日本畜産学会報
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39 巻, 9 号
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  • VII. 放牧条件が牛の行動に及ぼす影響
    林 兼六, 太田 実, 二瓶 章
    1968 年 39 巻 9 号 p. 361-367
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1. 約10頭ずつの黒毛和種去勢牛を用い,野草地放牧と牧草地放牧との間,および全放牧と濃厚飼料給与放牧との間で,放牧行動を比較検討した.
    2. 野草地放牧における行動の季節的変化は,牧草地放牧のそれに比べて大きく,このことは食草•反芻•休息間のみならず,起立•横臥間の時間比についても認められた.
    3. 野草地放牧における秋季の食草時間が長く,そのため反芻•食草時間比(RT/GT)が,春季の0.83や夏季の0.89に比べて0.71と小さくなっている.これは草生状態が貧弱で不均一なために,食草時間の中に歩きながら草を物色する時間が多く含まれがちなためと思われる.したがって反芻•採食時間比によって草質を判定しようとする場合には,草を食いちぎる時間だけを真の食草時間とみなす必要がありそうで,このためには摂取行動を観測器機によって自動的に記録し,それを分解的に検討することが有用である.
    4. 反芻速度(100秒当り再咀嚼回数)は,野草地放牧が春•夏•秋にそれぞれ127.6,125.2,および117.4,牧草地放牧が113.0,109.8および104.6であった.これをみると野草地•牧草地放牧間にも,また季節的にも変化がありそうに思われるが,牛の個体差による影響もあるので断定はできず,今後の検討を要する.
    5. 歩行距離について野草地放牧は3.0~3.6km,牧草地放牧は2.6~3.0kmで,牧区面積が前者の5haに対して後者の0.4ha以下と著差のあった割には,両者の差が僅少であった.また歩行距離の季節的変化は,両放牧地ともあまりなかった.
    6. 牧草地における全放牧と濃厚飼料給与放牧との行動比較では,季節的変化の動きを含めて,全体的にみて類似の傾向を示した.
    7. 濃厚飼料給与放牧における食草時間の減少分は,濃厚飼料採食時間と稲わら採食時間の増加分とで補なわれ,採食時間全体としては全放牧とほとんど変らなかった.また反芻速度も両放牧間に差は認められなかった.
    8. 歩行距離は,全放牧の2.7~2.9kmに対して濃厚飼料給与放牧では1.6~2.0kmとかなり短かく,このことは後者の休息時間が長くなっていることと関連していよう.
  • 佐々木 康之
    1968 年 39 巻 9 号 p. 368-376
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    子牛を全乳のみで飼育すると混合唾液分泌能は未発達のままであるが,飼料摂取によって著しくそれを発達させることができることを著者はすでに観察した.本報告の実験目的は,飼育条件をかえることによって異なれる唾液分泌能発達過程を示す唾液腺の代謝能発達を,腺におけるエネルギー利用の基質的特異性を考慮しつつ検索することである.成牛の耳下腺スライスが酢酸をよく利用することは,すでに梅津•佐々木が報告している.
    ホルスタイン種雄子牛12頭を6頭ずつ2群に区分し,一群(MHG区)は全乳を制限給与したほかに乾草および濃厚飼料を自由摂取させ,他群(M区)は全乳のみで飼育し,1,4および13週令において両区2頭ずつを実験に供した.すなわち,左側耳下腺導管にカニューレを挿入して唾液分泌速度を計測してのち放血屠殺して耳下腺重量を知り,ついで,酢酸あるいはブドウ糖添加時における耳下腺スライスの酸素消費量を固有呼吸とともにワールブルグ検圧法(Krebs-Ringer phosphatebuffer, pH7.2,気相酸素,38°C,3時間振盪)により求め,別に同様条件下で,酢酸,プロピオン酸,酪酸およびブドウ糖の基質消費量を測定した.その結果,以下の知見が得られた.
    1. MHG子牛の耳下線は体重の増加および週令にともなって重量を増すが,M子牛耳下腺の体重に対する比率はむしろ低下する.
    2. MHG子牛の耳下腺唾液分泌速度が顕著に増加するが,M子牛のそれはまったく発達をみせない.
    3. 週令にともなう耳下腺スライスの固有呼吸発達はMHG子牛に高く,M子牛における発達はきわめて低い.酢酸添加による固有呼吸増加効果は,M子牛に比較してMHG子牛において良く発達し,ブドウ糖添加の効果は,両区とも各週令を通じてまったくみとめられない.
    4. 基質消費よりみた酢酸の利用は,M子牛におけるよりもMHG子牛において著しく発達し,また,ブドウ糖利用の発達は両区ともにみとめられない.
    5. 上記の結果から,唾液分泌能のいまだ発達していない子牛耳下腺スライスでは酢酸の利用がかなり低いが,唾液分泌量の増加とともにそれが急速に発達し,子牛を全乳のみで飼育して唾液分泌の発達を抑制すると,酢酸の利用もほとんど促進されないことが結論づけられる.
  • 田中 克英
    1968 年 39 巻 9 号 p. 377-385
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    白色レグホーン種の産卵鶏で,産卵数が3個以上のクラッチを示し,クラッチとクラッチとの間の休産日数が1日の鶏について,クラッチ最終卵(Ct)の排卵から第2卵(C2)排卵後8時間までの期間のいろいろな時期における下垂体前葉LH力価を卵巣アスコルビン酸減少法によって測定した.また,休産鶏を午前10時から翌朝8時まで2時間ごとに殺して下垂体前葉を採取し,そのLH力価を側定した.さらに,産卵鶏の卵管膨大部に糸を通した場合,および卵管峡部を結紮した場合の下垂体前葉LH力価を測定した.
    産卵周期中の鶏の下垂体前葉LH力価は排卵から次の排卵までの期間に変動を示し,その変動には2つのピークが認められる.すなわち,クラッチ第1卵(C1)排卵からC2排卵までの期間においては,第1ピークはC1排卵後6時間(C2排卵前20時間)に,第2ピークはC1排卵後18時間(C2排卵前8時間)に認められる.Ct排卵からC1排卵までの期間においては,第1ピークはCt排卵後2時間(C1排卵前38日時間)に,第2ピークはCt排卵後18時間(C1排卵前22時間)に認められる.Ct排卵後の第2ピークはC1排卵後の第2ピークと異なり直ちに減少を示さない.排卵から次の排卵までの期間に認められる2つのピークのうち,第2ピークのLH力価の減少が排卵と特に密接な関係をもつものと推察される.
    休産鶏の下垂体前葉LH力価は24時間を通じて顕著な変動を示さない.
    卵管膨大部に糸を通した鶏,および卵管峡部を結紮した鶏の下垂体前葉LH力価は,対照鶏における力価とくらべ,著しい差異を示さない.それ故,産卵周期中の鶏に認められる下垂体前葉LH力価の排卵後の第1ピークをひきおこす要因が卵管上部の刺激であるという可能性はきわめて低いものと推察される.
  • 大橋 淳, 五島 孝
    1968 年 39 巻 9 号 p. 386-388
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    泌乳維持機能と反芻現象の関連性を検索する第一段階として,反芻の種々相を検討するため,記録装置を使用し二三の飼料について反芻現象を記録した.
    1. 本試験に使用した記録装置は電源電圧80V A. C.以上でほぼ正確に作動し,伝達部→記録ペンにいたる機能は10-8Vの電流で安全に作動した.伝達部の型式はI型が衝撃に強く,使用に便である.
    2. 反芻周期は1日平均15.8回であり,給与飼料の種類による周期発現数に差はないが,反芻時間,数,再咀嚼時間は飼料原料としての植物の種類や飼料状態により影響を受ける.
    3. 反芻中の再咀嚼数は採食時の咀嚼数より少ない傾向があり,咀嚼が丁寧である.咀嚼,再咀嚼ともに飼料原料としての植物の種類および飼料状態により影響される.
  • 三秋 尚
    1968 年 39 巻 9 号 p. 389-391
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ソルガムサイレージの化学的成分と消化率におよぼす窒素施用水準の効果を明らかにするため実験を行なった.aあたり0,0.6,1kgの3窒素施用水準で栽培された雑種ソルゴを出穂期に収穫してサイレージを調製した.緬羊を用いて全糞採集法により消化試験を実施した.窒素の増施によって粗蛋白質と硝酸塩含量が増加した.粗蛋白質消化率とDCP含量もまた増加した.しかしTDN含量は窒素増施によりほとんど変化しなかった.
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