日本のランドレース(L),ハンプシャー(H),大ョークシャー(W),デュロック(D)種の4豚品種集団から任意に抽出された464頭の赤血球酵素PHI,6PGD,PGM,ADA型を調査し,酵素型の出現頻度の品種間比較を行った.そして遺伝子頻度を基にして,各酵素型の親子鑑別における有効性を検討した.PHI,6PGD,PGM, ADA酵素はそれぞれ調査したすべての品種で多型を示し,既知の遺伝子が各々の酵素システムで観察された.PHIシステムでは
PHIAと
PHIB遺伝子が見出され,すべての品種において
PHIBの頻度が
PHIAより高かった.6PGDシステムでは6
PGDAと6
PGDB遺伝子が見出され,品種間に著しい出現頻度の差異がみられた.すなわち6
PGDAの頻度はHとW種では6
PGDBよりかにり高かったが,逆にD種ではかにり低かった.PGMシステムでは
PGMAと
PGMB遺伝子が見出され,
PGMBの頻度は
PGMAよりすべての品種におい内高く,L種以外の品種では大きに差異を示した. ADAシステムでは3つの遺伝子(
ADAA,
ADAB,
ADAO)が見出され,その出現頻度は品種間で著しい差異を示した.LとW種では3つの遺伝子が存在していたが,H種では
ADABが,D種ではADAOが見出されなかった.D,WおよびL種では
ADAAが圧倒的に高い頻度を示したが,H種では
ADAOの頻度が圧倒的に高かった.次にこれらの酵素型座位による父権否定の確率を各品種ごとに求めると,4っの座位を組み合せた確率として,L:0.482,H:0.214,W:0.326,D:0.329の値が得られた.そして赤血球抗原型7座位,血清蛋白質型5座位,血清アロタイプ2座位と組み合せた合計18座位によって父権否定の確率は,L:0.926,H:1.829,W:0.883,D:0.814の値に達した.
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