日本畜産学会報
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51 巻, 5 号
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  • 三上 正幸, 三浦 弘之, 山梨 晃
    1980 年 51 巻 5 号 p. 305-310
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    家畜舎で50lフタ付ポリ容器に初乳を保存し,(1) 自然発酵,(2) 過酸化水素添加(0.5又は0.75%),(3) プロピオン酸添加(1.0%)の3種類を調製し細菌相と仔牛への給与結果を観察した.1. 自然発酵乳の一般細菌相は5日目でStreptococcus, Lactobacillusその他であったが15日目にはStreptococcusが74%, Lactobacillusが25%であった.2. 過酸化水素添加乳は,過酸化水素が分解消失したために,3日目で細菌数が増加した.この時の一般細菌相を見ると,5日目ではStreptococcusが多く,15日目ではStreptococcusおよびLactobacillusが主相であった.3. プロピオン酸添加乳の一般細菌相は5日目ではまだ各種の細菌が存在したが,15日目にはほとんどLactobacillusで占められた.4.腸内細菌相を見ると5日目に,自然発酵乳ではShigella, E. coli, Salmonellaが,過酸化水素添加乳ではE. coli, Shigellaが生残し,15日目でもShigella, E. coliその他が生残した.これに対してプロピオン酸添加乳ではこれら病原性の懸念される細菌は生残しておらず,H. alveiおよびE. herbicolaが,わずかに認められた.5. 前記3種の初乳を仔牛に給与したところ,初乳摂取量,増体量にはほとんど有意の差はみられなかったが,自然発酵乳および過酸化水素添加乳給与区では,下痢および血便等の異常がしばしば観察された.しかしながらプロピオン酸添加乳給与区では見出されなかった.
  • 阿部 恒夫, 小松 正憲, 大石 孝雄, 天野 卓, 塩見 正仁, 辻 荘一, 福島 豊一
    1980 年 51 巻 5 号 p. 311-318
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    近交係数が明らかにされている2地域の黒毛和種繁殖雌牛群について,血液型9座位と血液蛋白型17遺伝子座,計26座位を検索し,それらの遺伝子頻度をもとにして集団の遺伝的変異性の解析を試みた.1. 系統交配が行われ,近交度のやや高い(F=0.0895)M群212頭と他府県からの種雄牛の交配も行われ,近交度の低い(F=0.0222)N群146頭の比較において,平均ヘテロ接合体の割合(H)で示される遺伝的変異性はM群はN群にくらべて明らかに低かった.2. 遺伝子型の判別の可能な8遺伝子座を用いて,ヘテロ接合体の割合(H)の観察値を近交を考慮して算出した期待値と比較したところ,M群ではヘテロ接合体の超優勢効果が認められたが,N群ではむしろ逆の傾向がみられた.3. M群において,年齢別の遺伝的変異性を比較したところ,高齢(12~16年)の雌牛群の遺伝的変異性(H)は若齢(4~7年)の雌牛群にくらべてやや高い傾向が認められた.3座位において系統間の遺伝子頻度の差異が認められたが,平均ヘテロ接合体の割合では大差がなかった.4. 近交係数の上昇に伴って,平均ヘテロ接合体の割合は減少し,期待値とほぼ一致したが,座位によってはヘテロ接合体の割合の減少はみられなかった.
  • 崎元 道男, 宮崎 昭雄
    1980 年 51 巻 5 号 p. 319-324
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    畜産における適切な防臭を行うための基礎研究として,豚ふんの水蒸気蒸留物のうち,悪臭の主成分を含む中性および酸性物質について,悪臭起因物質の解明を行った.排泄直後の豚ふんを常圧水蒸気蒸留(pH2)し,その留出液をエーテル抽出し,常法により中性および酸性画分のエーテル抽出物を得た.1) 酸性画分は強い低級脂肪酸(VFA)臭を呈し,低沸点化合物としてC2~C5の低級脂肪酸,および高沸点化合物としてC10~C18の高級脂肪酸,benzoic acid, phenylacetic acid, phenylpropionic acidを同定した.2) 中性画分は,排泄直後の豚ふんに酷似した臭気を呈し,悪臭の主要構成成分であると考えられた.中性画分はさらにシリシックアシッドカラムクロマトグラフィーにより5つの画分に分け,furfural, p-cresol, skatoleを確認するとともに,豚ふんからの新化合物として12-methyltridecanal, 12-および13-methyltetradecanal, n-octadecanal, 9-および11-octadecenal, 9,12-octadecadienal, n-pentadecanol,およびn-hexadecanolを同定した.
  • 高鳥 浩介, 坂本 京子, 大久保 薫, 小西 辰雄, 弓野 克吉
    1980 年 51 巻 5 号 p. 325-330
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    家畜飼料中のカビ分布の実態を北海道十勝地方で調査した,対象飼料は,牛馬用の乾草,稲わらとサイレージで,特に粗飼料に多いとされるFusariumの分布を検索した.また,分離FusariumのTrichothecene産生牲を検索することを目的として,ウサギ皮膚試験による毒性試験を試みた.供試飼料のカビを検索したところ,乾草,稲わらおよびサイレージでは概ね105~166/gの検出頻度で,カビ分析をみると,乾草と稲わらでは似た傾向がみられ,多種類の菌種が存在していた.その中でもFusariumが多かった.また,サイレージのカビ分布は,Aspergillus (A. fumigatus), Geotrichum Mucorに限られた.Fusariumの優占菌種はF. graminearum であり,次いでF. nivaleであった.分離Fusarfum 53株の穀類培養したEtOH菌抽出物のウサギ皮膚試験を試みたところ,供試Fusariumのなかで3株が著しい炎症変化を誘起した.これらのFusariumのうち2株はF. graminearumであり1株は未同定菌種であった,F. graminearum 2株の抽出物質には,T-2 toxin, NeosolaniolおよびDiacetoxy-scirpenolなどが含まれていると推定されたが,Fusarium sp.の抽出物質については,さらに分析,同定する必要があると考えられた.
  • 横浜 道成, 桑島 正夫, 三浦 信義, 井上 正春, 茂木 一重, 細田 達雄, 中島 剛
    1980 年 51 巻 5 号 p. 331-335
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    当研究所で行なってきた軽種馬の親子判定の成績において,1974年と1976年の両年にtransferrin systemにより母子関係が否定されるものが同一交配例にみられた.このような事例が起こる可能性は一般的には考えられないので,1977年と1978年に関係馬の分娩に7回立会し,母子関係を確認し,さらに家系調査を行なった結果次の如き成績が得られた.母子関係が否定となる現象は7例の分娩において3例認められ,これが単なる繁殖上の誤りではなく遺伝的原因によることが明らかとなった.また,この特異な遺伝現象はある一家系にのみ認められ,他の家系には全く認められなかった.このことから何等かの原因によりsilent geneがこの家系に現われ,これが子孫に遺伝したものと思われる.よって,馬のtransferrin systemの遺伝様式は5つの共優性遺伝子と1つのsilent geneの6つの対立遺伝子によって決定されることとなる.なお,関係馬の核型には異常が認められなかった.
  • 横浜 道成, 桑島 正夫, 三浦 信義, 井上 正春, 茂木 一重, 細田 達雄, 中島 剛
    1980 年 51 巻 5 号 p. 336-341
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    馬血清のβ-globuline分画における主成分であるTf蛋白を抗原として著者らが作製した抗Tf血清を用いたときの単円免疫拡散法によるTf蛋白量の定量方法の検討,並びに一般集団における馬Tf蛋白量の正常値の分布について調査を行なうと同時に,Tf蛋白量レベルから正常Tf型とsilentgeneをもったヘテロのTf型との識別を試みた結果,次の如き成績が得られた.1. 32~64倍の抗体価をもつ抗-Tf血清を用いて単円免疫拡散法を行なった場合,抗血清は寒天ゲル10ml当り0.25ml,抗原液の注入量は3μl;また,16×11.5cmのガラス板(20mlの抗血清-寒天液を使用)を用いたときの反応時間は72時間が最適であった.2. 測定した沈降輪の直径の2乗値と抗原量(42.5~340mg/dl)との間には直線関係が認められた.また,測定値の変異係数は1.19%であった.この標準曲線を用いて.馬血清中のTf蛋白量を極めて容易に定量することが可能となった.3. 621例の41歳以上の軽種馬におけるTf蛋白量の正常値は241.4~506.6mg/dlの間に分布を示し,この時の平均蛋白量は352.8mg/dlであった.また,1%水準において,馬のTf蛋白量は正規分布をするとみなすことができた.4. silent geneをもったTf型はTf蛋白量の正常値分布からはずれた低濃度の蛋白量を示し,平均値は198.6mg/dl.で,正常Tf型の平均値に比べ約150mg/dlほど少なかった.よって,技術的には単円免疫拡散法により両型を識別することが可能である.
  • 鈴木 一郎, 渡辺 正利, 北田 徳蔵, 加藤 貞雄, 森地 敏樹
    1980 年 51 巻 5 号 p. 342-346
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳酸菌Lactobacillus bulgaricusを単独およびStreptococcus thermophilusと混合培養で発酵乳を製造し,フレーバーに及ぼす混合培養の効果について検討した.その結果,L. bulgaricus単独の発酵乳では組織,味(taste)の評価が低く,総会評価も低かったが,混合培養により著しく改善された.L. bulgaricuss. thermophilusとの混合培養により乳酸生産量とアセトアルデヒド生産量が高まり,フルーバーの評価を高めた.S. thermophilusは発酵乳の組織を良くしたが,L. bulgaricusにより共生的に生育が促進されることはなかった.
  • 小原 嘉昭, 新林 恒一
    1980 年 51 巻 5 号 p. 347-351
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1) 第一胃内容除去山羊を用いて,第一胃内に人工第一胃液を注入し,食道funnelにより分泌される唾液を全量採取できる状態で,頸静脈内に15N尿素をsingle injectionした.このような実験方法により第一胃内への血液尿素の出現経路は,唾液分泌と第一胃壁からの直接拡散の2経路であることを確認した.2) 胃内容除去山羊における尿素pool sizeは,血清尿素レベルの上昇につれて増大した.又尿素spaceは体重の44~58%であった.唾液の尿素レベルは血清の値の54~70%であった.3) 血液尿素の第一胃内出現経路である唾液分泌と第一胃壁拡散の量的比率は,低蛋白質飼料区,適蛋白質飼料区間で差はみられず,1:2.8~1:7.0であった.
  • 藤原 勉, 田先 威和夫
    1980 年 51 巻 5 号 p. 352-359
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    第4胃内に投与したカゼインのレベルがヤギの血漿遊離アミノ酸濃度にいかなる影響を及ぼすかを検討するため,第1胃および第4胃にフィステルを装着した去勢成雄ヤギ3頭を用いて実験し,次の様な結果を得た.1)血漿中の大部分のアミノ酸の濃度は無蛋白質飼料給与の場合に比してカゼイン飼料給与の場合には有意に高くなった.血漿中グリシン濃度は無蛋白質飼料給与の場合にカゼイン飼料給与の場合より有意に高くなった.2) 血漿中総遊離アミノ酸濃度は,飼料中のカゼインレベルが増加するにつれて有意ではないが高くなる傾向を示した.総必須アミノ酸濃度は20%カゼイン飼料給与の場合,10%および15%カゼイン飼料給与の場合よりも有意に高くなった.その結果,非必須アミノ酸濃度に対する必須アミノ酸濃度の割合は,20%カゼイン飼料給与の場合に他の飼料給与の場合に比べて有意に高くなった.3) 必須アミノ酸中の側鎖アミノ酸(バリン,イソロイシン,ロイシン)の濃度は飼料中のカゼインレベルの増加につれて有意に増加した.同様に,総必須アミノ酸中の側鎖アミノ酸の割合も飼料中のカゼインレベルの増加につれて増加した.4) 血漿中グリシン濃度に対するバリンおよび側鎖アミノ酸濃度の比は飼料中のカゼインレベルの増加によって著しく変化した.この事から,これらの比は飼料蛋白質の栄養的な判定の指標となり得ることが示唆された.
  • 長谷川 信, 佐藤 一義, 氷上 雄三, 水野 利雄
    1980 年 51 巻 5 号 p. 360-367
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    エストロジェンによる鶏の体脂肪増加の機構を調べる目的で,エストロジェン処理鶏の腹腔内脂肪組織を用いて,その化学成分,脂質成分およびリパーゼ(リポプロテインリパーゼとホルモン感受性リパーゼ)活性の変化を検討した.3週齢の白色レグホーン雄雛を用い,800μgの17-βエストラジオールを毎日7日間にわたって頸部皮下に注射した.エストロジェン投与により飼料摂取量および増体量に変化は認められなかったが,腹腔内脂肪組織量は有意に増加した.化学成分において,総DNA量に変化はなかったが,DNA単位重量当りの乾物量に有意な増加が見られた、さらち乾物成分のうち,乾物の約90%を占める脂質の増加が顕著で,対照区の約4倍の値を示した.また,脂質成分では,脂質の大部分を占めるトリグリセライドに顕著な増加が認められ,対照区の約4倍の値を示した,したがって,エストロジェンによる腹腔内脂肪組織量の増加は,主としてトリグリセライド量の増加に基づいた,細胞のhypertrophyによるものであることが示唆された.リポプロティンリパーゼおよびホルモン感受性リパーゼは,対照区に対して,おのおの約1/2倍および2倍の活性値を示した.すなわち,(リポプロテインリパーゼ)/(ホルモン感受性リパーゼ)活性比に減少が認められた.また,血漿トリグリセライド量は,エストロジェン投与により約40倍の増加を示した.以上の結果に基づき,エストロジェンによる,腹腔内脂肪組織における,トリグリセライドの増加機構について考察した.
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