実験I-IIIの結果をSYKES
6)の記述と比較してみると次の様になる.
1) SYKES
6)は添加濃度0.04%では毒性があらわれ,0.01%および0.02%は産卵停止に関し同程度に有効,0.001%ではほとんど無効か,軟卵,奇形卵を生じたと述べている.
実験Iの結果もこれとよく似た傾向を示しているが,特に毒性は認められなかつた.
経口1回投与では,SYKES
6)による有効量は12.5mg/kgであるが,この2~4倍量投与してもそれほど有効ではなかつた.飼料に微量添加し連続的に4~5日間与えた方が,はるかに有効であつたといえよう.
2) 強制換羽に関しては,SYKES
6)は17.5月令の産卵鶏で産卵停止後換羽が急速に誘起されたと述べている.実験IIの結果でも,同様に換羽の誘起が観察できた.
ICI33,828投与による換羽は,従来用いられている絶食,照射光量の変動等の手段に比べて,はるかに簡便かつ安全である点実用性が高いといえよう.
3) SYKES
6)はICI33,828投与による血中カルシウムレベルの低下,PMS投与による卵巣,輸卵管重量の増加を観察した.実験IIIの結果からも,明らかにICI33,828は間脳-下垂体系に影響を及ぼし,産卵停止を来たすことを暗示している.
4) 投与が続くと(0.02%5日以上)軟便発生が観察された.SYKES
6)は尿流量が増加すると述べ,恐らくICI33,828は抗利尿ホルモン産生をも抑制するのであろうとしている.
5) 実験I-IIIの結果は,SYKES
6)の記述とほぼ一致したといえよう.なお,ICI33,828による産卵開始抑制に関しては現在検討中である.
実験遂行にあたり,多大の便宜を供与された,住友化学工業株式会社杉山忠太郎,阿部昭二両氏に厚く感謝の意を表します.
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