放牧による生草主体の育成方法が第一胃粘膜および絨毛の発達におよぼす影響を人工乳主体の育成方法と比較して検討した.ホルスタイン種雄子牛20頭を代用乳,人工乳,乾草で哺育•育成し,次の5群に分けた.A;10週齢屠殺,B1;13週齢屠殺,B2;11週齢より放牧,13週齢屠殺,C1;16週齢屠殺,C2;11週齢より放牧,16週齢屠殺.離乳は全群ともに6週齢とした.屠殺解体後,第一胃前背嚢より5×10cmの組織を採取し,生組織及び乾燥組織における粘膜比を測定した.さらに第一胃前背嚢,後背嚢,後腹嚢より小組織片を採取し,ホルマリンで固定した後,絨毛の密度および長さを測定した.絨毛の形および色調は前背嚢で判定した.生組織,乾燥組織における粘膜比は人工乳,乾草を給与した子牛の方が放牧子牛よりもやや高い傾向にあった.絨毛の形及び色調に対する処理の影響は認められなかった.絨毛の密度は3部位とも有意差は認められないが,人工乳主体の子牛の方が低い傾向にあった.第一胃前背嚢における絨毛の長さはA群が他の群に比して短かく,また人工乳主体の子牛は放牧子牛よりも有意に長く,週齢•処理による影響が認められた.後背嚢および後腹嚢における絨毛の長さは人工乳主体の子牛で年齢に伴い有意に増加したが,放牧子牛での増加は小さかった.前背嚢における絨毛の発達が他の部位と比べて最も顕著であった.
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