1. 泌乳中の乳牛2頭を用い,各種VFAを個別に第一胃内へ点滴投与し,乳成分組成におよぼす影響について試験した.試験期5期の各期において,(1) 水注入,(2) 醋酸注入,(3) プロピオン酸注入,(4) 酪酸注入,(5) 水注入,の順に試験処理を行なった.各期における酸の添加量は1日当り1500mlで,これを40lの水に溶解稀釈して第一胃内へ点滴投与した.試験期間は1期14日である.
2. 醋酸注入により第一胃内の醋酸モル濃度割合(以下C2比)は増加し,プロピオン酸モル濃度割合(以下C3比),酪酸モル濃度割合(以下C4比)は減少した.醋酸/プロピオン酸モル濃度比(以下C2/C3比)は著しく増加した.プロピオン酸注入によりC3比の増加,C2比,C4比,C2/C3比の減少が認められた.またVFA濃度も上昇した.酪酸注入により,C4比の増加,C2比,C3比の減少が認められ,C3/C3比は水注入期と同様の値を示した.
3. 泌乳量は醋酸注入によりわずかに増加したが,プロピオン酸,酪酸の投与による変化は認められなかった.
4. VFAの点滴投与により乳組成(脂肪,SNF,乳糖,蛋白質,カゼイン,NPN),乳脂の性質(沃素価,ライヘルトマイスル価)および血液組成(糖,ケトン体)に種々の変化が生じた.これら結果の統計分析により乳脂率とC2比,C2/C3比およびライヘルトマイスル価間,ならびにC3と乳糖,蛋白質,カゼイン含量間に有意な正の相関が,またC2比と乳糖,蛋白質,カゼイン含量間,ならびにC3比と乳脂率およびケトン体濃度間に有意な負の相関がそれぞれ認められた.
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