日本畜産学会報
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41 巻, 5 号
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  • II. 飼料中蛋白質量による諸臓器中のGOT活性の変化について
    池田 光一郎, 高戸 聰子, 杉橋 孝夫
    1970 年 41 巻 5 号 p. 233-237
    発行日: 1970/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ブロイラー専用種を3週令まで,全卵粉を蛋白質源とした粗蛋白質量20%の半精製飼料で飼育したのち,粗蛋白質量40%の半精製飼料に切りかえ,諸臓器中のGOT活性がどのような影響を受けるかを調べた.GOT活性の測定はREITMAN-FRANKEL法によった,
    1) 肝臓中GOT活性は,飼料中蛋白質量を20%から40%に増加することにより直ちに増加しはじめ,飼料切りかえ8日後には,切りかえ時の1.7倍にも達していた.
    2) 心筋,膵臓および腺胃では,飼料中蛋白質量を増加しても,本実験の範囲内では影響を受けず一定であった.一方腎臓では,飼料切りかえ12日後まではほとんど変化がみられなかったが,15日目にはやや増加の傾向がみられた.
    3) GOT活性は,肝臓細胞の遠心分離上清画分およびミトコンドリア中に認められ,飼料中蛋白質量を増加すると,上清中のGOT活性は増加したが,ミトコンドリア中のGOT活性は,影響を受けず一定であった.
  • 伊藤 宏, 伊藤 茂雄, 松本 達郎
    1970 年 41 巻 5 号 p. 238-241
    発行日: 1970/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳子マウスにおける毎乳カルシウムの吸収および蓄積を明らかにするため,母体から乳汁を経て乳子に移動した45Caの胃,腸およびその他の部位における分布量の経時的変化を測定した.17匹の泌乳マウスとそれらの乳子85匹を用いた.生後12日令に9 A. M.から3時間乳子を母マウスから離し,11 A. M.に母体腹腔内に45Caを注射投与し,正午から1時間にわたって.同腹の5匹の乳子に吸乳させた.哺乳期終了時とその30分,1,2,3時間後に乳子を1匹ずつ屠殺した.
    (1) 哺乳期終了時の乳子(85匹)の平均体重は6.0g,胃と腸を除いた屠体のカルシウム含量は平均35mgであった.胃重量は哺乳直後に最も高く,3時間に次第に減少した.一方腸重量はほとんど変化せず一定であった.
    (2) 胃の45Ca含量は,胃重量の減少と同じ傾向で5.3%から1.5%までほぼ直線的に減少した.腸の45Caは全期間を通して低くかつ一定の値を示した.これに対し45Ca蓄積量は1時間の哺乳期にすでに1.6%を示し,その後の3時間に5.4%まで直線的に増加した.これらの結果から,母乳中のカルシウムは乳子によって短時間内にきわめて速やかにかつ活発に吸収され,効果的に蓄積される事が明らかにされた.
    (3) 母体に投与した45Caの約36%が1時間の哺乳によって5匹の乳子に移動した.この量は母体大腿骨の取り込み量と比べて非常に高いものであった.
  • III. 主要ブリーター集団内の近交度と血縁度
    建部 晃, 野沢 謙
    1970 年 41 巻 5 号 p. 242-249
    発行日: 1970/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    わが国乳牛育種の根幹となっている主要ブリーダー(民間ブリーダーとして町村•小岩井•宇都宮の各牧場,公共ブリーダーとして農林省と静岡県)に保有されている乳牛集団が,その内部で1950年から1960年にかけて近交係数と血縁係数がいかなる状態にあるか,また主要ブリーダー相互間にはいかなる関係があるかをその関連事項と共に分析した.分析は登録薄により輸入牛まで祖先追跡を行ない,2-ライン系図法によった.その結果,次のことが判明した.
    1. 民間ブリーダーも公共ブリーダーも単一ブリーダー内の平均血縁係数は,著しく高い値を示しているが,民間ブリーターでは顕著な近交回避を行なって実際の近交係数を低く抑えているのに対し,農林省の福島•新冠両種畜牧場の乳牛集団では血縁に関してはほぼ任意交配に近い近交度を示している.
    2. 主要ブリーダー間の血縁係数は,1950年から1960年にかけて減少の傾向がみられた.このことは,各ブリーダーとも育種をそれぞれ独立的に行なうようになってきていることを示している.特に宇都宮牧場および静岡県の両ブリーダーにこの傾向が顕著である.
    3. 各ブリーダーの集団に大きな遺伝的寄与をなした個体は,輸入牛又は輸入種雄牛の子供が大半を占め,それらが全国の乳牛集団の改良繁殖の中心となっていることが示された.
  • III. ラットにおける血清エステラーゼ電気泳動像の系統的差異
    萬田 正治, 西田 周作
    1970 年 41 巻 5 号 p. 250-253
    発行日: 1970/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    殿粉ゲル電気泳動法によって分離検出されるマウスの血清エステラーゼ電気泳動像の系統的差異を検討するため,Wistar, DonryuおよびUSCの3系統を用いて分析を行ない,次の結果を得た.
    1) ラットの血清エステラーゼ電気泳動像は陽極端に14本のzoneが検出されるが,その中でEs-3, Es-4,Es-5およびEs-9 zoneはいずれの個体にも認められるのに対して,Es-2およびEs-6 zoneはすべての個体において検出されなかった.
    2) 易動度のもっともはやいEs-1 zoneについてはWistarとDonryuでは認められるのに対して,USCではいずれの個体においても検出されなかった.
    3) 原点に近い域に検出される血清cholinesteraseisozyme群(Es-13, Es-14およびEs-15 zone)は系統および個体によって著しく変異していることが認められた.これらの発現の仕方は,zoneの組み合わせによって6種のエステラーゼ型が考えられるが,今回の実験ではそのうちの3種の型が認められた.
    4) Es-13 zoneのみを持つChE-I typeにおいてはその活性濃度に顕著な系統差および性差が認められた.雌においてWistarでは他の2系統に比べて高く(15.4%),USCにおいてはもっとも低い傾向を示した(10.6%).
  • 田中 桂一
    1970 年 41 巻 5 号 p. 254-261
    発行日: 1970/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1) 泌乳中のホルスタイン種乳牛4頭を供試し,基礎飼料および基礎飼料に梛子油,大豆油,鱈油をそれぞれ添加したものを4×4ラテン方格法に基づいて実験を行なった.
    2) 各処理において,泌乳量,乳脂肪,SNF,乳脂肪の脂肪酸組成,第1胃内溶液のVFAモル比さらに血漿中の脂質をcholesterol ester, triglyceridesおよびphospholipidの各区分に分画し,それぞれの脂肪酸組成を測定した.
    3) 乳脂率および乳脂肪生産量は梛子油添加によって増加し,鱈油添加によって減少した.
    4) 乳脂肪の脂肪酸組成は梛子油添加によってC12とC14は増加し,C1= 18は減少した.大豆油添加によってC4からC16までの脂肪酸は減少し,C18とC1= 18は増加した.鱈油添加によってC4からC14までの脂肪酸およびC18は減少し,C16, C1= 16, C1= 18, C2= 18およびC3= 18より炭素数の多い不飽和脂肪酸は増加した.
    5) 第1胃内溶液中の酢酸:プロピオン酸比は鱈油添加により減少した.
    6) 血漿中のtriglycerides区分の脂肪酸組成は梛子油添加によってC12, C14およびC16は増加し,C1= 18とC2= 18は減少した.大豆油添加によってC18とC1= 18は増加し,C2= 18は減少した.鱈油添加によってC16, C1= 16, C1= 18およびC3= 18より炭素数の多い不飽和脂肪酸は増加し,C18は減少した.
  • 五十嵐 康雄, 斎藤 善一
    1970 年 41 巻 5 号 p. 262-269
    発行日: 1970/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    前報において,カゼイン中より,室温で白濁を示すTemperature sensitive fraction (TSF)を調製し,その性質を報告したが,本成分より白濁に関与すると思われる蛋白質,すなわち,Temperature-sensitive (TS-) caseinを分離し,その性質を調べるため本実験を行なった.
    酸カゼインより,1°CにおけるTEAEカラムクロマトグラフィーによって得られたTSFをコロジオンバックを用いて濃縮し,セファデックスG-100カラム(2.8×47.5cm)によるゲルロ過を行なった.TSFは4つの成分に分離され,TS-caseinは分子量32,000の位置に溶出され,室温で白濁を示したが,他の成分はほとんど白濁しなかった.尿素を含むでんぷんゲル電気泳動では,TS-caseinは泳動の遅い主成分(相対移動度0.22)の外に,これよりやや速い成分が認められた.アミノ酸組成は,全カゼインに比し,プロリンとロイシンの含量が多く(全検出アミノ酸の15.0%と14.06%),これらのアミノ酸の疎水基がTS-caseinミセル形成に関与しているものと思われた.紫外線吸収スペクトルより算出したチロシンとトリプトファンの分子比は1.98であった.アミノ酸組成より分子量を算出すると31,000であった.
    TS-casein溶液を分光光度計に設備されたセル恒温装置により,毎分1.5°Cまたは3.2°Cの速さで温度を上げるとほぼ同じ濁度-温度曲線を示したが,毎分0.78°Cの時は濁度がやや高かった.温度を段階的に上げると直ちに(約40秒後)濁度は急上昇した.TS-casein溶液(pH7.0)にNaCl, MgCl2,クエン酸ソーダ,CaCl2, 2-メルカプトエタノールを加えても可逆的に濁りを示す性質に著しい変化はなかったが,ホルムアルデヒドを0.13M加えると不可逆となった.凍結にとよる影響は少なく,-17°Cで19日間保存した場合,最高濁度はやや減少した程度であった.
    以上のことより,TS-caseinミセルの形成は主要カゼインにみられるようにCaなどの電解質によるものではなく,温度を上昇させることのみにより,すみやかにミセルを形成し得る特質を持っていることが明らかとなった.
  • 管野 長右ェ門, 山内 邦男, 津郷 友吉
    1970 年 41 巻 5 号 p. 270-275
    発行日: 1970/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛乳中におけるα-およびγ-トコフェロールの分布について検討した.クリームの脂質を脂肪球皮膜脂質と脂肪球内部脂質(バターオイル)に分けてトコフェロールを定量すると,α-トコフェロルは脂質lg中前者では平均10.4μg,後者では平均28.6μgで明らかに後者の方が高かった.γ-トコフェロールは皮膜脂質で平均1.4μg,バターオイルでは平均1.7μgとなり,後者の方がやや高いが大差はなかった.従って全トコフェロール中に占めるγ-トコフェロールの割合は皮膜脂質の方が高かった.洗浄したクリームから調製した皮膜脂質は,洗浄しないクリームより調製した皮膜脂質よりも,明らかにトコフェロル含量が高かった.脱脂乳中に残存する脂質中にもα-トコフェロールが検出されたが,その脂質1g当りの含量はクリーム脂質のそれの約半分であった.
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