甲状腺におけるホルモンの合成と分泌に対するGoitrinの影響を観察する目的で,白色レグホーン種雄初生ヒナを用い,菜種より抽出したGoitrinを0.0125, 0.025および0.05%の3段階で飼料に混合し14日間ヒナに給与した.また
125Iを飼料に混合して初生時よりヒナに給与し,ヒナ体内ヨウ素の
125Iによる標識を行なった.甲状腺はGoitrinの投与で対照区の2~5倍に肥大し,かつ甲状線重量とGoitrin投与量との間に高い正の相関関係(r=0.98)が認められた.甲状腺
131Iとり込み(24時間値)はGoitrinの投与量に従って対照区の約2倍に増加し,Goitrin特有のHigh Radioiodine Uptake Goiterが観察された.血中甲状腺ホルモン(PBI)レベルはGoitrinの投与により対照区の約1/2に低下し,この結果はRadiostereoassayによる血中Thyroxineの定量によっても証明された.一方,0.0065%PTUを飼料に添加して給与すると,血中甲状腺ホルモン(PBI)レベルは対照区の約1/10に低下した.Goitrinはヒナの甲状腺においてIndothyronines合成とMITのヨウ素化を抑制するが,無機ヨウ素の有機化段階は全く柳制されず,むしろ若干促進されることがKClO
4 discharge testにより示された.甲状腺内ホルモン量と血中ホルモンレベルの比(Iodothyronines/PBI)はPTU投与ヒナでは著しく低下したが,Goitrin投与ヒナでは対照区の1.5~1.7倍に上昇した.従ってGoitrinはヒナの甲状腺内においてIodothyroninesの合成を抑制するのみではなく,甲状腺からのホルモンの血中への分泌をも抑制することが示唆された.
抄録全体を表示