母ウシから子ウシへの抗体の授受は初乳によるので,子ウシ消化管での免疫グロブリンの運命は興味深い.本実験では初乳免疫グロブリンの80%を占めるIgGIgG
1を精製し,in vitroで子ウシ第四胃由来のレンニンで消化したものと,同じグロブリンのペプシン消化物F(ab')
2とを比較検討し,つぎの成績をえた.1) IgGIgG
1をレンニン消化するときの至適pHは3.5付近で,子ウシ第四胃内の条件に近いpH5.5ではほとんど分解されなかった.ペプシン消化ではpH4.0以下においてはF(ab')
2より少さなfragmentに分解されたがpH5.5での分解はわずかであった.2) pH3.5でのレンニン消化は3時間以後急速に進むが,12時間でも幾分intact IgGIgG
1がみられた.pH4.5でのペプシン消化はレンニン消化より速く進み,12時間でほとんどintact IgGIgG
1はみられなかった.3) 両酵素による24時間消化物をSephadex G-75で分画すると,ほとんど等しい溶出パターンを示した.ペプシン消化物の最初に溶出する分画Pep Iは分子量約115,000, hexose含量5.5モルでIgGIgG
1のF(ab')
2に一致し,レンニン消化物Ren Iも分子量約115,000, hexose含量5.8モルで,電気泳動的にもPepIと等しい性質を有した.4) 免疫拡散試験ではRen I, Pep Iに対するウサギ抗血清と,Ren I, PepIおよびIgGIgG
1との間に完全に融合する1本の沈降線がみられ,抗血清をIgGIgG
1から調製したL鎖で吸収すると沈降線は多少不鮮明になった.
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