日本畜産学会報
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42 巻, 10 号
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  • 中江 利孝
    1971 年 42 巻 10 号 p. 481-492
    発行日: 1971/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛乳の品質は一般に乳質という言葉で表現され,主として原料生乳を対象にその分野の研究が進められている.DAVIS34)によれば,乳質には化学的品質と細菌学的品質の2つの意味があり,さらに厳密にいえば,物理的品質もこれに包含される.原料生乳の品質は広く牛乳•乳製品の品質を左右するので,高品質の最終乳製品を製造するためには衛生的にも栄養的にも良質の原料生乳を生産することが前提となる.一方,最近特に大きな社会問題を提起している農薬,抗生物質,異種食品成分などによる牛乳汚染は,新しい異常乳質としてその実態調査や防除に関する研究が重要視されている.ここでは基本的な原料生乳の品質と新しい異常乳質に関する最近の問題を中心に,その化学的および微生物学的研究を論じ,さらに乳質の検査法に関する研究の進展を概説することにする.なお,乳質とその改善についてはすでに著者155)が解説しているので,乳質の基礎的事項に関してはそれを参照されたい.
  • I. 乳牛の体感温度
    三村 耕, 山本 禎紀, 伊藤 敏男, 住田 正彦, 新谷 勝弘, 藤井 宏融
    1971 年 42 巻 10 号 p. 493-500
    発行日: 1971/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    家畜の生産環境を,その温熱感覚を基にして一元的に表現する示標(体感温度)をつくる目的で,1966~1969の3ヵ年にわたり実験した.広島大学付属農場放し飼い牛舎に飼育中のホルスタイン種•同種系牛より,第1年度3,第2年度5,第3年度1を選び,1日2回(12~13,16~17時)合計94日間直腸温•呼吸数•心拍数を,同時にDBT•WBT•黒球温度•風速を測定して相互の関係を検討した.
    1. 直腸温•呼吸数は一定の季節的変化を示したが,WBTと呼吸数との相関係数は,DBTと直腸温との相関係数より有意に高かった.また直腸温と呼吸数との関係をFig. 2により検討した結果も,家畜の温熱感覚を表現する指標information indexとしては,直腸温より呼吸数がより適切であると認められた.
    2. DBT,WBTの変化に対応する呼吸数の変化は,高温域においてはその他の温域におけるものと明に異なるが,相互の相関関係を検討した結果,r(WBT:呼吸数)はr(DBT:呼吸数)より高く,呼吸数/DBT:呼吸数/WBT=1:2に近い関係にあると推測され,すなわちWBTはDBTの2倍に近い重味をもって呼吸数と関連していると認められた.
    3. よってDBTとWBTに重味づけを行なった評価温度4式について検討した結果,DBT×0.35+WBT×0.65の示標は,呼吸数とDBT 4.9~34.3°Cの温域にわたってr=0.852の高い相関を示した.ただしDBT×0.40+WBT×0.60の示標との間に有意の差は認められなかった.
  • 新出 陽三
    1971 年 42 巻 10 号 p. 501-508
    発行日: 1971/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳牛において搾乳刺激および乳汁の排除が,分娩前後の乳腺機能にいかなる影響をおよぼすかについて調べた.供試牛はホルスタイン種5頭で,分娩予定の7日前から左後乳区(実験乳区)を1日1回手搾りした.これに対し,右後乳区(対照乳区)を含む他の3乳区は分娩するまで搾乳しなかった.分娩後は4乳区とも乳区別ミルカーで1日2回の搾乳を行なった.
    結果を要約すると以下の通りである.
    1. 分娩前搾乳によって分娩後搾乳乳区(対照乳区)の乳成分の変化にはなんら影響が認められなかった.
    2. 分娩前搾乳乳区(実験乳区)のカゼイン率および乳清蛋白質率は次第に搾乳開始直後の高値より減少し,これに対して乳糖率は次第に増加した.このような変化は分娩後搾乳乳区においても認められた.
    3. 分娩前搾乳日数の多い乳区の乳脂肪率は,分娩前後を通して比較的一定であった.これに対して分娩前搾乳日数の少ない乳区および分娩後搾乳乳区にでは,分娩直後急激に増加した.
    4. 分娩前搾乳日数の多い乳区の乳量は,分娩2~3日前に急激に増加した.これに対し,分娩前搾乳日数の少ない乳区では,分娩日または分娩後に急激に増加した.
    5. 分娩後7日以内においては,分娩前搾乳乳区の乳量が,分娩後搾乳乳区の乳量より多かった.しかも,両乳区間の乳量の差は,分娩前搾乳日数の多い乳牛の方が,少ない乳牛より大きかった.
    6. 分娩前の初乳の排除は,乳区に直接作用し,乳腺を増殖させ,乳量の増加を促がすようである.
  • V. マウス血清Aliesterase, A4 zone (Es-10)の生理的変動
    萬田 正治, 西田 周作
    1971 年 42 巻 10 号 p. 509-512
    発行日: 1971/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    マウス血清Aliesteraseの1タイプであるA4 zone(Es-10)活性の日令的変化ならびに妊娠,泌乳,去勢などの生理的変動について検討した.
    1. 離乳期の21日令では検出されなかったA4 zoneは31日令では雌雄ともに検出された.その後日令がすすむとともに,A4 zone活性は雄マウスでは上昇するのに対して雌ではしだいに低下し,51日令では雌雄間に顕著な差異が認められた.
    2. 妊娠期に入るとA4 zone活性はしだいに低下し,妊娠後期18日目には正常値の約30%にまで低下した.
    3. 分娩後,A4 zone活性はしだいに上昇し,泌乳後期18日目には正常値の約80%にまで回復した.
    4. 去勢によって,雌マウスのA4 zone活性はわずかに上昇するが,雄マウスでは著しく低下した.
  • VI. 血液型抗原およびそれら抗体の免疫化学的性状について
    赤本 昭治, 渡辺 誠喜, 鈴木 正三
    1971 年 42 巻 10 号 p. 513-518
    発行日: 1971/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    Sh1, A, Dの各抗原およびこれに対応する同種免疫によって産生された抗Sh1, A, Dの各抗体の免疫化学的性状を明らかにするため,各種の方法を用いて試験した結果を要約すると次のとおりである.
    1) 血球基質分屑による吸収試験,耐熱性試験およびAdjuvant免疫試験の結果Sh1, A, Dの各抗原の型的物質は,血球基質のたんぱく質様分屑に存在する.
    2) 緬羊同種免疫による抗-Sh1, A, Dの各抗体を熱処理した結果,これら3者は70°Cで30分加熱することにより,まったく不活化された.
    3) 2-Mercaptoethanol処理によってこれら3つの抗体活性は失われなかった.
    4) Sephadex gel〓過法によるたんぱく質分画において,IgGのピークに一致して抗体活性が現われ,また解離抗体について免疫電気泳動法により検討した結果,それぞれγ-globulin域に1本の沈降線が認められた.
    5) 以上の結果から抗-Sh1, A, D血清中に含まれる抗体はIgGであることが証明された.
  • II. ブロイラー脂質の脂肪酸ならびにトリグリセリド組成
    大武 由之, 渡辺 睦
    1971 年 42 巻 10 号 p. 519-525
    発行日: 1971/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    鶏肉脂質の性質,種属的特性をさらに明らかにするために,ブロイラー脂質について,その脂肪酸ならびにトリグリセリド構造,組成について研究した.
    市販のブロイラーの胸筋,腿肉,皮および腹腔脂肪組織から全脂質を抽出し,これをリン脂質,中性脂質および遊離脂肪酸の各区分に分別して,それぞれの脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーによって測定した.ついでトリグリセリド中の脂肪酸分布を,膵臓リパーゼによる加水分解法でしらべ,また,1,3-random-2-random分布理論にもとづいてトリグリセリド組成を求めた.
    胸筋と腿肉,あるいは皮と腹腔脂肪とでは,おなじ脂質区分の脂肪酸組成にほとんど差異が認められなかったが,胸筋や腿肉の脂質は皮や腹腔脂肪よりC18:2,C18:3,C20:4などの不飽和酸が多く,C18:0やC18:1が少なかった.概して,ブロイラーの脂質は不飽和度が高く,中性脂質区分でもC18:2が多く含まれていた.
    ブロイラーのトリグリセリドでは,C18:2や不飽和脂肪酸はグリセリドの2の位置に多く存在し,他方C16:0.C16:1,C18:0や飽和脂肪酸はグリセリドの1と3の位置に多く存在していた.1と3の位置における脂肪酸の組成では,組織による差異は認められなかったが,2の位置の脂肪酸組成では,胸筋や腿肉のと皮や腹部脂肪のとで若干ちがいがあった.したがって,ブロイラーのトリグリセリドの脂肪酸組成で,組織による差異は,おもに2の位置に存在する脂肪酸の組成のちがいによるものと考えられた.
    調査したブロイラー脂質のトリグリセリド組成は,大略SSS 5%,SSU 12.5%,SUS 14%,SUU 36.5%,USU 8%,UUU 24%であって,ジ不飽和グリセリドやトリ不飽和グリセリドの量が比較的多かった.なお,1-パルミト-2,3-ジオレイン,1-パルミト-2-リノレオ-3-オレイン,1,3-ジパルミト-2-オレイン,1-パルミト-2-オレオ-3-リノレイン,1,2-ジパルミト-3-オレイン,トリオレイン,1,2-ジオレオ-3-リノレイン,1,3-ジオレオ-2-リノレイン,1-オレオ-2,3-ジリノレイン,1-パルミト-2,3-ジリノレイン.1,3-ジパルミト-2-リノレインなどが,ブロイラ-脂質を構成するおもなトリグリセリドであると見られた.
  • 水野 利雄, 氷上 雄三
    1971 年 42 巻 10 号 p. 526-532
    発行日: 1971/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    鶏の品種間における骨格筋発達の差異を比較する目的で,卵用種として白色レグホーン,肉用種として白色コーニッシユを用い,0,2,8週令の雛から分離した浅胸筋,深胸筋,縫工筋および腓腹筋について,筋線維の直径および数,筋当りのデオキシリボ核酸量(DNA)ならびにDNA当りの窒素量(N/DNA)を測定した.結果は次の通りである.
    1) 初生雛の浅胸筋,縫工筋および腓腹筋の筋線維直径には品種間の差異は認められなかったが,深胸筋の筋線維直径は白色レグホーンの方が白色コーニッシュより大であった(P<0.01).2および8週令の雛では,縫工筋の筋線維直径に5%水準で有意差があったが,他の筋には品種間の差異は認められなかった.
    筋線維の数は各筋とも白色コーニッシュの方が白色レグホーンよりも大であり,また各筋ともふ化後における筋線維数の増加は認められなかった.
    2) 初生雛では各筋とも筋当りのDNA量には品種間の差異はなかったが,ふ化後におけるDNA量の増加は白色コーニッシュの方が白色レグホーンよりも速かなため,2および8週令では両品種の筋当りのDNA量に著しい差異がみられた.
    初生雛および2週令雛では,各筋ともN/DNA量に品種間の差はなかった.8週令では縫工筋および腓腹筋に5%水準で品種間の差が認められ,両筋とも白色レグホーンが白色コーニッシュよりも高いN/DNA.を示した.
    3) 各筋とも筋重量と筋線維数および筋重量と筋当りのDNA量の間に,有意な相関がみられたが,筋重量と筋線維直径および筋重量とN/DNA量との間の相関は有意ではなかった.この結果から,品種間における筋重量の差異は,主として筋線維数およびDNA含量の差異に起因するものと推測した.
  • 吉田 繁
    1971 年 42 巻 10 号 p. 533-534
    発行日: 1971/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
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