日本畜産学会報
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43 巻, 4 号
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  • V. 胎児期被照射マウスおよびその子孫の繁殖成績について
    田中 亮一, 柏原 孝夫
    1972 年 43 巻 4 号 p. 169-174
    発行日: 1972/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    胎児時代に,JRR-1を1時間照射されたマウスの成熟後の繁殖能力およびその子孫の繁殖成績は,次のごとく要約される.
    1. 被照射胎児(F1)の成熟後の繁殖成績について
    分娩率は,Pre.区80.0%,M.Org.区90.9%,Fet.区85.0%,をそれぞれ示し,比較的良好であった.従って胎児時代にJRR-1照射されても,その生殖腺機能は阻害されなかった.初産日令は,中央値で示すと,Pre.区94.5日,M.Org.区75.5日,Fet.区107.0日であり,Pre.区とFet.区は性成熟が遅くなったため,初産日令も遅延したと考えられた.特にPre.区では卵母細胞の障害によって卵胞の発育が遅くなったと推測された.
    2. 子孫(F2以降)の繁殖成績について
    平均産子数は,M.Org.区のF2およびFet.区のF2が,他区,他世代と比較してわずかに少なかった外は,大きな変化を生じなかった.また性比にも変動は認められなかった.死産は,Pre.区,M.Org.区では特に増加しなかったが,Fet.区のF3は急増し(11.1%),その後F4(7.5%),F5(4.8%)と順次減少はしたが,他区と比較して多発した.これは,Fet.区では劣性半致死遺伝子が誘発しためたと考えられた.育成率は対照区と比較して,照射区はいずれも低下し,X2検定の結果では,対照区との間に危険率1%以下で有意差を認めた.この原因として,Fet.区の死産に関係したものとは異なる劣性半致死遺伝子の誘発が推測された.分娩率は,Fet.区のF5で0%を示した外は,いずれも対照区との間に差は認められず,Fet.区のF5は,劣性不妊遺伝子によって不妊であったと考えられた.絶滅経過は,Pre.区はF4,M.Org.区はF3,Fet.区はF5,でそれぞれ絶滅した.この原因については,放射線照射により誘発された劣性突然変異が後代になってホモ化したためと推定されるが,全きょうだい交配の本実験では明らかにならなかった.
  • III. Two Step法の乾物消化率推定への応用
    阿部 亮, 堀井 聡, 亀岡 暄一
    1972 年 43 巻 4 号 p. 175-180
    発行日: 1972/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    5%Na2SO3溶液,セルラーゼの連続処理(Two Step法)によって試料の乾物消化率(DMD)を推定すべく,in vivo DMD既知のイネ科乾草,野乾草,稲わら,アルファルファヘイキューブおよびアルファルファ乾草を供試し,実験条件の設定,再現性について検討し,さらに,熱水抽出,セルラーゼ連続処理においては試料相互間の比較を行なうために,牧乾草類を供試して,in vivoDMDとの相関を求め,以下のような結果を得た.
    1. 5%Na2SO3,セルラーゼ連続処理によって,in vivo DMDを推定する場合,まず,その試料のリグニン,ケイ酸含量を測定し,その合量が乾物に対して14%以上の試料は0.05%セルラーゼ濃度で5ないし6時間,10%前後のものは0.2%で4時間,6~9%前後のものについては0.2%で6時間,さらに,それ以下のものについては0.2%で8時間の分解をすることによりin vivoDMDとほぼ一致するTwo Step DMDが得られる.
    また,アルファルファ類については前処理の影響が少ないために酵素濃度を1.0%以上に増加し,別の条件を設定する必要がある.
    2. この実験の再現性は非常に良く,また酵素ロット間の変動が認められるが,常に手もとにin vivo DMD既知の基準試料を持ち,条件を設定しておくことにより,信頼すべき値が得られる.
    3. 熱水抽出後,0.2%のセルラーゼで8時間分解することにより,in vivo DMDとTwo Step DMDの間にはr=0.934(P<0.01)の相関が得られ,この場合には,Two Step DMDはin vivo DMDに及ぼないが,試料相互の相対的な栄養価の比較の一つの指標には使用できる.
  • VI. カマンベールチーズの熟成中における微生物相とチーズ中の蛋白分解酵素活性の関連性について
    高藤 慎一, 菊池 俊彦
    1972 年 43 巻 4 号 p. 181-186
    発行日: 1972/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1. カマンベールチーズの熟成におけるかびおよび乳酸菌スターターの役割を検討するために,かびおよび乳酸菌スターター添加(対照,C-チーズ):かびスターター添加,乳酸菌スターター無添加(M-チーズ):かびスダーター無添加,乳酸菌スターター添加(L-チーズ)の3種のチーズを試作し,熟成期間中の微生物相およびチーズ抽出液の蛋白分解酵素活性を測定した.
    2. C-チーズは,熟成全期間を通じてスターターに由来するStr. lactisおよびStr. cremorisが優勢であった.M-チーズでは,原料乳から由来したと思われる野性のstr. lactis, Str,. thermophilusおよびStr. bovisが優勢であった.
    3. かびの菌蓋を除いた抽出液では,その蛋白分解酵素活性はC-チーズが最も高く,以下L-チーズ,M-チーズの順であり,特にC-チーズにおいて熟成22日後頃から,急速に蛋白分解酵素活性は高くなった.
    4. かびの菌蓋を含めた抽出液では,その蛋白分解酵素活性は,C-チーズ,M-チーズ共に熟成初期から高く,大差は認められなかった.
    5. スターターに由来するStr. lactisおよびStr. cremorisの優勢なチーズの抽出液の蛋白分解酵素活性は高く,それらの乳酸菌株は,低分子の窒素化合物の生成に重要な役割を演じていると考えられる.
  • 西田 司一, 大塚 順, 大橋 昭也, 菅原 兼太郎, 山岸 豊子
    1972 年 43 巻 4 号 p. 187-192
    発行日: 1972/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    前2報に続いて,東京,埼玉,宮崎の3都県畜産試験場のブタ総産子9,700頭について性比を調査し次の結果をえた.
    1) 総産子性比:東京の合計は雄へ,品種別でも,Y,Hybは雄へかたよる.埼玉ではかたよりはみられない.宮崎のHybは雄へかたよるが,合計はかたよりを示さない.場間の差は,合計では有意でないが,Hybでは東京-埼玉間で有意である.
    2) 父,母個体:父ブタでは,東京,宮崎は雄へかたよる個体のみであるが,埼玉には両性へかたよる個体がある.母ブタでは各場ともに両性へかたよる個体がみられる.かたよりを示す個体数は滝川(第I報4))より少ない.
    3) 産次,同腹子数:合計の産次では東京の2階級で雄へかたよる.東京Hyb,宮崎W,Y,Hybの各1階級で雄へ,東京Lの1階級で雌へかたよる.産次群区分では,東京の合計の1~3産次で雄へかたよる.同腹子数の合計では,東京の4,埼玉,宮崎の各1階級で雄へかたよる.品種別では,東京Yの3,Hybの1,埼玉W,Y,L,Bの各1,宮崎L,Hの各1,Hybの2階級で雄へかたより,雌へのかたよりは宮崎L,Hybの各1階級でみられる.子数群区分では,合計で東京の11~18で雄へかたよる.
    4) 季節:合計の第二次性比では,東京は秋,宮崎は春に,第一次性比では,東京は秋に雄へかたよるが,季節間には有意差はみられない.
    5) 父,母年令:父の合計では,東京の2階級で雄へかたより,品種別の結果は場により区区である.母でも合計では,東京の1階級で雄へかたより,品種別では,場によって結果は区区である.東京,埼玉のLの各1階級で雌へかたよっている.
    6) 父母年令差:東京の合計,Yでは,父,母年長の各1階級において,同性へのかたよりがみられるが,他場ではみられない.
    7) 歴年度:合計では,東京の4ヵ年度で雄へかたより,品種別では,東京Yの2,L,Hyb,宮崎Hybの各1ヵ年度で雄へ,宮崎Wの1ヵ年度で雌へかたよりがみられる.
  • II. Saccharomyces fragilisの蛋白分解活性
    張 堅二, 吉野 梅夫, 津郷 友吉
    1972 年 43 巻 4 号 p. 193-197
    発行日: 1972/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    チーズ製造に用いた酵母Saccharomyces fragilisを滅菌脱脂乳に振とう培養し,その菌体を除いた培養液および菌体の自己分解液の蛋白分解活性を調べた.
    菌体を除いた培養液はほとんど蛋白分解活性を示さないが,菌体の自己分解液にはかなり強い蛋白分解活性が認められた.
    自己分解液はpH3.0,5.5および8.0に活性のピークを示し,pH5.5に最大の活性を示した.3つのpHにおける活性の最適温度は異なっていた.また,いずれもpH5.5~7.0に比較的高い耐熱性を示した.pH5.5における活性はチーズの熟成温度15°Cで16時間保持しても,なお65%以上の活性が残存した.このpH5.5における活性は5%までの食塩によって全く阻害されなかった.
    S.fragilisの菌体の自己分解液にかなり強力な蛋白分解酵素が存在することが認められ,これがチーズの熟成に主として関与すると思われる.
  • IV. 卵黄中のセレブロシドについて
    門間 偉峯, 中野 益男, 藤野 安彦
    1972 年 43 巻 4 号 p. 198-202
    発行日: 1972/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    卵黄の脂質から主としてケイ酸カラムクロマトグラフィーによりセレブロシドを純粋に単離した.これを加水分解して,構成する脂肪酸,スフィンゴシン塩基および糖を調べた.構成脂肪酸は15種見出され,そのうちほぼ58%がオキシ酸,42%が直鎖酸であった.オキシ酸としては,オキシリグノセリン酸(22.0%),オキシベヘン酸(19.3%)およびオキシトリコサン酸(12.2%),直鎖酸としてはリグノセリン酸(15.7%),パルミチン酸(9.6%),べヘン酸(7.2%)などが主なものであった.構成長鎖塩基としては,スフィンゴシンとジヒドロスフィンゴシンが見出され,前者が大部分(84.5%)を占めていた.構成糖としては,グルコースとガラクトースがほぼ1:1の割合で含まれていた.これと対応して,卵黄セレブロシドは,グルコシルセラミドとガラクトシルセラミドのほぼ等量ずつから成ることが認められた.
  • 田先 威和夫, 勝 鎌政, 奥村 純市
    1972 年 43 巻 4 号 p. 203-211
    発行日: 1972/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ヒナのエネルギーおよび窒素代謝におよぼすリジン欠乏の影響を知るために,単冠白色レグホーン種の初生雄ビナを45羽ずつの2群に分け,リジン欠乏飼料(要求量の70%)および対照飼料を30日間ヒナに与えた.なお飼料給与法は自由摂取あるいはpair feedingとした.その結果を要約すると次のとおりである.
    1. ヒナの成長および飼料効率は,リジン欠乏飼料を給与すると低下した.
    2. リジン欠乏群は対照群に比べて,飼料窒素の蓄積率および体蛋白質の蓄積量は少なかったが,脂肪の蓄積には差がなかった.
    3. リジン欠乏群の体重増加が少ないことは,リジン欠乏により飼料窒素の利用率が低下し,体蛋白質の蓄積が減少した結果生じたものであった,
    4. 飼料エネルギーの代謝率は,飼料給与方法に関係なく,リジンの欠乏(要求量の70%含有)では影響がみられなかった.しかしエネルギーの蓄積量は,リジン欠乏によって減少した.
    5. 飼料摂取量が等しい場合(pair feeding),単位体重当りに換算した飼料摂取時の熱発生量はリジン欠乏によって増加したが,絶食時の熱発生量に率変化がなかった.欠乏群の飼料摂取時熱発生量が多いことは,飼料の特異動的効果の増大によるものと考えられた.
    6. リジン欠乏により,血漿尿酸濃度の上昇および尿中尿酸排泄量の増加がみられた.飼料蛋白質の消化率はリジン欠乏によって影響をうけなかったことから,リジン欠乏群のヒナでは外因性窒素代謝の増加がおこるものと考元られた.
  • II. 牛乳脂質のトリグリセリド組成
    土屋 文安, 山本 良郎, 岡部 俊道, 黒田 郁子
    1972 年 43 巻 4 号 p. 212-218
    発行日: 1972/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ガスクロマトグラフィーによって,全国22地区の1年間の牛乳脂質試料526点のトリグリセリド組成(分子量分布)を測定した.
    ガスクロマトグラムのパターンとしてC38とC50(またはC52)を最高ピークとする2つのピーク群からなることは従来の文献通りであり,これらのピークの中でC38とC50は地域•季節を通じて変動が小さく,平均値は両者とも約12%であった.一方,C36以下とC52以上は変動がきわめて大きく,C52/C36比はトリグリセリド組成の変動を代表する指標として好適と考えられる.
    C36とC52の年間平均値によって試料採取地区を分類すると,沃素価•けん化価により分類した6地域とほぼ一致する.C52/C36比の季節的変動は沃素価•けん化価のそれと類似して,北海道で夏に高く,冬に低いが,南に向って変動幅が小さくなり,大都市近郊ないし専業地域では常にこの値が高い.特に,大都市専業型においてはC52,C54が異常に高い値を示した.
  • 渡辺 乾二, 佐藤 泰
    1972 年 43 巻 4 号 p. 219-225
    発行日: 1972/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛赤肉を約10%の牛脂肪と共に加熱し,得られた加熱香気成分より非酸性化合物区分(T-Fr)を分離した.このものはもとの加熱香気に近いにおいを有していた.ペンタン,エーテルおよびメタノールの混合系を展開溶媒としてのケイ酸カラムクロマトグラフィーによってT-Frを5区分に分画した.T-Frおよびその分画物をガスクロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィーーマススペクトロメトリィーとの併用によって分析した.この結果,aldehyde, ketone, hydrocarbon, alco-hol, lactone, ester, pyrazine化合物,芳香族化合物および硫黄化合物が,T-Frの構成成分であることを認め,凡そ,85種の化合物を同定した.5区分とT-Frの香気より考えて,赤肉から由来したにおいは,肉様臭,カラメル様臭およびロースト臭であり,脂肪からのそれは牛脂肪臭,甘いかおり臭および青くささ臭であると思われた.
  • Shu FURUYA
    1972 年 43 巻 4 号 p. 226-227
    発行日: 1972/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
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