日本畜産学会報
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47 巻, 5 号
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  • 渡部 英一
    1976 年 47 巻 5 号 p. 239-245
    発行日: 1976/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ニワトリの消化管内における発酵をガス産生とVFA産生の面から検討するために,グルタミン酸ナトリウム(G-Na),乳酸ナトリウム(L-Na),コハク酸ナトリウム(S-Na)ならびにグルコース(G)を基質とし,発酵管法により〓嚢•盲腸•結直腸およびその他の部位(筋胃•十二指腸•空回腸)の消化管内容物とともに培養した.1) 〓嚢では3時間培養の基質無添加を除いてガス産生が認められたが,ガス産生の伸びは少ない.一方,盲腸•結直腸では培養時間の経過に従い全発酵ガスが増加した.その他の部位のガス産生は,きわめて微弱で測定範囲に入らなかった.全ガス量,CO2ガス産生量とも〓嚢•盲腸•結直腸のGを添加した培養液が高く,とくに盲腸内容物のガス発酵がきわめて旺盛であった.2) 培養9時間におけるVFA産生は,〓嚢では酢酸(C2),プロピオン酸(C3)以外の各酸は少ない.盲腸•結直腸ではすべてのVFAが増加し,Ca, C3, n-酪酸(n-C4)の産生が大きく,とくにG添加では他の基質添加と比較して高いVFA産生がみられた.その他の部位では基質添加によりC2, C3, iso-酪酸(iso-C4), n-C4の増加が認められた.3) 総VFAからみた場合,各部位にVFA産生能があり,4種の基質のなかではG添加培養液のVFA量が最も大きく,各部位のG添加とそれ以外の基質添加の間に有意差(P<0.01)が認められた.4) 各部位内容液の発酵ガス産生量と総VFA量には,〓嚢(r=0.72),盲腸(r=0.99),結直腸(r=0.98)においてそれぞれ正の相関が認められた.5) 各部位内容液におけるC2, C3, n-C4が総VFAに対して占める割合は大きかった.
  • 辻 荘一, 福島 豊一
    1976 年 47 巻 5 号 p. 246-253
    発行日: 1976/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    腎臓のOrnithine transcarbamylase(OTC)活性通常のニワトリに比して50~100倍も高いニワトリの系統が存在している.本試験ではこのOTCの存在がアルギニン欠乏飼料給与時のヒナの成長におよぼす影響について検討した.供試したヒナは遺伝変異体OTCの遺伝子をヘテロに有するものと,この遺伝変異体OTCの遺伝子を有しないものとが1対1の割合で存在し,OTCもしくはOTCと連関する形質以外はランダムに分離していると推定されるヒナである.アルギニン欠乏飼料の給与によってヒナの成長は遅延し,その増体重はアルギニン塩酸塩を添加した対照区の37-38%にすぎなかった.また増体重の個体差がきわめて大であった,この増体重と腎臓のArginase活性との間にはきわめて高い負の相関(-0.89)が認められた.非天然アミノ酸であるα-アミノイソ酸(AIB)を給与すると腎臓のArginase活性はほぼ1/10となり,増体重も対照区の約60%となった.このようにしてArginase活性を抑制した場合でも,アルギニン欠乏飼料給与下でも遺伝変異体OTCを有するヒナと有しないヒナとの増体重に差違は認められなかった.このことから遺伝変異体OTCはヒナのアルギニ合成能には何らの影響を与えないものと推察された.アルギニンとオルニチンの代謝に関連する酵素とOTCとの関連はとくに認められなかったが,OTCはAIBとオルニチンの同時添加によってその活性が2倍に上昇した.
  • 阿部 又信, 入来 常徳, 近藤 啓一, 河井 武則
    1976 年 47 巻 5 号 p. 254-264
    発行日: 1976/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1) 実用的組成の子牛代用乳の蛋白質源として脱脂粉乳の代わりに粗蛋白質含量50-55%の脱脂大豆粉末を用いた場合の子牛の成長および消化率に与える影響を調べた.また,その際の血漿遊離アミノ酸濃度から代用乳中蛋白質のアミノ酸有効性の検討を試みた.2) 初体重約45kgのホルスタイン種雄子牛を8頭ずつ3区に分け,1区:脱脂粉乳57%およびホエーパウダー15%,2区:脱脂粉乳30%,ホエー30%および大豆粉末15%,3区:ホエー40%および大豆粉末35%を含有する代用乳を給与した.なおこれ以外にも蛋白質源としては,各区とも粗蛋白質含量32%のフィッシュソリュブル吸着飼料を10%配合した.子牛は導入後の2週間代用乳だけをバケッで定量哺乳させ,この間に各区とも3頭を用いて消化率,他の3頭を用いて血漿遊離アミノ酸濃度の測定を行った.15日以後人工乳および稲わらを不断給与し,35日間で離乳した.3) 13週間の体重,体長,体高,胸囲の発育は特に3区が劣る傾向が見られたがその差は有意ではなかった.4) 代用乳の乾物,粗蛋白質,粗繊維の見掛けの消化率は1区,2区に比べて3区が有意に低かったが,1区と2区との間には有意の差がなかった.5) 朝の給与直前の血漿遊離アミノ酸総量は1区が2区,3区に比べて有意に高く,個々のアミノ酸ではバリン,メチオニン,リジン,ロイシン,イソロイシン,アルギニン,チロシンの濃度が高かった.2区と3区の間には顕著な差を認めなかった.6) 代用乳の代わりにグルコースを給与すると,4時間後には各区とも血糖濃度の増加と血漿遊離アミノ酸総量の減少を見た.必須アミノ酸についてそれぞれグルコース投与前後の血糖濃度比(PAAI)を求めると,投与後1区:リジン,2区:イソロイシン.3区:イソロイシンの減少が最大であった.7) 成長試験とは別に体重約45kgのホルスタイン種雄子牛3頭を用い,全乳だけをゴム乳首を用いて給与して14日目朝の給与直前に血漿遊離アミノ酸濃度を測定した.全乳給与時に対する各代用乳給与時の必須アミノ酸の血漿濃度比(PAARI)を求めると,1区:メチニオン,2区:メチオニン,3区:メチオニンおよびリジンの比が最小であった.8) 制限アミノ酸の検索にはPAAI法よりもPAARI法の方が適切であると考えられ,その結果,脱脂粉乳57%およびホエーパウダー15%を含む代用乳においてはメチオニンが最も制限になり易く,大豆粉末使用量の増加とともにリジンもまた強い制限アミノ酸になる可能性が示された.
  • 白井 邦郎, 岡村 浩
    1976 年 47 巻 5 号 p. 265-269
    発行日: 1976/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    製革原料としては価値の低い皮を解繊して得られるコラーゲン繊維を空気ろ過材として利用することを目標として,そのホルムアルデヒド吸着能力を試験した.コラーゲン繊維は1/10希釈ホルマリン蒸気から約2%のホルムアルデヒドを吸着し,その吸着力は活性炭よりも強い.コラーゲン繊維のホルムアルデヒド吸着量はアルカリ処理により増大し,pHが高いほど大であるが,クロム処理を施してもほとんど影響を受けない.
  • 矢野 秀雄, 三由 耕造, 川島 良治
    1976 年 47 巻 5 号 p. 270-276
    発行日: 1976/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    本試験は濃厚飼料を多給しためん羊におけるミネラル代謝と第一胃内醗酵との関係を調べようとした.3頭のめん羊に濃厚飼料対粗飼料の割合(%)が90:10,80:20,70:30,60:40である4種類の飼料を各20日間の4期に分けて与えた.飼料中濃厚飼料の割合が高まるにつれて,尿中カルシウムとリンの排泄量,飼料中摂取量に対するそれらの割合は有意に増加した。尿中カルシウム排泄量は尿pH,第一胃液中酪酸.VFA総量と有意な相関を示した.尿中リン排泄量は第一胃液中乳酸,酪酸,吉草酸,pH,尿PHと有意な相関を示した.糞中カルシウム排泄量と酢酸プロピオン酸比との間には有意な相関がみられた.糞中リン排泄量は尿pH,第一胃液中酪酸,吉草酸.VFA総量,pHと有意な相関を示した.濃厚飼料を多給すると尿中カルシウム排泄量の増加,リンの吸収,尿中排泄量の増加が引き起こされると考えられた.カルシウム排泄量に有意な相関を有するVFAとリン排泄量と高い相関を示すVFAとは幾分異なっており.カルシウムとリン代謝は違う要因によっても影響されることが推察された.
  • 鴇田 文三郎, 細野 明義
    1976 年 47 巻 5 号 p. 277-282
    発行日: 1976/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ホモ型発酵乳酸菌による菌体内プロテアーゼの生産ならびにその性質については既に詳細な研究がなされているが,ヘテロ型発酵乳酸菌についてはそのプロテアーゼ活性が微弱であることもあってほとんど詳しい研究がなされていない.筆者らはヘテロ型発酵乳酸菌のうち,乳製品製造上重要なLeuconostoc citroaorumの菌体内プロテアーゼの生産と,産生酵素の抽出およびその性質について検討した.30°Cで培養開始後,増殖が対数期に入った時点で菌体内プロテアーゼが最も顕著に生産され,培養24時間目で最高に達し,以後培養時間の経過とともに漸減した.30°Cで24時間培養の菌体を超音波処理後,硫安分画をして得た酵素液の性質を全カゼインを基質にして調べた.その結果,活性至適pHおよび温度がそれぞれ7.5付近および45°Cにあり,40°Cで10分の加熱により活性の低下が始まることを認めた.また,αs-カゼイン,β-カゼイン,粗κ-カゼインのうち,本酵素はαs-カゼインを最も顕著に分解することを認めた.
  • 左 久
    1976 年 47 巻 5 号 p. 283-291
    発行日: 1976/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1) 反芻動物に1日1回だけ飼料を給与して自由採食させた時の採食行動を分析するために,めん羊7頭に乾草•細切乾草•ヘイキユーブおよび濃厚飼料の4種類の飼料のうちいずれかを単味で与え1日の採食行動を連続記録した.2) めん羊は粗飼料を1日平均11回に分けて採食し,そのうち30分以上連続した採食は平均6回,1回の最長採食時間は平均80分で150分を越えることはなかった.また,日中の最長採食休止時間は4種の供試飼料いずれの場合も平均100分であった.3) めん羊は給飼開始後101-201分たつと30分以上連続して採食を休止し,一時的な飽食状態を示した(PrimarySatiety State, PSS).また,真夜中までに最後の30分以上連続して採食を終了した後(Final Satiety State,FSS)は1日摂取量の10%以上採食することはなかった.4) 粗飼料給与時には1回の採食時間はPSSまでは平均41-55分,FSS以後は平均9~19分で,PSSとFSSの間ではめん羊は1回の採食時間が平均35分になるように採食行動を調節しているものと思われた.5) 1日の採食行動を累積採食量の経時変化の曲線で表わすとPSSとFSSの2点間ではほぼ直線状になり,その間の採食活動を調節する要因がFSSをも制御していることが示唆された.
  • 過酸化物の生成および雛に対する影響
    滝川 明宏, 檀原 宏, 大山 嘉信
    1976 年 47 巻 5 号 p. 292-302
    発行日: 1976/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    放射線照射による飼料成分および飼料価値の変化を調べるため,大豆油10%を含む半精製飼料に対し,0.6,3および6M radのγ線を照射した後,飼料成分の変化を調べるとともに,雛に給与して,その影響を検討した.その結果,0.6M radでは過酸化物の生成は比較的少なかったが,3M rad以上の照射により多量の過酸化物が生成され,粗脂肪含量が減少した.過酸化物は,照射総線量が同一でも照射時間が長いほど生成量が多かった.雛に対する影響は0.6M radではほとんど認められなかったが,3M rad以上では,飼料摂取量および飼料効率がいずれも有意に減少し,飼料の代謝エネルギー含量および消化率も有意に低下した.特に6M radの照射により粗脂肪の消化率の低下が顕著であった.また,高線量を照射した場合に腸管,肝臓などが有意に肥大し,腸壁の肥厚が顕著であった.雛の溶血性は0.6および3M radの照射により高まった.6M radでは,試験開始後2週までほとんど変化なかったが,これは過酸化物等の吸収量が少なかったためと考えられる.飼料摂取量の減少,飼料効率および消化率の低下,臓器の肥大,溶血性の上昇などは自動酸化によって調製した高度酸化油を給与した場合にも認められ,一方,油以外の成分に6M radを照射した区では発育の低下が認められなかった.したがって,これらの現象は,γ線照射により生成された過酸化物等によって惹起されたものと考えられる.
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