オーチャードグラスおよびラディノクローバーを主体とする混播1番草を用いて,(1)予乾細切,(2) 細切のみ,(3) 無処理,の3種のサイレージおよび(4) 圃場天日乾燥による乾草を調製し,約4カ月間貯蔵後,化学的品質ならびに窒素化合物の分布を調べるとともにこれらの要因がメン羊の窒素利用性におよぼす影響を検討した.供試サイレージの化学的品質は,予乾細切サイレージが最もすぐれ,細切サイレージがこれにつぎ,無処理サイレージが最も劣った.サイレージの品質の良否にかかわらず,いずれのサイレージにおいても水溶性窒素区分の著しい生成がみられたが,無処理サイレージではとくにアンモニア態窒素の生成割合が大きかった.メン羊における窒素の蓄積は,低品質の無処理サイレージ摂取時に最も少なく,また,飼料摂取後4時間内における第一胃内アンモエア濃度は無処理サイレージ摂取時が他の2種のサイレージ摂取時にくらべて明らかに増大した.窒素成分としてたんぱく態窒素がほとんどをしめる乾草摂取時における窒素の蓄積は,サイレージ摂取時に比較して明らかに多く,第一胃内アンモニア濃度は低かった.サイレージ摂取時における反芻家畜の窒素利用性の低下には,サイレージ中の水溶性窒素の増加,とくにアンモニア態窒素の増加が第一義的に関与するものと考えられた.
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