玄米給与が豚脂の性質におよぼす影響を知る目的で試験を行なった.玄米の配合割合を変えた飼料で,ランドレース種の豚を肥育し,供試脂肪は腎臓脂肪組織から調製し,その脂肪酸組成はガスクロマトグラフィーによって測定した.ついで膵臓リパーゼ分解法によって豚脂トリグリセリド中の脂肪酸分布をしらべ,また組成トリグリセリドは,VANDER WALの1,3-random-2-random分布理論に基づいて求めた.
飼養試験ならびに屠殺解体の結果からは,試験区間で差異が認められなかったので,玄米はとうもろこし,大麦とほぼ同等の飼料価値を有すると見られた.
飼料の脂質は,玄米配合量の増すにつれて,ミリスチン酸,パルミトレイン酸,ステアリン酸,オレイン酸およびリノレン酸が増し,リノール酸や不飽和酸が減少する傾向があった.
飼料の玄米配合量が増すにつれて,豚の腎臓脂肪のリノール酸は減少し,パルミトレイン酸やリノレン酸含量は増加していた.
豚脂トリグリセリドの膵臓リパーゼ分解によって生成した2-モノグリセリドの脂肪酸組成では,飼料のちがいによる差異は認められなかった.しかし豚脂トリグリセリドの1と3の位置における脂肪酸組成では,飼料中の玄米配合量の増加で,リノール酸が減じて,リノレン酸やオレイン酸は増加する傾向が認められた.したがって,飼料が豚脂中の脂肪酸分布におよぼす影響は,トリグリセリドの2の位置におけるよりも,その1と3の位置でのアシル基において,より顕著にあらわれることがわかった.
試験した豚の腎臓脂肪のトリグリセリド組成は,SSS12.93%, SSU 38.79%, SUS 2.74%, SUU 8.51%,USU 30.88%, UUU 12.93%であった.かかるトリグリセリドの組成では,試験区の間で有意差は認められなかったが,玄米の配合量の多い試験区の豚の脂肪では,1-ステアロ-2-パルミト-3-オレインや1-ステアロ-2-ミリスト-3-オレインが多く,また1,2-ジパルミト-3-リノレインや2-パルミト-1,3-ジリノレインは,飼料中の玄米配合量の増すにつれて減少することがわかった.
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