アルミノン法およびジチゾン法によつて,牛乳および乳製品のAlとZn量を測定した.試料には個体乳71,合乳55,市乳81,脱脂粉乳15,.全粉乳11個を用いた.各試料中のAlとZn量(灰1g中のμg数)は,それぞれ72.82±36.69と409.04±143.08,81.29±28.74と381.37±119.05,80.14±33.64と398.34±43.13,52.12±12.96と472.51±93.59,64.38±14.05と478.33±34.38であつた.この結果から,牛乳は,搾乳から集乳までの間にAlに汚染されるが,市乳および粉乳製造中には,Alの汚染がほとんど起こらないことがわかつた.しかし,地域および季節的に著しい差があり,特に夏季の牛乳中のAlが多かつた.これは汚染によるものではなく,牛乳本来のAl量の増加であつて,飼料と関係があるらしかつた.また,牛乳中のAlは個体差が大きく,これが地域差と関連するのではないかと想像された.以上のような点があるので,従来報告されたAlの定最値が一定しなかつたのであろう.
これに反して,Znには地域差が少ない.また搾乳から処理までに,牛乳がZnに汚染されることはないが,粉乳の場合には相当量(原料乳の約20%)が汚染をうける.これまで,Znは泌乳末期に増加するといわれていたが,著者らの実験では逆に減少した.すなわち,泌乳停止の月には286.50μg(n=9)に過ぎないが,その前月には411.29μg(n=9),その前々月には437.08μg(n=7)のZnを含んでいた.このような泌乳末期の変化は,牛乳の灰の組成が,血液のそれに近づくためであることを,その牛の血液中のZn量と比較することによつて推察した.
このAlとZn量の間には,なんら有意の相関が認められなかつた.
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