既報
7)の諸元素と同じ要領で,1960年6月から1962年2月にかけて,牛乳および乳製品中のマンカン(里•村田法)とホウ素(クルクミン法)の定量を行つた.
各種試料中のMn量(μg/灰分1g)をみると,個体乳5.31±1.79(n=81),合乳5.20±1.33(n=60),市乳6.08±1.76(n=104),調製粉乳5.49(n=8),全粉乳4.68(n=18),脱脂粉乳4.37μg(n=13)であつた.この値は,欧米諸国の文献値より高い.しかも,諸外国の粉乳について,上と同じ方法で測定したところ,調製粉乳で5.03,全粉乳4.45,で脱脂粉乳で3.98,μgなる値を得た.すなわち,日本の牛乳は,欧米諸国のものよりも,Mnが6~10%多い結果となつた.また,季節的変化をみると,冬の牛乳は,夏の牛乳よりもMnが多く,前者が6.36μgであるのに対して,後者は5.33μgであるから,両者の間には約1μgの差があつた.この2点は,わが国で乳牛に多給されるいねわらに,多量のMnが含まれているためではないかと考えられた.さらに,市乳と合乳を採取した地区のうちに,Mnがきわめて多い地区があつたことと,同一条件で飼育した場合でも,個体によつて6.42~4.12μgの範囲内の差があつたこと,さらに泌乳初期の乳では,Mn量がやや少ないことなどを認めた.
B量は,個体乳で23.75±4.43μg(n=53),合乳で23.32±7.72(n=52),市乳で24.38±9.44μg(n=72)なる値を得た.これをみると,市乳のB量がわずかに多いが,市乳瓶からの汚染は認められなかつた.季節的にみると,牛乳中のB量は夏に高く,冬に低い.しかし,泌乳の時期による変化はなかつた.
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