一群の家畜について,齢の進行に伴なう体重または体尺測定値の平均の変化を調査し生長曲線を推定する場合に遭遇する困難の1つは,通常の畜群では生長の過程で多かれ少なかれ淘汰が実施され,生長の劣ったものが淘汰の対象になることが多いため,齢が進むほど平均値は真の平均値より過大になることである.
著者らはまず,各測定齢間の平均生長量を対比較法で推定し,とれを基礎にして各測定齢の平均値を調整する方法が,上記のような淘汰による平均値の偏りを除く上で効果的でありうる条件を理論的に検討した.その結果,偏りの除去効率は,平均値を問題にしている齢の測定値の淘汰が行なわれた齢の測定値に対する回帰の値に依存することがわかった.回帰が1ならば,その淘汰が問題の平均値にもたらす偏りの完全な除去が期待される.
生長を観察する多くの家畜,またその場合に測定する多くの形質においては,各齢の測定値のそれ以前の各齢の測定値に対する回帰が,多くの場合1の前後に来ると考えられることから,生長に関しては,この方法はかなり効率的に偏りを除去すると予想される.実例として,マウスの体重の場合を検討した.
生時から70日齢まで15回一定の齢で測定した雄マウス群の体重のデータを用い,各齢につき3種の平均値をとって比較した.すなわち,(1) 各齢での全個体の平均値,(2) 紙上で何回かの摸擬淘汰を行ない,それぞれの齢での残存個体のみの単純平均値,(3) 模擬淘汰の条件下で,対比較法による各齢の"調整平均値".(2)は,齢が進むにつれ(1)からかなり上に偏ったが,(3)は(1)に対し,常に,少なくも実際的見地からは満足すべき程度の接近をみせた.
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