日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
38 巻, 12 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • V. Ca出納とCa源の卵殼蓄積割合
    伊藤 宏
    1967 年 38 巻 12 号 p. 507-514
    発行日: 1967/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    16羽の産卵鶏(産卵率86%)にCa45を午前10時または午後4時に10日間連続経口投与し(第1期),それに続く10日間(第2期)と共に両期間CaおよびCa45の出納試験を行なつた.卵殼は5層に溶解区分して分析し,第1期最終日と第2期第1目の卵殼各層のCa45含量を比較して,卵殼形成中における3つのCa源,即ち"飼料Ca","一時的骨Ca"および"骨Ca"の卵殻蓄積量の変化について検討を加えた.
    1日当りのCa摂取量(3.07g)の93%が吸収され,その内6%が"飼料Ca"として直接卵殻に蓄積される,残りの87%の内,直接内生的に排泄される17%を除いた70%が骨に蓄積され,その内の11%(バランス)を除いた59%が"一時的骨Ca"および"骨Ca"として骨から離れる.その内,48%が卵殼に利用され,残り11%が内生的に排泄される.未吸収のまま排泄される7%と全内生排泄量28%を合わせた35%が排泄される.
    第1期の1日当りの卵殼Ca量は1.65gで,その42%が朝の飼料から由来し,"一時的骨Ca"と"骨Ca"とのみから成り,それぞれの占める割合はほぼ等しい.残り58%は夕方の飼料から由来し,内10%は"飼料Ca"によつて第2層までに直接蓄積され,残りの2/3(33%)は"一時的骨Ca",1/3(15%)は"骨Ca"で占められる.卵殼全体として,10%が"飼料Ca",54%が"一時的骨Ca",36%が"骨Ca"によつて形成されている.また"骨Ca"の内,11%は長期間骨に蓄えられた後に利用されたものと考えられる.
  • IV. 濃厚飼料給与が若令去勢牛の放牧による増体に及ぼす影響
    林 兼六, 太田 実, 伊沢 健, 照屋 善吉, 竹内 三郎
    1967 年 38 巻 12 号 p. 515-521
    発行日: 1967/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    去勢牛の若令肥育において,集約的に草地を利用し,飼養管理の省力化をはかつてゆくための一法である濃厚飼料給与(補給)放牧について,その経済性を,放牧前の舎飼期の栄養水準に基づく補充発育や放牧後の舎飼期への影響などとの関連で,主として増体効果を中心に検討した.
    体重比約1%の濃厚飼料の補給による増体は,全放牧のものに比べて58%の増となり,また前歴の栄養水準の差に基づく補充発育の効果も有意に認められた.濃厚飼料の補給による放牧面積の節減(牧養力の向上)は55%であり,それにより飼料効率も約10%改善された.
    放牧後の舎飼期には,全放牧から再び濃厚飼料を給与したものの中に,補充発育とみられる取り戻し効果を発揮した群と,そうでない群とができた.これには放牧前の舎飼期の栄養水準が関連しているようにも思われるが移行期の環境変化による影響の究明とともに今後の研究が必要である.
    濃厚飼料給与放牧の経済性は,今回の試験結果からみると,全放牧のものに比べてやや不利と推算されたが,補給の時期や方法などを再検討することによつて技術的に改善の可能性がありそうだし,また最終的な経済性の判定は,それぞれの経営条件に基づいて総合的になさるべきものであろう.
  • 5. 珪酸カラムクロマトグラフィーによるりん脂質画分の脂肪酸組成の変動
    森 茂, 土肥 達, 井上 芳子, 佐々木 敬卓, 鈴木 徳信, 仁木 達
    1967 年 38 巻 12 号 p. 522-526
    発行日: 1967/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1) 珪酸カラムクロマトグラフィーの溶出の時間的経過に従つて溶出されるりん脂質の脂肪酸組成が変動するのではにいかと考え,牛乳から抽出したりん脂質を珪酸カラムクロマトグラフィーで分画し,各フラクションを薄層クロマトグラフィーで同定および純度を検定し,ガスクロマトグラフィーでその脂肪酸組成を測定した.
    2) ケファリン画分とC:M=3:2画分(ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルセリンと考えられる)は珪酸カラムクロマトグラフィーの溶出位置によりあまり差はなかつた.ケファリン画分の脂肪酸組成はおよそC16=8%, C18=11%, GΔ1 18=46%, GΔ2 18=12%であり,ケファリン画分の前に溶出されるホスファチジン酸かあるいはカルジオリピンと考えられる画分はケファリン画分に比べてCΔ1 18が少なく,C18, C23, C24, CΔ1 24が多かつた.
    3) レシチン画分では不飽和脂肪酸を多く含むレシチンがはやく溶出され,飽和脂肪酸を多く含むレシチンがおそく溶出される傾向があり,溶出初期と後期ではC16が17%と41%,CΔ1 18が38%と21%と大きな差があつた.しかしTLC上ではいずれも同じRfの単一スポットを示した.
    4) スフィンゴミエリン画分ではTLCで2種のスフィンゴミエリンの存在を確認し,Rfの大なるスフィンゴミエリンははやく溶出し,Rfの小なるスフィンゴミエリンはおそく溶出する傾向があり,前者はC16が12%,C22以上の脂肪酸が65%であつたが,後者はC16が41%,C22以上の脂肪酸が35%という結果が得られ著しい差があつた.
  • I. 硝酸塩の添加がめん羊の増体および血液成分に及ぼす影響
    宮崎 昭
    1967 年 38 巻 12 号 p. 527-536
    発行日: 1967/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    飼料中への硝酸塩添加がめん羊の増体および血液に及ぼす影響を検討するため,生後約6ヵ月令の去勢めん羊41頭を用いて,つぎのような3つの試験を行なつた.
    1. 第1試験ではめん羊16頭を4区に分け125日間育成した.1区では硝酸塩を与えず,2区では1日当たり体重の0.04%,3区では0.06%,4区では0.08%の硝酸カリウムを飼料に添加し,朝夕2回に等分して給与した.基礎飼料としてはエネルギー水準がかなり低いものを用いた.その結果,1日当たりの増体量は平均1区53.6g,2区49.6g,3区52.8g,4区37.6gで,硝酸塩の添加量が体重の0.08%になると,増体は悪くなつた.
    2. 第2,第3試験では,第1試験で増体の抑制が認められた硝酸塩添加量の前後で,硝酸塩が増体に及ぼす影響を再検討してみた.まず第2試験ではめん羊15頭を2区に分け140日間育成した.1区では硝酸塩を与えず,2区では1日当たり体重の0.06%の硝酸カリウムを飼料に添加して給与した.その結果,1日当たりの増体量は平均1区,63.8g,2区63.4gで,この程度の硝酸塩の添加は増体に,ほとんど影響を及ぼさないようであつた.つぎに第3試験ではめん羊10頭を2区に分け140日間育成した.1区では硝酸塩を与えず,2区では1日当たり体重の0.08%の硝酸カリウムを飼料に添加して給与した.その結果,1日当たりの増体量は平均1区90.0g,2区75.7gで,硝酸塩の添加量が硝酸カリウムとして1日当たり体重の0.08%となると増体は抑制されるようであつた.なおこの場合めん羊が摂取した硝酸塩を飼料乾物中の硝酸カリウムとして示すと,3.3~3.7%となり,飼料乾物中の硝酸カリウム含量が3.3%以上になつて,はじめて増体の抑制が認められたことになる.
    3. これら3つの試験を通じて,試験期間中および終了時に測定しためん羊血液中の総ヘモグロビン含量,メトヘモグロビン含量および赤血球数は,いずれも硝酸塩の添加量が多くなるにつれて増加した.これは硝酸塩を摂取しためん羊の血液中にメトヘモグロビンができると動物の組織に酸素が充分送れなくなるため,血液中の総ヘモグロビン,赤血球数が代償的に増した結果であろう.しかし白血球数については一定の傾向が認められなかつた.
    4. 試験終了後にめん羊を屠殺し,その臓器を剖検したが,肝臓,膵臓,腎臓,消化器,甲状腺,副腎,などは硝酸塩の摂取によつて,とくに異状を示すことはなかつた.ただし硝酸塩を多く添加した区において,脾臓が腫脹しているものが認められた.これはメトヘモグロビンによる酸素不足が影響したものと考えられた.
    5. これら3つの試験を通じて,飼料中の硝酸塩がめん羊に及ぼす影響は,動物個体間にかなりの差異があるようであつた.
  • IX. エンバクの生草•乾草およびサイレージにおける飼料価値
    丹比 邦保
    1967 年 38 巻 12 号 p. 537-546
    発行日: 1967/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    エンバクの生草,乾草およびサイレージの3種の状態における飼料価値を究明するために,9月と11月の播種のものについて消化試験を行なつた.
    生草は各刈取日ごとに給与日量分を計り分け当日分以外は冷蔵庫(0~3°C)内に保存し,乾草は予乾後,通風乾燥機(50~60°C)で水分含量を15%に調製し,サイレージは水分含量を日乾で80%に調製したもの(生育ステージは開花期)をサイロに詰込み,それぞれをめん羊に給与して常法により消化試験を行なつた.
    1. 生育ステージ別の刈取りの場合,生草では生育ステージの進行に伴なつてDCP含量は低下するが,TDN含量は止葉出現期以後のものが比較的少なかつた.乾草でもDCP含量とTDN含量の推移は生草の場合とほぼ同様であつた.このため,生草•乾草のいずれも若刈期のものと生育ステージの進んだものとの間にDCP含量とTDN含量について統計的有意差が認められ,生草と乾草の間ではDCP含量に生草がすぐれ,両者間に統計的有意差が認められた.
    2. 開花期の刈取りの場合,生草では刈取回数あるいは播種期によつてDCP含量•TDN含量とも統計的有意差は認められないが,乾草ではDCP含量において3番草が1•2番草より多く,これらの間に統計的有意差が認められ,生草と乾草の間ではDCP含量に生草がすぐれ両者間に統計的有意差が認められた.
    3. サイレージと生草および乾草との比較では,サイレージはDCP含量•TDN含量とも他に劣つた.このため,DCP含量では生草•乾草とサイレージの間に統計的有意差が認められ,TDN含量では1番草にのみ生草•乾草とサイレージの間に統計的有意差が認められた.なお,サイレージ間では飼料価値の差異は認められなかつた.
  • III. 第一胃内微生物の窒素代謝に対するラジノクローバー抽出液の作用
    高橋 直身, 野崎 義孝
    1967 年 38 巻 12 号 p. 547-552
    発行日: 1967/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    Extract of dried Ladino clover powder which was prepared with the medium of dil. HCl and aceton (20:1) at pH 1-2 was infused into the rumen through the fistula after the neutralization with NaOH and the effects on the nitrogen metabolism and the gas formation exerted by the rumen bacteria were examined.
    First, this extract was given to two male and female goats which had been fed on the hay and concentrate through the fistula daily before feeding in the morning for one week. Then the next week the rumen contents were taken out before feeding and infusion of the extract in the morning, and they were filtrated through double gauze and resulting filtrate were centrifuged to remove large debris and protozoa.
    Then, casein, amino acids mixture and urea were added to this rumen liquor and were incubated at 39°C for 1-3 hours. And the proteolytic activity of rumen bacteria was examined by the estimation of the amount of protein which was consumed during incubation. Then the deamination of amino acid and the urease activity of rumen bacteria were examined by the method of estimation of ammonia.
    Two (W/V) percent of soluble starch was added to the rumen liquor which was put into fermentation tubes and the volume of the gas produced was estimated after the incubation at 39°C for three hours.
    As the results it was ascertained that there was not difference in the value of proteolysis, deamination and urease activity between the periods of before and after the administration of the extract. But the volumes of the gas produced were always greater at the time of infusion of the extract.
    The authors, therefore, concluded that the factors which were contained in the grass extract did not influence the activity of nitrogen metabolism but influenced the carbohydrate metabolism of which gas production was related.
  • 水野 利雄, 氷上 雄三
    1967 年 38 巻 12 号 p. 553-558
    発行日: 1967/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    筋線維の成長は,発生期においては,線維数の増加により,発生の後期および出生後は,線維容量の増大により起るものと一般に考えられている.しかし,鶏胚について,筋線維の成長を調べた報告は少ない.
    本実験は,白色コーニッシュと白色ロックの交雑種および白色レグホーンを用いて,孵卵開始後9日から21日までの13日間にわたり,筋線維数およびその直径を調べたものである.また,孵卵開始後10日目に,白色レグホーンの胚に抗甲状腺剤であるthioureaを注射して,筋線維数および直径の増加に及ぼす影響を調べた.結果は次の通りである.
    1) 筋線維の直径は,実験期間を通じてほとんど増加を示さなかつた.白色レグホーンと交雑種の間には,筋線維の直径に有意な差は認められなかったが,thiourea処理胚の直径は,未処理のものより小さく,その差は1%levelで有意であつた.
    2) 筋線維数は,孵卵開始後11日から15日まで,増加を示したが,17日以後はほとんど増加が認められなかつた.白色レグホーンと交雑種の間には,筋線維数に有意な差は認められなかつた.また,thiourea処理は,線維数の増加に抑制的な影響を与えないように思われる.
    3) 胚重量および筋重は,交雑種のほうが,わずかに大きな値を示したが,孵化時近くには,その差は認められなかつた.thiourea処理により,胚の成長は著しく抑制された.
feedback
Top