サイレージの品質鑑定に資する目的で,簡便な有機酸定量法を設計し,この方法の信頼性,所要時間等について検討を加えた.定量法の概略は次の通りである.1. サイレージ50gにN/10硫酸200mlを加え,ときどき強く振りながら3時間放置する.2. これをろ過し,ろ液30mlに1.5mlの濃硫酸を加え,ケルダールの水蒸気蒸留装置によって蒸留し,300mlの留液(第1留液)を得る.このとき,抽出液を入れた分解フラスコの下にもバーナーを取り付け,火を加減し,分解フラスコ内の液量が増減しないようにする.この条件で酢酸と酪酸はほぼ100%,留液に回収される.3. 次に分解フラスコ内に1.5mlの三酸化クロム溶液(50%,w/w)を加え,再び蒸留して300mlの留液(第2留液)を得る.このとき,乳酸は分解され酢酸として,ほぼ100%,留液に回収される.4. 第1および第2留液のそれぞれ50mlをN/50水酸化ナトリウムで滴定し,滴定値をそれぞれN
2およびN
3とすれば,これよりそれぞれ酢酸と酪酸の合計量および乳酸量が与えられる.5. 第1留液60mlを分液ロートに取り,エーテル50mlを加えて1分間激しく振り,静置後,水層50mlを取ってN/50水酸化ナトリウムで滴定し,滴定値をN
1とすれば,本報において定義するところの分配恒数(K)=N
1/N
2が求められる.6. 酢酸および酪酸の分配恒数は,20~30°Cにおいて,それぞれ0.72および0.19であるので次式により,第1留液中の酢酸(A)と酪酸(B)のモル比が求められる.したがって,N
2にこれを乗じれば酢酸と酪酸の含量が求められる.0.72A+0.19B=K A+B=1本法はフリーク法に比べ信頼性が高く,分析に要する時間は短く,比較的容易でサイレージ分析に有利な方法である.
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