日本畜産学会報
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42 巻, 9 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 佐々木 康之, 竹下 潔
    1971 年 42 巻 9 号 p. 421-426
    発行日: 1971/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    新生子牛の出生後における血糖値変動を検索するために,4時間令,1,4,8,13週令においてフルクトースを静脈内に投与し,血漿グルコース濃度におよぼす影響を観察して以下の結果を得た.
    1. 出生直後のグルコース濃度上昇はフルクトース投与によって抑制され,また,投与フルクトースが血中より減少するにつれてグルコース濃度はふたたび上昇した.
    2. 1,4週令子牛では,フルクトース投与はグルコース濃度を約15~40%ほど低下させ,明らかな低血糖効果を示した.
    3. 8,13週令では,4週令以前における低血糖作用とは逆に,フルクトース投与によりグルコース濃度は約40~80%ほど上昇し,顕著な高血糖効果が観察された.
    4. これらの結果から,子牛の血中グルコース濃度が出生時に低いのは,血中に共存するフルクトースのグルコース濃度上昇抑制効果によるものであり,出生後における胎児性フルクトースの血中よりの消失がグルコース水準を上昇させる作用をもつものと考察した.また,出生後4~8週令において子牛の糖代謝相が大きく変換するものと推論した.
  • ひなの肝臓中のトランスアミナーゼ活性および肝臓組織の酸素消費量におよぼすリジン欠乏の影響
    庄司 圭吾
    1971 年 42 巻 9 号 p. 427-434
    発行日: 1971/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    飼料中のリジン含量の相違による屠体分析結果のうち,蛋白質の蓄積割合の差を生化学的手段で解明するため,体内蛋白質代謝に重要な位置を占めるtransaminaseを選び,飼料中リジン含量の異なる飼料を給与したひなの肝臓中のGlutamic-Oxalacetic Transaminase (GOT)とGlutamic-Pyruvic Transaminase (GPT)について,細胞中ミトコンドリア分画局在のものと,上清分画局在のものとに分け,リジン欠乏のはげしい0.76%区,リジンがわずかに欠乏している0.91%区,リジンが要求量を満している1.01%区について,それぞれの活性変動を測定する実験を行なった.
    ゴマ粕とサフラワー粕を主蛋白質源とするリジン欠乏飼料に,L-リジン塩酸塩を段階的に添加した飼料を7日令から21日令まで給与した結果,飼料中のリジン含量の増加に相対応して,増体量,飼料要求率も良くなった.
    一方,上清分画局在の酵素であるGOT, GPTはリジン欠乏により著明な活性上昇は示さなかった.しかし,ミトコンドリア分画局在の酵素であるGOT, GPTは活性が上昇していることを示した.
    肝臓組織の酸素消費量は,飼料中のリジン含量が異なっていてもほぼ同じような傾向を示し,ほとんど差はみられなかった.しかし,体重当りの飼料摂取量の値でメタボリックボディーサイズ(B. Wt.0.75)当りの酸素消費量を除した場合,0.76%区,0.91%区,1.01%区の各々の回帰係数の間には1%有意水準で差が認められ,リジン欠乏のはげしい場合には基準単位当りの酸素消費量は多く,リジンがわずかに欠乏している場合には酸素消費量は少なかった.
  • IV. 酪農経営における技術指標の経営経済的検討
    吉村 喜彦
    1971 年 42 巻 9 号 p. 435-441
    発行日: 1971/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳用牛の飼養における維持飼料と生産飼料の組み合わせの検討は,牛乳の生産経済上重要な問題である.ことにNRC (National Research Council)や畜産試験場において定めたTDNやDCPの標準は,一般に用いられている技術的飼養標準であるが,経営的飼養標準は濃厚飼料と粗飼料との代替によって,より経済的に算出されねばならない.また乳飼比が小さいほど飼料経済上有利であるという乳飼比についての既成概念は,酪農経営において青刈飼料,乾草などの粗飼料が十分に充足可能であることを条件として,設定された飼養標準を用いて飼料給与設計が立てられる場合に成立する.したがって,その条件がみたされない時は,いまの既成概念が適用されない場合もありうる.
    労働生産性については,経済規模が大になるほど大きくなる傾向があるが,労働生産性が大であるという理由のみでの規模拡大は,ある限界を越えると所得の低下をまねくという矛盾を生むであろう.したがって,経営における規模拡大の効用と危険負担増大による非効用との相対性から一定の限界を越えての規模拡大は,経営経済的に許容できないことがある.
  • IV. マウスおよびラットにおける血清Cholinesterase isozymesの生理的変動とその性ホルモン支配
    萬田 正治, 大木 与志雄, 西田 周作
    1971 年 42 巻 9 号 p. 442-450
    発行日: 1971/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    澱粉ゲル電気泳動法によって分離検出されたマウスおよびラットの血清cholinesterase isozymesの生理的調節機構を明らかにすることを目的として,幼若,成熟,妊娠,泌乳などの生理的変化における本酵素活性の変動を観察し,つぎに去勢ならびに種々の性ホルモン投与試験をおこない,その性ホルモン支配について検討を試みた.またこれらの血清酵素の臓器起源についても若干の検討をおこない,その発現機構について考察を加えた.
    1. 血清cholinesterase isozymesの中でもマウスではC3 zoneの活性に顕著な雌雄差が認められ,成熟雌マウスは幼若マウスおよび成熟雄マウスよりも高い活性値を示した.C3 zoneの活性は妊娠とともに著しく上昇するが,分娩後はしだいに低下し,泌乳期の終わる頃には正常に戻った.ラットではC4 zoneに全く同様の明瞭な生理的変動が認められた.しかしマウスではC4 zone活性は上昇しないで,むしろわずかに低下する傾向が見られた.
    2. 血清isozymesの主要成分であるC4 zoneと微量成分であるC1 zoneは,種々の主要臓器に認められたが,マウスの血清C3 zoneはいかなる主要臓器にも認めることができなかった.しかしながらC1 zoneが子宮と胎盤には高い活性値で存在し,特に妊娠期では著しく高くなることが観察された.
    3. 成熟雌マウスの血清C3 zoneと成熟雌ラットの血清C4 zoneの活性は,卵巣除去によって減少したが,Estradiol benzoateを投与することによって正常に戻った.一方,成熟雄マウスの血清C3 zoneと成熟雄ラットの血清C4 zoneの活性は,精巣除去によって上昇したが,Testosterone propionateの投与によって正常に戻った.去勢雌マウスに対するProgesterone投与の効果は認められなかった.
    4. 子宮において,マウスのC1 zoneおよびC4 zoneと,ラットのC4 zone活性もまた卵巣除去によって低下し,Estradiol benzoateの投与によって正常に戻った.以上のことから,マウスおよびラットにおけるcholinesterase isozymesの活性は,Estrogenによって促進されるが,Testosteroneによって抑制されることが示唆された.
  • 三村 耕
    1971 年 42 巻 9 号 p. 451-462
    発行日: 1971/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    著者は1963~1966年にわたり,わが国における開放放し飼い牛舎(以下放飼牛舎と称する)の諸問題を検討する目的で調査ならびに実験を行なった.その概要は第9回国際畜産学会議(エジンバラ市,1966年)で講演したが,ここに報告する.
    1. 中国地方における放飼牛舎の調査
    1964~1966年中国地方の集約酪農場の放飼牛舎を多数調査した.標準型のほか,休息場が給飼場を兼ねる変形(M1)型,休息場を設けない変彩(M2)型があり,これらは,放牧を行なっているG1型,青刈飼料給与を主とし放牧も行なうG2型およびゼロ放牧型のいずれかとそれぞれ結合していた.ゼロ放牧-M1(M2)型が最もふつうの存在であるが,わが国の特に集約的な関東以西では,その飼料の種類,給与方法からみて十分にその存在の理由があると認められた.
    2. 放飼牛舎における乳牛の生態広島大学付属農場乳牛群についてその季節ごとの行動の変化を,1963~1965年にわたり,4分間隔24時間連続観察法を用いて試験した.その大要は本誌40巻3号に速報したが,盛夏の採食•反芻時間の著しい減少と休息時間の著しい増加,またその他の季節では余り大きな差異のないことが認められた.このことから,放飼牛舎の乳牛の行動は放牧牛のそれと異なること,気温などの直接的影響があることなどが指摘される.この試験では,角つき順位が乳牛の行動に影響することも明らかにされた.
    3. 放飼牛舎の構造と機能生態調査の結果,順位の低い牛は年中運動場を利用し,順位の高い牛は夏は運動場を,冬は休息場を利用することがわかった.休息場の必要性を示す反面,暖地では運動場が休息場の機能も有することを示すものである.1965年運動場の面積を縮少して試験した結果は,乳牛群の行動型の根本的変化はないが,採食•反芻時間はやや減少し,休息•遊歩時間はやや増加した.また歩行距離は減少した.
    4. 放飼牛舎の管理技術と省力管理前記1.の調査結果および別に付属農場放飼牛舎に飼育した前後における成績を比較することから,放飼牛舎では受胎率•分娩間隔の成績が一般に低下することが指摘された.群管理技術における個体管理の方法に改善を要することを示すものであろう.
    本研究の結果からも,放飼牛舎がつなぎ牛舎より省力的であることが認められたが,なおこれについても論議した.
  • II. 腹鋸筋,棘上筋,棘下筋,半膜様筋,上腕三頭筋長頭について
    鈴木 惇
    1971 年 42 巻 9 号 p. 463-473
    発行日: 1971/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    緬羊の腹鋸筋,棘上筋,棘下筋,半膜様筋,上腕三頭筋長頭の筋線維をクリオスタットによる連続切片を用いて組織化学的に分類した.この分類のために,コハク酸脱水素酵素,NADHジアホラーゼ,2種類のATPアーゼ,ボスホリラーゼ,グリコーゲンおよび脂質を調べた.
    前報と同様のA型,B型,C型筋線維に加えて,用いた筋肉中にD型筋線維を見出した.D型筋線維は,コハク酸脱水素酵素とNADHジアホラーゼ活性におけるジホルムアザン顆粒の特徴的な網状模様を示した.D型筋線維は,著しく高いNADHジアホラーゼ活性と中等度のコハク酸脱水素酵素活性を有するが,二種類のATPアーゼ活性とホスホリラーゼ活性は低く,グリコーゲン含量も少なかった.脂肪滴は,この筋線維内になかった.各々の型の筋線維において,ホスホリラーゼ活性はATPアーゼ活性(pH9.4)と比例していた.
    D型筋線維は,他の三種の筋線維型よりも少なかった.C型筋線維は,A型,B型筋線維より少なく,A型筋線維は,一般に他の筋線維型よりも多かった。
    D型筋線維は,他の三種の型の筋線維よりも非常に太く,著者のlarger typeと一致し,他の三種の筋線維型は,著者のsmaller typeと一致した.D型筋線維は,組織化学的特徴から赤筋線維の範ちゅうに属するものと思われる.これら四種の型の筋線維の機能的意義について考察した.
  • Motoaki KOSUGIYAM, Junichi MORI, Hiroshi NAGASAWA
    1971 年 42 巻 9 号 p. 474-476
    発行日: 1971/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    For the production of the antiserum to prolactin, especially of the mouse or the rat, a large amount of normal or tumorous anterior pituitaries is necessary for prolactin preparation as antigen. Studies on analytical disc electrophoresis have found that the rat anterior pituitary (RAP) contains much larger amount of prolactin and growth hormone than other hormones.
    The present paper deals with a trial for the production of the antiserum to rat prolactin (RPL) by administering RPL segment of polyacrylamide gel after electrophoresis instead of extracted RPL preparation.
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