidase(以下H-aseと略す)が受精の際に卵胞細胞(Cumulus cells)を分散させて卵子を裸出の精子の侵入を助けることは既に、McCLEAM & ROWLAND (42), FEKETE & DURAN-REYNALS('43)を始め多くの研究者により報告されている。彼等は卵胞細胞を分散させることが受精に必要な一条件であるとしでH-aseの受精に於ける役割を主として此処に置いている。然し乍ら一方卵胞細胞が分散する前に精子が卵のPerivitelline spaceに侵入していることをI EONARD等('47). AUSTIN ('48), LEWIS & WRIGHT('35)等はマウス及びラツトで観察してをりBOWMAN('51)も亦卵胞細胞に囲まれたまゝでラツトの卵が精子の侵入を受けていることを報告してをり.AMOROSOは
    猫の卵で同様の事実を観察した。従つて他の動物は兎も角としてマウス,ラット及び猫では必ずしもH-aseによる卵丘細胞の除去が必要だと考へられない。
    POMMEPENKE & VIERGIVERは発情期のラツトの子宮頸の粘液(Cervical mucus)を通過する能力はRINGER氏液で洗つた精子も洗はないものでも変らない。そしてH-aseは粘液中の栄養を精子が利用する上に重要な役割を演ずるらしいと暗示している。又高嶺氏は精子の膣粘液通過能力はH-aseを加へたものに於て大であると報告している。
    以上の如く受精におけるH-aseの役割は未だ十分に明らかにされているとは云えない。吾々はこの方面の研究に当り先づ各家畜精液中に含まれるH-aseの全量を測定して比較検討した。
  • 土屋 平四郎, 八幡 策郎
    1952 年 23 巻 3 号 p. 102-106
    発行日: 1952年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    和牛の乳利用に資するため,山口県産の第4産を分娩した無角和種牝牛1頭を用いて,搾乳により乳量を調査し,尚その乳を試料として脂肪率,比重,酸度,脂肪球及び化学組成等各種の理化学的性状を調査した結果を摘録すれば次の如くである。
    (1) 第4産を分娩した無角和種の搾乳可能期間はおよそ分娩後6カ月余で,その問の1日平均泌乳量は約7.02kgであり,1日最高乳量は約14.3kgである。これは黒毛和種及び褐毛和種よりも泌乳量は多いようである。
    (2) 無角和種の乳の脂肪率は平均4.47%で,大体において黒毛和種よりはやや多いようであるが,褐毛和種よりは少ない。
    (3) 無角和種の常乳の比重は黒毛和種のそれとほぼ同様で1.032である。
    (4) 酸度は常乳において0.15~0.16%,細菌数は1cc中26~40万であつて,黒毛和種のそれと大差ない。
    脂肪球の数は泌乳末期に向つて漸増して常乳では1cc中12~37億に達し,これは黒毛和種及び褐毛和種の場合とほぼ同様である。脂肪球の大きさは黒毛和種及び褐毛和種よりも大きく,乳用種中最大といわれるジヤージー種よりもやや大で,常乳において3.3~4.5μに達する。
    常乳の化学組成は全固形物,脂肪,蛋白質において黒毛和種と夫差なく,褐毛和種よりやや少なく,乳糖は黒毛和種及び褐毛和種よりも多い。灰分においては黒毛和種と大差なく,褐毛和種よりはやや多い。本邦の一般乳用種のそれに比して灰分は少ないが他の成分はすべて多い。
    (7) 無角和種の初乳は化学組成において分娩後40~50時間にして常乳と殆んど差がなくなる。この時間は黒毛和種と褐毛和種のそれの中間である。
    (8) これを要するに,無角和種の乳質は一般乳用種のそれよりも成分的に優れ,黒毛和種及び褐毛和種のそれとほぼ同様であり,その泌乳量は両品種よりも多く,又その質も飲用に好適なので,農家が自家利用するに充分であると考えられる。
    擱筆するにあたり,本研究に対し御懇切なる御指導と御校閲を賜つた当畜産部長石原盛衞博士に心から感謝の意を表する。
  • 上坂 章次, 川島 良治
    1952 年 23 巻 3 号 p. 107-109
    発行日: 1952年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1 無角和種が粗悪な飼料の利用性に富むものかどうかをみるために,粗飼料の消化率を求め,有角の和牛のそれと此較してみた。有角の和牛は2頭でそのうち1頭は黒毛和種であり,他は豚尻牛であつた。
    2 無角和種は黒毛和種及び豚尻牛に比して一般に粗飼料の消化率が高かつた。ことに粗飼料の質の良好でない時にこの差は判然と現われるようである。
    3 粗飼料の質が悪化した場合,無角和種における各飼料成分の消化率低下の割合は豚尻牛に比して少かつた。これは無角和種が粗悪な飼料をもよく利用する能力があることを示すものかと思われる。
    4 豚尻牛の消化率は一般に無角和種に比して低いが,粗飼料における粗脂肪の消化率のみはやゝ高かつた。それにも拘わらず豚尻牛が体脂肪蓄積の能力に乏しいとすればそれは,豚尻牛の脂肪代謝における生理異常の問題と関連しているものと思われ,興味ある事実といゝうるであろう。
  • 第II報 パンクレアチン作用の試験
    佐々木 林治郎, 神谷 誠
    1952 年 23 巻 3 号 p. 110-113
    発行日: 1952年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    蛋白質消化液の滴定に於ける基準の異なるのは苛性ソーダによる呈色点がカゼインと血液蛋白質とで同じでないからである。
    血清蛋白質が消化し難いのは血清にアンチ•トリプシン3)が存在するためであらうと思われる。アンチ•トリプシンは60°C以上に熱するとこわれるので加熱処理したものは消化され易くなると云う報告4)もある。
    これを要するにパンクレアチンによる消化の最適条件は蛋白質によつて多少の相違はあるが,温度はカゼイン50~55°C,フイブリン50°C,血清蛋白質45~50°C,であり,pHはそれぞれ7.6~8.2,7.2~7.4及び7.8である。
    なおカゼイン,血液蛋白質の何れも基質濃度の増加と共に一定時間内の溶解度及び消化量は減少する。
    試料蛋白質溶液に酵素を加えて最適反応に調整し,40°Cに於て消化を行つた結果によるとカゼインは12時間でペプトン量が最高となり全窒素量の39%,フイブリンは48時間で37%に達し,また残余窒素量はカゼイン,フイブリンともに48時間で最高値42%内外であつたが,血清蛋白質は極めて消化し難くペプトン量は9%弱にすぎない。
    工業的にペプトンを製造するには40~50°Cに於て20時間位最適反応を維持するように適宜に調整して48時間程度の消化を行うのが適当と考える。
  • 1952 年 23 巻 3 号 p. 113
    発行日: 1952年
    公開日: 2008/04/21
    ジャーナル フリー
  • 中村 亮八郎, 竹林 克明
    1952 年 23 巻 3 号 p. 114-118
    発行日: 1952年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    アンゴラ仔兎の発育及び毛生と飼料蛋白の給与量との関係を明かにし,併せて仔兎に対する給与蛋白の適量を求めようとして,蛋白含量を異にする数種の飼料を用いて仔兎の生長試験を行つた。家兎に対する蛋白給与量に関しては,これ迄短毛兎について若干報ぜられているが,アンゴラ種においては,毛生も当然問題にされるので,これを出来るだけ考慮し,更に前報(1)に続いて,毛生と栄養との関連性の一端にも及ばうとした。
  • 今井 倭武
    1952 年 23 巻 3 号 p. 119-122
    発行日: 1952年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    The Epistropheus of the domesticated Animal shows very strange shape. Although it has widely different shape from other general cervical vertebrae, yet we understand the process of its growth when we observe it carefully.
    Now, I Will give my opinion about this strange Epistropheus in accordance with my observation.
    (1) With regard to the spinous process of the Epistropheus of the live-stock, it is shahed in process of its growth as under-mentioned.
    The lateral part of the dorsal surface of the arch towers, and both right and left towering parts combine each other closely to the medial side of the arch, when the original spinous process is wrapped in these ones. This fact shows that spinous process of the Epistropheus is essentially different from one of other general cervical vertebrae.
    (2) The cranial articuiar processes can be also .found on the Epistropheus. However, its situation declines more ventrally than that of others, falls cranially, and its medial side united with the body of the Atlas and the Epistropheus.
    (3) The Epistropheus also has the costal. part of the Proc. costotransversarius vertebrae cervicalis, which develops very poorly and is obscure because of its conbination with the ventral side of the cranial articular process.
  • 前野 正久, 有馬 俊六郎
    1952 年 23 巻 3 号 p. 123-125
    発行日: 1952年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    主として遊離酪酸量及酸度より防腐剤の効果を見たのであるがその際脂肪分解臭と遊離酪酸量では其の量が2~3mg%になると認められ5mg%以上になると顕著になつた。
    酸度では0.2~0.3%で分解臭が認められた。クライス反応も過酸化物反応も分解臭の初期ではいづれも陰性であつた。使用した防腐剤ではN. D. G. A.及びクマリン系が良く之等を直接バター脂肪に加へた場合,1/5000でも効果が有るが包装紙の場合少くとも1/2000以内でなければ効果がないと思はれる。バター製造操作中ではウオーキングの時が良いのは勿論であるがクリームの時に添加した場合のバター脂肪の抗酸化性について更に実験を続けたいと思ふ。抗酸化剤が必ずしも微生物に効くとは考へられないがバターには総じて3アセチル4ハイドロクマリンが良好でN. D. G, A,等との併用が考へられ其の適当な濃度決定は衞生上の問題もあり今後の研究に待ちたい。終にあたり防腐剤の御惠贈に与つた,東大住木教授並石井教官に感謝の意を表す。
  • 望月 公子, 西田 司一
    1952 年 23 巻 3 号 p. 126-131
    発行日: 1952年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1 マウス副腎皮質X-zone細胞の細胞質は明かに好塩基性を示し,この好塩基性はリボ核酸に依るものである事を確めた。
    2 本層細胞内のRNAの分布型は多様である。又細胞質内のRNAの量はオスミウム還元物質と量的に逆の関係を示す様である。
    3 幼若及び去勢雄マウスのX-zoneにエオジン,フクシン好性を示すコロイド様物質が認められ,その一部はRNAを僅かに含んでいた。
    4 X-zone中には多数の有糸分裂像が認められ,退化像は比較的少く,退化細胞の細胞質にはRNAの消失が認められ,核は核融解に係る退化像を示すものが殆どを占めPycnosis様の変化を認めなかつた。
    5 X-zone細胞の細胞質中にRNAの存在することから本層が常に何等かの機能に関与していると考えられ,此の点に就て論じた。
    擱筆するに当り終始変らざる御指導を仰いだ恩師増井清博士並に幾多の御便宜を頂いた市川収博士に衷心より感謝の意を表する次第である。尚本研究は文部省科学研究費に依る研究の一部である。
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