日本畜産学会報
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47 巻, 11 号
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  • III. ナトリウムを補給しながら飢餓状態とした場合の変化
    苅田 淳
    1976 年 47 巻 11 号 p. 625-631
    発行日: 1976/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ニワトリの副腎の組織形態と糖代謝調節機能との関係を究明するため,白色レグホン種で2カ月齢の雄ニワトリを用い,約0.5%の低張食塩水を給与しながら飢餓状態とした場合の副腎の変化を組織学的に検索した.その結果,飢餓状態のニワトリの副腎重量は,当初は一時的に増大したが,その後はむしろ減少した.また組織学的には,全般の皮質組織においてpale cellが増数肥大しfuchsinophil cellが減数萎縮したが,その傾向は特に内層部の皮質組織において顕著となった.なお実験の末期で衰弱を示したニワトリの副腎では,内層部の皮質組織が大幅に変化したが,周辺部のそれはむしろ正常なものに近くなった.脂質滴は,飢餓の進行とともに全般の皮質組織で次第に減少したが.特に内層部ではその傾向が著しかった.アルカリ性フォスファターゼの活性は,飢餓によって内層部で幾分高まったが,実験の末期には全般的に著しく低下した.これらの結果からみると,ニワトリの副腎皮質では,特に内層部の皮質組織が糖代謝の調節に関与しているものと思われる.
  • 鈴木 三義, 光本 孝次
    1976 年 47 巻 11 号 p. 632-638
    発行日: 1976/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳牛の群検定において不完全記録を完全記録と同様に使用するためには,搾乳期間補正を必要とする.この分析では昭和47-49年まで道東の乳検センターで集積されたホルスタイン種の完全記録2585のフィールドデータを用い,期間補正に対する産次および分娩月の効果と分娩月の季節区分と補正方法について検討した.期間補正に対する産次と分娩月の影響は,10ヵ月乳量に対する2通りの累積乳量の比率を最小自乗分析で検討し,これで得られた最小自乗平均を用いて分娩月の季節区分を調べた.推定方法はRatio factor, Regression factor, Method Pの3つの方法について1000個のデータを当てはめ平均絶対誤差で検討した.1) この地域の飼養環境下で産次と分娩月の泌乳曲線パターンに対する影響は,かなり大きいと推定された.2) 最小自乗分析において産次と分娩月は高度に有意(P<.01)であり,またこれらの交互作用も有意なものが多いため,産次ごとの分娩季節別の補正が必要である.3) 各分娩月の最小自乗平均の推移は,累積期間が短い程季節的変動が大きく,泌乳後期の記録が欠けたものは夏季分娩では比率が小さく,泌乳前期の記録の欠けたものは逆に大きいことが示された.また欠けた記録の数につれて季節区分も変化しうることが示唆された.4) Ratio factor, Regression factorとMethod Pの3つの方法の推定精度の比較では,短期間で10ヵ月乳量を推定する程Ratio factor法よりRegression factor法が優れ,さらにMethod Pが優れていることが示されたが,しかし累積期間が長くなればこの差は少なくなった.
  • 阿部 又信, 山本 嘉博, 上原 良吾, 荻原 国威, 佐藤 民雄
    1976 年 47 巻 11 号 p. 639-647
    発行日: 1976/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    リノール酸(C18:2)を多量に含有するサフラワー油を,第一胃において水素添加を受けないようホルマリン変性カゼインの皮膜でカプセル化して乳牛および肥育牛に給与した場合の,血漿中脂質,乳脂肪および体脂肪の脂肪酸組成,ならびに乳脂率,屠体肉質に及ぼす影響を検討した.泌乳試験においては,1日1頭あたりチモシー乾草4kg,ビートパルプ8kg.乳配5-6kgを給与中の乳牛3頭にカプセル化サフラワー油(CSO)を1日あたり100,300,600gの割合で各5日間ずつ順次給与した.各給与期の間には5日間の非給与期を設けた.その結果,1) CSO給与により血漿脂質のG18:2は増加し,相対的にC18:1の減少する傾向があり,その程度はCSO給与量の増加とともに大きくなった.2) CSO給与量の増加とともに血糖直の増加する傾向があった.3) CSO給与前は乳脂肪中にC18:2はほとんど検出されなかったが,CSO給与とともに増加し,1日600g給与時には21.6%まで増加した.4) CSOの給与にともなって4%FCMの増加する傾向が認められた.肥育試験においては,体重550kg以上のホルスタイン種去勢牛6頭に同一配合内容の濃厚飼料と稲わらとを不断給与し,そのうち3頭には濃厚飼料10kgあたり100gの割合でCSOを混ぜて屠殺前37日間連続給与した.その結果,1) CSO給与区においては,屠殺直前の血漿脂質のC18:2含有率はCSO給与開始前に比べて有意に増加した(P<.05).しかし皮下脂肪,腎臓脂肪,腹腔内面脂肪および背最長筋の脂肪酸組成にはCSO給与の影響が認められなかった.2) 腎臓脂肪および腹腔内面脂肪は皮下脂肪,筋肉脂肪よりC18:0が多く,C18:1が少なかった,また,筋肉脂肪は他に比較してC18:2含有率が2倍程度高かった.3) 用いた実験条件下においては,CSOの給与は体重増加,飼料要求率および枝肉の格付にほとんど影響しなかった.
  • 和泉 康史
    1976 年 47 巻 11 号 p. 648-653
    発行日: 1976/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    第一胃フィステルを装着したホルスタイン種の成雌牛4頭を供試し,黄熟および完熟期刈取りのとうもろこしサイレージと1番および2番刈オーチャードグラスーラジノクローバサイレージの給与が第一胃内揮発性脂肪酸(VFA)の産生ならびに第一胃内性状に及ぼす影響の相違について比較検討した.その結果次のような知見を得た.1) 第一胃内pHにおいて,両とうもろこしは両牧草よりも,また,2番草は1番草よりも有意(P<.01)に高かった.一方,第一胃内NH3-N濃度およびVFA濃度では,pHとは逆に1番草は2番草および両とうもろこしよりも,また,2番草は両とうもろこしよりも有意(P<.01)に高かった.2) 各VFAの割合では,酢酸は2番草が最も高く,他のサイレージとの間に有意差(P<.01)が認められた.プロピオン酸では,両とうもろこしが1番および2番草よりも,1番草は2番草よりもそれぞれ有意(P<.01)に高かった.また,iso-バレリアン酸では,1番草,2番草および両とうもろこし間にそれぞれ有意差(P<.01)が認められた.酪酸およびn-バレリアン酸には,サイレージの種類による有意な相違は認められなかった.
  • 丹羽 晧二, 三宅 正史, 入谷 明, 西川 義正
    1976 年 47 巻 11 号 p. 654-658
    発行日: 1976/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    Wistar系の幼若雌ラットにPMSGを注射し,40時間後に卵巣から採取して修正KRB液中で14-14.5時間培養された卵母細胞(体外成熟卵子)とHCGの注射14-14.5時間後に卵管より採取された排卵卵子(体内成熟卵子)を供試した.ついで0.3-0.9×106/mlの濃度で5-5.5時間前培養された精巣上体精子で授精し,精子侵入から前核形成までの時間を両者の卵子について比較した.その結果,約半数の卵子に精子侵入の認められる時間および精子の透明帯通過が完了する時間は,いずれも体内成熟卵子よりも体外成熟卵子の方が2時間遅延した.この遅延は精子侵入時期の差に起因するものと考えられるが,卵細胞質中に侵入した精子頭部の膨化から前核形成までの時間については両者の卵子に著差は認められなかった.授精後4-5時間における精子侵入卵の割合は,体内成熟卵子の方が高く,またいずれの実験例でも安定した侵入率がみられた.なお本実験では,授精前に両区の卵子ともに顆粒膜細胞を除去したが,体内成熟卵子での精子侵入率がつねに高く,したがって精子侵入そのものには顆粒膜細胞の存在は必要ではないと考えられる.
  • 正田 陽一, 石井 忠雄
    1976 年 47 巻 11 号 p. 659-664
    発行日: 1976/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種乳牛15頭について,年間を通じて毎月一回,血清サイロキシンレベルをPVFスポンジを用いた一種のラジオステレオアッセイにより測定し,その季節による変化および妊娠から泌乳期にわたる消長をしらべた.測定結果については最小二乗分析法による母数推定法を用い,両者の影響を分離して考察した.季節による変化を見ると,血清サイロキシンレベルは夏季に低く,7-8月平均で12.6μg/dlとなり,冬季の1-2月平均26.2μg/dlの約1/2の値を示した.また妊娠•泌乳期中の消長は,妊娠の末期に低くなり,分娩直前に13.7μg/dlと最低値を示し,泌乳1か月目には15.4,μg/dlとあまり高くないが,2か月目に急増して27.0μg/dlの最高値に達した.その後はやや低下し泌乳末期には22.1μg/dlとなった.
  • 角田 健司, 渡辺 誠喜, 鈴木 正三
    1976 年 47 巻 11 号 p. 665-671
    発行日: 1976/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    血清中のアルカリ性ホスファターゼは,通常各種の臓器組織で産生された後,血液中へ移行することによってもたらされ,生化学的に異質な成分からなり,また,その電気泳動パターンは支持媒質の種類によって相違することが指摘されている.そこで,このような点に留意して分離能の優れた澱粉ゲル電気泳動法により,ヤギ血清アルカリ性ホスファターゼの遺伝的な変異を究明するために,その主要な成分について種々の阻害試験および電気泳動的な挙動による生化学的類似性を比較し,それらの成分の示す変異型の遺伝分析を試みた.その結果,本酵素は5つの活性zoneに分離され,主に易動度の速いA zoneとそれに付随して発現する傾向にあるB zoneは,それぞれ,0.01M L-phenylalanine(阻害率45.0%, 46.5%), 0,05M L-lysine (57.8%,59.3%), 0.05M L-glutamic acid (61.8%,60.2%),0.001M sodium cyanide (39.0%,47.0%)および6M urea (42,7%, 47.1%)の各阻害剤の処理に対して同程度の感受性を示し,0.01M sodium taurocholate処理ではA zoneがB zoneより若干感受性が低かった(9.5%,15.8%).このような類似の阻害性を示すA, B zoneは,生化学的に同質の成分であると考えられた.さらに,これらの泳動域には2種類の変異型,Alp-F型およびAlp-O型,が認められ,前者は主としてA, B zoneを発現するもので,後者はその両方のzoneを欠き活性の検出されないものと,極めて淡く検出されるC zoneのみを示すものとであった.2つの変異型は,交配成績から単純な遺伝的支配を受け,これまでと同様に優劣関係にある一対の対立遺伝子(AlpFおよびAlpO)によって発現するものと思考された.また,血清ロイシンアミノペプチダーゼのアイソザイムパターンとは関連性の無いことが認められた.
  • 岡本 全弘
    1976 年 47 巻 11 号 p. 672-678
    発行日: 1976/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    第一胃フィステルを装着した去勢成めん羊の第一胃内pHと反すう行動を並行して連続的に記録することにより,両者の関係を明らかにしようとした.同一ほ場より収穫した梱包乾草とヘイキューブの二種の飼料を,1日1回あるいは2回給与する4種の飼養条件下で実験した.反すう中に吐きもどされた食塊の数と第一胃内pHの変化をグラフに描き,両者の相関を「小波の相関」と呼ばれる符号検定法により検定した.乾草給与時にくらべ,ヘイキューブ給与時は反すう時間および食塊数は少なく,第一胃内pHは低い傾向が認められた.少数の例外を除き,第一胃内pHは反すう開始後上昇し,反すう終了後しばらくして低下した.符号検定の結果,15分ごとに吐きもどされた食塊数の変化と第一胃内pHの変動との間には有意な相関が存在することが明らかにされた.
  • 秋葉 征夫, 松本 達郎
    1976 年 47 巻 11 号 p. 679-683
    発行日: 1976/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    菜種粕中に存在する抗甲状腺物質である(-)-5-Vinyl-2-oxazolidinethione (Goitrin)がヒナのヨウ素代謝に影響を与えることはすでに報告したので,ニワトリの消化管からのヨウ素の吸収に対するGoitrinの影響を白色レグホーン種雄ヒナを用いて検討した.Goitrinを14日間投与したヒナにおける放射性ヨウ素(125I)の吸収と排泄の様相を,非吸収Indexとして144Ceを用いて検討した.腺胃•筋胃および十二指腸ではヨウ素の吸収よりも排泄が多く,空回腸部で著しいヨウ素の吸収がみられた.Goitrinの投与により腺胃および筋胃へのヨウ素の排泄が減少し,空回腸部におけるヨウ素の吸収が増加する傾向がみられたが,飼料中ヨウ素のみかけの吸収率はGoitrin投与で低下しなかった.ヒナの空回腸部のloopからのヨウ素(131I)の吸収をin situおよびin vitro培養条件下で測定した.いずれの条件下においてもGoitrin(2mMと5mM)はヨウ素の吸収を若干抑制することが確かめられた.したがって,Goitrinはヒナ消化管においてヨウ素吸収抑制作用を示すが,Goitrin投与によるニワトリの体内ヨウ素代謝の変化は,消化管におけるヨウ素の吸収に因るよりも,主に甲状腺機能の変化に起因することが示唆された.
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