国内8か所の試験場で実施された黒毛和種産肉能力直接検定の成績に基づき,検定期間中の1日平均増体量,1kg増体当りTDN消費量,粗飼料摂取率,検定終了時体型得点,および検定成績全体を総合評価した産肉能力点数に及ぼす検定季節,血清トランスフェリン型,検定開始時日齢,および開始時体重の影響を調べるとともに,これらの検定形質の遺伝率を推定した.材料牛は52頭の種雄牛を父牛とする552頭の雄子牛であって,いずれの試験場でも離乳後112日間,同一の検定飼料を用いて個別飼育された.検定季節の効果はすべての形質に対して有意性を示した.検定期間中の1日平均増体量と,1kg増体当りTDN消費量は,冬に検定を開始したものが夏と秋に検定を開始したものより,それぞれ約0.05kgと約0.2kgすぐれていた.また夏に検定を開始したものは,他の季節に開始したものより粗飼料摂取率,検定終了時体型得点,および産肉能力点数が劣っていた.血清トランスフェリン型とこれらの形質との間には,有意な関係は認められなかった.粗飼料摂取率以外のすべての形質で,開始時日齢と開始時体重に対する偏回帰係数は,高い有意性を示した.開始時日齢に対する1日平均増体量,体型得点および産肉能力点数の偏回帰係数は,いずれも負の値を示し,開始時日齢の若いものほど増体がよく,検定終了時の体型得点と産肉能力点数が高かったが,開始時体重に対する偏回帰係数は正の値を示し,開始時体重の重いものほど,これらの形質がすぐれていた.しかしながら,飼料効率は開始時体重の重いものが劣っていた.検定期間中の1日平均増体量,1kg増体当りTDN消費量,検定終了時体型得点,および産肉能力点数の遺伝率は,それぞ0.879,0.358,0.405,0.406および0.071であって,産肉能力点数以外の遺伝率はかなり高かった.したがって黒毛和種雄牛の増体形質の改良には,個体選抜が有効であることを認めた.
抄録全体を表示