鶏卵の体外受精について検討した.使用した器具は全て滅菌し,卵白,各種溶液は無菌的に作成した.精液は,クロアカ部分をアルコールで十分消毒した後採取し,直ちに抗生物質を含むりン酸緩衡液で2倍'に希釈した.放卵後30分の鶏から排卵直後または卵管漏斗部にある卵をリンゲル液内に採取し,41°Cの恒温器内に静置した.さきに2倍希釈した精液をリンゲル液で最終濃度が20,40,200倍となるように希釈し,前2者の希釈倍率では0.01ml,後者の場合は0.1mlを胚盤上に滴下して41°Cで20分間静置した.つぎにりンゲル液を新鮮卵白で置換し,さらに41°Cの恒温器内に12時間静置した.
その後卵白を除去し,ホルマリン固定を行ないKOISINおよびOLSENの方法を併用して卵割の有無を観察した.
培養中に胚盤が損傷をうけたものを除くと,24個中11個が受精卵と判定され,卵割も正常であった.それらのうち7個は桑実期以上の発育を示した.一方,対照卵においては,卵割は認められず,胚盤の周囲に多くの空胞が観察された.また体外受精卵の組織学的標本の観察においても正常の卵割とほとんど同じであることが認められた.これらのことから,鶏卵の体外受精は可能であり,また鶏の射出精子は雌の生殖器道内において受精能獲得の必要はないものと推定された.
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