鶏肉脂質の性質,種属的特性をさらに明らかにするために,ブロイラー脂質について,その脂肪酸ならびにトリグリセリド構造,組成について研究した.
市販のブロイラーの胸筋,腿肉,皮および腹腔脂肪組織から全脂質を抽出し,これをリン脂質,中性脂質および遊離脂肪酸の各区分に分別して,それぞれの脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーによって測定した.ついでトリグリセリド中の脂肪酸分布を,膵臓リパーゼによる加水分解法でしらべ,また,1,3-random-2-random分布理論にもとづいてトリグリセリド組成を求めた.
胸筋と腿肉,あるいは皮と腹腔脂肪とでは,おなじ脂質区分の脂肪酸組成にほとんど差異が認められなかったが,胸筋や腿肉の脂質は皮や腹腔脂肪よりC
18:2,C
18:3,C
20:4などの不飽和酸が多く,C
18:0やC
18:1が少なかった.概して,ブロイラーの脂質は不飽和度が高く,中性脂質区分でもC
18:2が多く含まれていた.
ブロイラーのトリグリセリドでは,C
18:2や不飽和脂肪酸はグリセリドの2の位置に多く存在し,他方C
16:0.C
16:1,C
18:0や飽和脂肪酸はグリセリドの1と3の位置に多く存在していた.1と3の位置における脂肪酸の組成では,組織による差異は認められなかったが,2の位置の脂肪酸組成では,胸筋や腿肉のと皮や腹部脂肪のとで若干ちがいがあった.したがって,ブロイラーのトリグリセリドの脂肪酸組成で,組織による差異は,おもに2の位置に存在する脂肪酸の組成のちがいによるものと考えられた.
調査したブロイラー脂質のトリグリセリド組成は,大略SSS 5%,SSU 12.5%,SUS 14%,SUU 36.5%,USU 8%,UUU 24%であって,ジ不飽和グリセリドやトリ不飽和グリセリドの量が比較的多かった.なお,1-パルミト-2,3-ジオレイン,1-パルミト-2-リノレオ-3-オレイン,1,3-ジパルミト-2-オレイン,1-パルミト-2-オレオ-3-リノレイン,1,2-ジパルミト-3-オレイン,トリオレイン,1,2-ジオレオ-3-リノレイン,1,3-ジオレオ-2-リノレイン,1-オレオ-2,3-ジリノレイン,1-パルミト-2,3-ジリノレイン.1,3-ジパルミト-2-リノレインなどが,ブロイラ-脂質を構成するおもなトリグリセリドであると見られた.
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