日本畜産学会報
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42 巻, 11 号
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  • 吉田 重治
    1971 年 42 巻 11 号 p. 537-543
    発行日: 1971/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    本来草地生態論は生態学領域に属するが,自然の生態系の生産体制と草地生産の実態とがよく一致するところから,草地を人為的生態系とみなせば,飼草群集や家畜その他の生物を含めた飼草生産体制の全貌を明らかになしうるから,草地生態論を草地研究の方法論として草地学を体系化したが,飼草生産向上のためには草地生態論を積極的に活用しなければ草地学の堅実な発展はありえない.従来適切な方法論を欠いたために,用途を異にした草地の植生構造を明確になしえず,ひいては生産解析もあいまいとなり,ために全般的に研究が低迷し,今後急速には現状以上には畜産に貢献しえないであろう.草地研究の第一段階はもはや終了したのである.
    さらに草地学は境界学問といわれるが,草と家畜とは生産者と消費者の関係が正しい位置づけとその役割であり,それぞれの位置に,それぞれに主体制をもった学問が発展しなければならぬ.したがって一方的にではなく,双方から手を伸ばさぬかぎり畜産の健全な発展はありえない.畜産物の大量需要期に対応するために家畜群集を対象とした家畜生態論の急速な発展を期待する.
  • 石田 一夫, 楠原 征治, 山口 本治
    1971 年 42 巻 11 号 p. 544-550
    発行日: 1971/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ハクチョウ,アヒルおよびニワトリの尾腺の組織化学的態度について比較観察を行なったところ,およそ次のような成績が得られた.
    腺細胞は類脂肪を多量にもっているが,中性脂肪は少ない.cholesterolと脂肪酸はまったく認められなかった.PAS陽性多糖類はアヒルの基底細胞に少量みられるが,他のトリにはまったく存在しない,glycogenや酸性多糖類も観察されなかった,RNAおよびacrolein-SCHIFF陽性蛋白質は基底細胞に多い.SDHはいずれのトリにおいても活性が低い.Acid Phaseは腺細胞全般にわたって強い反応を示し,とくに,表層の細胞にいちじるしい.Alk Phaseは血管内皮に反応がみられたが,他の組織にはまったく出現しなかった.Etaseはハクチョウにおいてのみ線細胞に弱い反応がみられた.
    腺腔内の分泌物は脂蛋白質と考えられるが,ニワトリと他のトリのものでは染色性が異なっている.すなわち,ニワトリの分泌物がazan染色でazocarmineをとるのに対し,ハクチョウとアヒルではaniline blueをとった.また,PAS反応もニワトリでは強かった.分泌物には一般に酵素は認められないが,ニワトリでAcid Phaseが観察された.
  • 大武 由之, 中里 孝之, 真田 武, 新井 忠夫, 滑川 治朗
    1971 年 42 巻 11 号 p. 551-558
    発行日: 1971/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    玄米給与が豚脂の性質におよぼす影響を知る目的で試験を行なった.玄米の配合割合を変えた飼料で,ランドレース種の豚を肥育し,供試脂肪は腎臓脂肪組織から調製し,その脂肪酸組成はガスクロマトグラフィーによって測定した.ついで膵臓リパーゼ分解法によって豚脂トリグリセリド中の脂肪酸分布をしらべ,また組成トリグリセリドは,VANDER WALの1,3-random-2-random分布理論に基づいて求めた.
    飼養試験ならびに屠殺解体の結果からは,試験区間で差異が認められなかったので,玄米はとうもろこし,大麦とほぼ同等の飼料価値を有すると見られた.
    飼料の脂質は,玄米配合量の増すにつれて,ミリスチン酸,パルミトレイン酸,ステアリン酸,オレイン酸およびリノレン酸が増し,リノール酸や不飽和酸が減少する傾向があった.
    飼料の玄米配合量が増すにつれて,豚の腎臓脂肪のリノール酸は減少し,パルミトレイン酸やリノレン酸含量は増加していた.
    豚脂トリグリセリドの膵臓リパーゼ分解によって生成した2-モノグリセリドの脂肪酸組成では,飼料のちがいによる差異は認められなかった.しかし豚脂トリグリセリドの1と3の位置における脂肪酸組成では,飼料中の玄米配合量の増加で,リノール酸が減じて,リノレン酸やオレイン酸は増加する傾向が認められた.したがって,飼料が豚脂中の脂肪酸分布におよぼす影響は,トリグリセリドの2の位置におけるよりも,その1と3の位置でのアシル基において,より顕著にあらわれることがわかった.
    試験した豚の腎臓脂肪のトリグリセリド組成は,SSS12.93%, SSU 38.79%, SUS 2.74%, SUU 8.51%,USU 30.88%, UUU 12.93%であった.かかるトリグリセリドの組成では,試験区の間で有意差は認められなかったが,玄米の配合量の多い試験区の豚の脂肪では,1-ステアロ-2-パルミト-3-オレインや1-ステアロ-2-ミリスト-3-オレインが多く,また1,2-ジパルミト-3-リノレインや2-パルミト-1,3-ジリノレインは,飼料中の玄米配合量の増すにつれて減少することがわかった.
  • 小原 嘉昭, 渡辺 亨, 佐藤 良樹, 佐々木 康之, 津田 恒之
    1971 年 42 巻 11 号 p. 559-565
    発行日: 1971/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    反芻動物の分泌する唾液が第一胃内の恒常性を維持するのに重要な要因となっていることを実験的に確かめるべく,めん羊の一側耳下腺唾液除去を行ない次に述べる結果を得た.
    1) 飼料摂取量,飲水量が一時的に減少したが後回復した.
    2) 唾液流量が減少し,唾液のNa+/K+が逆転した.またHCO3-, Cl-も減少する傾向を示した.K+の上昇に伴ってHPO4--の著しい増加が見られた.
    3) 第一胃内のNa+/K+が対照時の値3-4から0.3-0.5に減少した.第一胃内のpHは低下しVFA濃度は増加したが,その後回復した.アンモニア濃度は変化なく乳酸濃度は増加する傾向を示した.
    4) 尿量の減少,尿中pHの一時的減少,Na排泄量の著しい減少,K+, Gl-排泄量の減少が観察された.
    5) 血液濃縮を呈してHt値が大きく増加し血清蛋白も一時的に増加した.血漿のNa+は,やや低下する傾向を示したが,K+, Cl-には変化がなかった.血液のHCO3-が減少してAcidosisを呈したが後回復した.
    6) これらの結果に基づいて唾液除去と第一胃発酵の関係および生理機能におよぼす影響について考察した.
  • III. チーズからのセラミドの分離
    藤島 利夫, 伊藤 精亮, 藤野 安彦
    1971 年 42 巻 11 号 p. 566-569
    発行日: 1971/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ブルーチーズ中に,セラミド(スフィンゴシン塩基のN-アシル誘導体)の存在することがみとめられた.ブルーチーズからケイ酸カラムクロマトグラフィーによりセラミドを単離し,これを加水分解して,その構成分の組成をガスクロマトグラフィーによって調べた.構成脂肪酸として15が見出され,そのうちC23:0, C22:0, C24:0,C16:0などが主なものであった.構成スフィンゴシン塩基としては7つ見出され,そのうち特に多かったのはC16-スフィンゴシンとC18-スフィンゴシンであ〓た.
  • 浜田 寛, 小石川 常吉, 石井 徳蔵, 入江 良三郎, 太田 英一
    1971 年 42 巻 11 号 p. 570-576
    発行日: 1971/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    圧縮空気を利用する生乳の平坦地輸送法は1961年にオランダで開発された方法であるが,技術上の基礎知見が不足している.そこで,送乳施設の設計に役立てるため,パイプ長•圧送空気圧力•送乳所要時間の関係を実験的に求めるとともにパイプ内径を含めてその理論解析を行なった.
    実験は内径0.029m,水平直線状に敷設した長さ120-960mのポリエチレンパイプ,生乳の代わりに水,パイプ内の水を圧送するためのピストンとして薄手のポリエチレン袋で包んだ円柱状のウレタンスポンジおよびエヤートランスホーマーで0.5-3kg/cm2の種々な圧力に調整した空気を使って行ない,圧送開始時からパィプ内全容の水が吐出されるまでの時間を測定した.
    使用したピストンは長さがごく短い(6-7cm)ので,その摩擦抵抗は小さく,したがって,それを無視することができる.また,上述の送水法におけるパイプ内の水はたえず一定圧力の空気により圧送されるので,パイプ内を加速されながら流れることになる.したがって,ピストンがパイプライン上の任意の位置へ来た時には,が成立する.ただし,γ:水の比重量[kg/m3], a:パイプ断面積[m2], L:パイプ長[m], x:パイプの入口からピストンまでの距離[m], g:重力加速度[m/sec2], v:流速[m/sec], t:時間[sec], p:空気圧力[kg/m2],λ:管摩擦係数,D:パィプ内径[m].
    そこで,この式から近似計算法により次の理論式を誘導した.誘噂した式は,であり,λ:0.030と仮定した場合にこの式から算出されるtの値は実測値とよく一致した.
    平坦地における生乳の輸送装置は,上式中のλに0.035を代入して計算した結果から設計できる.
  • III. ウシ,ヒツジ,ラットにおける血漿中副腎皮質ホルモン濃度に及ぼす季節,年令,性の影響について
    佐々木 義之, 道後 泰治, 川島 良治, 上坂 章次
    1971 年 42 巻 11 号 p. 577-581
    発行日: 1971/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    本実験は季節,年令,性の血漿中副腎皮質ホルモン(以下11-OHCSと略す)濃度に及ぼす影響について調べ,とくにこの点において動物の種による差異があるかどうかを検討した.実験に用いた動物はウシ,ヒツジ,ラットであり,各々雌雄およびいろいろの年令のものを含んでいた.比較を行なった季節は初夏と晩冬であった.
    1) ウシおよびヒツジの血漿中11-OHCS濃度は,いずれの場合もラットにおけるその濃度より低かった.
    2) ウシおよびラットにおける血漿中11-OHCS濃度は雄よりも雌の方が高かったが,ヒツジにおいてはその差は明らかでなかった.
    3) 血漿中11-OHCS濃度の季節差はウシでは,7~12ヵ月令のものにおいてのみ認められたが,他の年令では,これは認められなかった.ヒツジの場合は,いずれの年令においてもこの季節差は認められなかった.ラットではこの差は顕著であり,夏よりも冬の方が高かった.
    4) 血漿中11-OHCS濃度に及ぼす年令の影響はヒツジおよびラットで,いくぶん認められた.
  • I. 第1胃内における不飽和脂肪酸の変化
    田中 桂一, 林 英夫
    1971 年 42 巻 11 号 p. 582-592
    発行日: 1971/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    反芻動物の第1胃内において,給与脂質は第1胃内微生物によって加水分解をうけ,さらに不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸に水素添加されることが知られている.それで本実験は第1胃内においてエステル型および非エステル型不飽和脂肪酸がうける変化の過程を明確にするためにおこなった.
    第1胃フィステルを装着した山羊2頭を実験1および2に供試し,基礎飼料としてアルファルファヘイキューブ950g/日を給与した.実験1では1頭にサフラワー油(リノール酸80%含有)40g,他の山羊にはリノール酸(リノール酸94%含有)40gをそれぞれ乳化してフィステルを通じて第1胃内に注入した.第1胃内容物は油注入直前,および注入終了後1,2,3,4,6,9,13,18,24時間目に採取した.実験2では1頭の山羊には亜麻仁油(リノレン酸55%含有)40g,他の1頭には亜麻仁油脂肪酸(リノレン酸51%含有)40gを第1胃内に注入し,実験1と同じように第1胃内容物を採取した.第1胃内容物は総脂質を抽出し,それを薄層クロマトグラフィーによって,トリグリセリド,モノおよびディグリセリド,非エステル型脂肪酸(UEFA),リン脂質,コレステロールおよびコレステロールエステルに分画し,それぞれを定量した.各脂質分画の脂肪酸組成はガスクロマトグラフィーで分析した.その結果は次のように要約できる.
    1. サフラワー油注入によって,第1胃内でトリグリセリドは短時間で加水分解され,それにともなってUEFAが増加した.またトリグリセリドの加水分解過程の中間代謝物であると考えられるモノおよびディグリセリドが存在した.
    2. UEFA分画において,サフラワー油に由来する18:2は水素添加を受けてすみやかに18:0になり,18:1の蓄積は比較的少なかった.リノール酸を第1胃内に注入した時,9時間後まで18:1が著しく増加し,18:1から18:0への水素添加が阻害された.しかしその後18:1はさらに水素添加を受けて18:0に変換された.
    亜麻仁油に由来する18:3は18:0に水素添加される.一方,亜麻仁油脂肪酸を第1胃内に注入した時は,13時間後まで18:1が蓄積したが,その後18:1は18:0に水素添加された.
    3. サフラワー油注入によって,トリグリセリドとモノおよびディグリセリド分画の18:2は注入9時間後まで高い値を示した.
    4. リン脂質分画では実験を通して,サフラワー油注入の影響を受けなかった.またその脂肪酸組成からリン脂質の大部分は菌体に由来していると考えられる.
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