前報において,Temperature sensitive fraction (TSF)よりセファデックスG-100を用いたゲルろ過にょりTS-カゼインを分離して,そのアミノ酸組成,分子量,濁度におよぼす塩類の影響などについて報告したが,本蛋白質の性質をさらに研究するため,分離方法を改善し,アルコール溶液中における本蛋白質の性質について,主に安定性の面から調べるため本実験を行なった.
酸カゼインよりTSFの調製までは同様であるが,本報ではTSFを40°Cに保たれたTEAEセルロースカラムに加え,同温度で2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールークエン酸緩衝液(pH8.0)で溶出させた後(区分1),カラム温度を20°C(区分2),さらに2~4°C(区分3)に下げて同緩衝液で溶出した.濁度およびでんぷんゲル電気泳動によりしらべた結果,区分1にはTS-カゼィンは含まれず,区分2および3に存在することがわかった.これより,40°CでTEAEセルロースに吸着し,2~4°Cで溶出される成分をTS-カゼインとして実験に供した.本成分はセファデックスG-100を用いたゲルろ過では前報と溶出位置が一致し,7M尿素,0.022M2-メルカプトエタノールを含むでんぷんゲル電気泳動では主要成分の外に少量の2成分が認められた.エレクトロフォーカシングによれば,5M尿素中で等電点がpH6.7と7.3の2成分が認められた.TS-カゼイン溶液にメタノール,エタノール,n-プロパノール,n-ブタノールを最終濃度で5%になるように加えると,いずれも対照より低い温度で濁度が上昇したが,最高濁度は低かった.TS-カぜインおよび全力ゼインを種々のエタノール濃度と種々のpHの溶液中において一夜放置(2~4°C)した後,遠沈(1,000G,10分)して上澄の蛋白質含量をミクロケルダール法により測定した結果,pH7.0の緩衝液に透析し時は,全カゼインはエタノール濃度50%まで沈殿を生じなかったが,TS-カゼインは15~45%で沈殿を生じ,25%で最も沈殿が多かったが,50%では再び可溶性となった.エタノール濃度25%の場合,pH4.1~8.8でTS-カゼインの45-65%が沈殿し,pH3.6以下と9.5以上で可溶性であった.また,エタノール濃度50%の時では,pH6付近で最も沈殿が多かったが(60%)れ以外のpH域では,25%の時より沈殿率が少なかった.以上の性質は前報で報告した疎水性アミノ酸が多いことと何らかの関連性があるものと思われた.
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