著者らはさきに('61)鶏精巣の間質内に精子が存在することを報告した.その後の研究によれば,その出現は鶏の系統と関係があるらしく考えられた.今回はその点を確かめるため,独立した15系統(3品種),184羽の材料について検査して,次のような結果をえた.
1. 間質内に精子を認めうる場合には,多くは単独でなく,数個ないし十数個の集団をなして存在する(+)が,尾部の構造を確認できるものは少数であつた.連続切片で精査しても,単独精子のみの場合もあつた(±).
2. 単独,集団いずれの場合も,多くは同一の切片中数ヵ所以上で認めることができた.
3. +,±を合せれば,15系統中4系統で認められ,品種的には殆んどが白色レグホーン(W.L.)で,ニューハンプシャー(N.H.)で1例が認められたにすぎない.
4. 出現例数は,+はW.L.で6例(3系統),N.H.で1例の計7例,±はW.L. 1系統で4例がみられた.出現率:+は3.80%,±は2.17%,両者を合せると5.98%であつたが,系統別にみると,+はE種鶏場B,C系でそれぞれ19.05,4.76%を示し,1種鶏場A系では14.29%,T牧場では6.66%であり,±は19,05%(E-B系)であつた.E種鶏場B系では+,±を合せると38.09%の高率を示した.
5. 日令的には,+,±いずれも殆んどが7カ月令にみられ,1力年令で2例,2~3年令鶏では皆無であつた.2~3年令鶏は少数であるから,出現と日令の関係は確言はできない.
6. 本現象と品種間には特殊な関係はないように考えられる.
7. 本現象の最も多くみられたE種鶏場の系統の授精率は80%以上であつた.従つて授精率を極端に低下させるものではないであろう.その他の生理的意義も不明である.
8. 間質内精子の成因について,2~3の可能性が考えられたが,やはり疑問は残された.
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