日本畜産学会報
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52 巻, 5 号
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  • 林 国興, 冨田 裕一郎, 橋爪 徳三
    1981 年 52 巻 5 号 p. 329-333
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    サイレージの品質鑑定に資する目的で,簡便な有機酸定量法を設計し,この方法の信頼性,所要時間等について検討を加えた.定量法の概略は次の通りである.1. サイレージ50gにN/10硫酸200mlを加え,ときどき強く振りながら3時間放置する.2. これをろ過し,ろ液30mlに1.5mlの濃硫酸を加え,ケルダールの水蒸気蒸留装置によって蒸留し,300mlの留液(第1留液)を得る.このとき,抽出液を入れた分解フラスコの下にもバーナーを取り付け,火を加減し,分解フラスコ内の液量が増減しないようにする.この条件で酢酸と酪酸はほぼ100%,留液に回収される.3. 次に分解フラスコ内に1.5mlの三酸化クロム溶液(50%,w/w)を加え,再び蒸留して300mlの留液(第2留液)を得る.このとき,乳酸は分解され酢酸として,ほぼ100%,留液に回収される.4. 第1および第2留液のそれぞれ50mlをN/50水酸化ナトリウムで滴定し,滴定値をそれぞれN2およびN3とすれば,これよりそれぞれ酢酸と酪酸の合計量および乳酸量が与えられる.5. 第1留液60mlを分液ロートに取り,エーテル50mlを加えて1分間激しく振り,静置後,水層50mlを取ってN/50水酸化ナトリウムで滴定し,滴定値をN1とすれば,本報において定義するところの分配恒数(K)=N1/N2が求められる.6. 酢酸および酪酸の分配恒数は,20~30°Cにおいて,それぞれ0.72および0.19であるので次式により,第1留液中の酢酸(A)と酪酸(B)のモル比が求められる.したがって,N2にこれを乗じれば酢酸と酪酸の含量が求められる.0.72A+0.19B=K A+B=1本法はフリーク法に比べ信頼性が高く,分析に要する時間は短く,比較的容易でサイレージ分析に有利な方法である.
  • 川越 郁男, 佳山 良正
    1981 年 52 巻 5 号 p. 334-342
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    グラステタニー発生の一要因であると考えられている高カリウム(K)含有牧草の摂取試験を,オーチャードグラスとイタリアンライグラスの混播草地で調整した乾草を基礎飼料として用いて行い,牛のK耐久性および高K摂取が他の多量元素代謝におよぼす影響を泌乳中の乳牛と乳用雄子牛について比較検討した.試験の成績はつぎのようである.1) 高K摂取により,Mg摂取量に対する尿中への排泄割合が抑制され,ふん中への排泄割合が増加した.その程度は泌乳牛で著しく,したがって収支は負になる機会が多かった.2) 泌乳牛のふん中へのPの排泄は,高K区で摂取量の85.9%,対照区で73.1%で,Pの吸収や排泄の様相もKの多量摂取に影響されるようであった.3) K摂取と飲水量との関係は,個体差が大きく,高い相関が得られなかったが,尿量はK摂取の増加とともに有意に増加した.4) 摂取飼料と尿のそれぞれのミネラル構成におけるKの構成率は相互に高い相関を示し,雄子牛のばあい,Y=0.329x+73.5の有意な一次式が成立し,乾草のK構成率が34.3%のとき尿中のKの構成率が84%となり,CHUV'YUROVAの成績と近似した.5) 泌乳牛では,飼料からのK給与量が750mg/kg体重でも異常は認められなかった.雄子牛ではlg/kg体重を給与すると,2~3週間後に不整脈と後肢の麻痺をみたが,約24時間後にこれはほぼ回復した.6) 乳汁のK/(Ca+Mg)me比および(K+Na)/(Ca+Mg)me比のそれぞれ,0.6と1.0前後で,変動幅が小さいので,体内で調節されていると考えられた.
  • 甫立 孝一, 上家 哲, 川端 麻夫, 甫立 京子
    1981 年 52 巻 5 号 p. 343-348
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳牛の血中甲状腺刺激ホルモン(TSH),サイロキシン(T4)およびトリヨードサイロニン(T3)の基礎値におよぼす年齢,体重および性の影響,ならびにこれらホルモンの日内変動について検討した.ホルスタイン種乳牛から得た血漿中のTSH, T4およびT3濃度は,それぞれラジオイムノアッセイにより測定した.血漿TSHの基礎値は年齢および体重と有意な正の相関を示し,逆にT4は有意な負の相関を示した.また,T3基礎値も年齢および体重と,統計的に有意ではなかったが,それぞれ逆相関した.さらに,T3基礎値はT4基礎値と有意な正相関を示した,子牛の血漿TSH, T4およびT3基礎値には,いずれも性による有意な差はみられなかった.泌乳牛の血漿TSHレベルは明確な日内変動を示さなかったが,T4およびT3レベルは,いずれも早朝から夜間(22:30)にかけて上昇しその後減少する傾向がみられた.これらの結果より,1) 乳牛の血漿TSHの基礎値は,年齢および体重の増加に伴なって上昇すること,逆に,2) T4基礎値は減少すること,また,3) T4およびT3レベルには,採食の影響と推察される日内変動がみられることが示唆された.
  • 鈴木 三義, 光本 孝次
    1981 年 52 巻 5 号 p. 349-353
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳牛の初産から3産について実乳量,実乳脂量,年齢•分娩月補正係数による成牛換算乳量と乳脂量および分娩時年齢の遺伝率と遺伝相関を推定した.北海道の乳検資料から昭和50年以後に分娩し昭和53年3月までに乳期を完了した泌乳記録を使用した.初産から3産の記録数と種雄牛頭数は,それぞれ16,957と218,18,366と234,14,449と216であった.数学モデルは主効果として群•年度と種雄牛を考えた交互作用のある2元配置モデルを使用し,各分散•共分散成分の推定はHEN-DERSONのMetllod IIIにより求めた.1) 初産から3産の遺伝率は,成牛換算乳量で0.27,0.20,0.14,成牛換算乳脂量で0.26,0.20,0.21,そして,分娩時年齢では0.32,0.28,0.40であった.2) 乳量と乳脂量の遺伝率は成牛換算補正によりいずれの産次でも高くなり,補正の有効性は認められるが,分散成分からみると,補正は環境分散を一様にするが遺伝分散を若い産次で増大させる傾向にあることが示唆された.3) 乳量あるいは乳脂量と分娩時年齢の遺伝相関は,2産次の実乳量(0.02)を除き全て負の推定値(-0.09~-0.37)が得られた.乳量と乳脂量の遺伝相関は正の相関(0.48~0.75)が得られたが,産次の進行とともにその関係は弱まることが示された.
  • 鈴木 健, 野本 敏郎, 小牧 弘, 森本 宏
    1981 年 52 巻 5 号 p. 354-361
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    豚の消化管,特に小腸における部分消化を知るために,腸管カニュレを装着した豚を用いて実験を行った.まず,予備実験として腸管カニューレの装着が飼料の消化率等に及ぼす影響を見るため,カニューレを供試豚の空腸上部あるいは回腸末端に1カ所装着し,指標物質(marker)として酸化クロム(Cr2O3)を添加した飼料を用いて,カニューレ装着前後における消化管内のmarkerの通過(滞留)時間および各部位における消化率を測定した.予備実験の結果はつぎの通りであった.1) markerの全消化管内通過時間は空腸上部カニューレ装着豚では装着前後においてほとんど差は認められなかった.回腸末端カニューレ装着豚では装着前に比して装着後の方が若干速く通過した.2) 窒素(N)の蓄積割合(%)はカニューレ装着前に比して装着後の方が低い傾向を示した.3) 飼料の消化率はカニューレ装着前後において大きな差は認められなかった.4) Cr2O3の回收率は装着前後においてもほとんど差が認められなかった.このように回腸末端カニューレの装着により,markerの全消化管内通過速度に若干の変動を生じたが,飼料の消化率については著しい影響はなく,カニューレを装着した豚を用いて部分消化の研究をなしうることが明らかとなった.次に,本実験においては予備実験で用いたカニューレ装着縁を継続的に用い,口腔からそれぞれ空腸上部,回腸末端および肛門までのmarkerの通過時間および各部位までの消化率(部分消化率)等を明らかにする目的で,予備実験と同様の方法でCr2O3を添加した飼料を給与した.その結果は次のようであった.1) Cr2O3の50%通過時間は口腔から空腸上部までが40分,空腸上部から回腸末端までが5時間,回腸末端から肛門までが27.4時間であった.2) 有機物の消化管各部位(上部空腸,回腸末端および肛門)までの消化率は口腔から空腸上部までが7.7%,口腔から回腸末端までが69.0%,消化管全体では81.7%であった.各成分共に小腸(十二指腸は除く)で大部分消化•吸収され,胃•十二指腸ではほとんど吸収がなされていないことが認められた.
  • 久米 新一, 向居 彰夫
    1981 年 52 巻 5 号 p. 362-367
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛におけるセレン蓄積量の実態を把握する目的で,3地域で屠殺された44頭のホルスタイン種牛から腎臓および肝臓を採取した.各地域における腎臓および肝臓の平均セレン濃度(乾物当り)は,4.25±1.02ppm•1.12±0.09ppm(熊本),2.99±0.75ppm•0.89±0.2ppm(広島)および5.31±0.80ppm•1.43±0.23ppm(徳島)であった.これらの結果から,調査牛ではセレン欠乏が発生する可能性はほとんどなかったものと考えられる.また乳牛におよぼすセレンの影響を検討するために,泌乳牛2頭を用い,全摂取乾物中1日当りセレン濃度が約5ppmとなるように,セレン酸ナトリウムを4週間にわたって経口投与した.その結果,体内組織では腎臓および肝臓に顕著なセレンの蓄積が認められた.しかし,投与終了直後に屠殺した牛の肝臓(17.84ppm)は腎臓(10.94ppm)より高い濃度を示したが,投与終了4週後に屠殺した牛では,腎臓(5.46ppm)が肝臓(2.74ppm)より高い濃度を示した.投与期のふんおよび尿のセレン濃度を投与前と比較すると,それぞれ15~20倍,8~15倍となり,また投与終了後14日目にはほぼ投与前の濃度にまで低下したことから,投与されたセレンの大部分はふん中および尿中にて排泄されるものと推定される.しかし,投与終了4週後に屠殺した牛の肝臓がセレン非投与牛よりも,また投与終了4週後の血液が投与前よりもセレン濃度が高いことから,投与されたセレンは投与直後には急速に排泄されたとしても,その後の排泄は指数関数的に漸減し,一部の臓器では長期にわたり滞留することもうかがえる.一方,牛乳および筋肉へのセレンの移行は少なかった.
  • 島崎 敬一, 青山 英俊, 祐川 金次郎
    1981 年 52 巻 5 号 p. 368-375
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛乳中の免疫グロブリンが,乳房炎原因菌の一つであるブドウ球菌に対して凝集能を示したので,乳房炎乳,初乳,正常乳のホエー,免疫グロブリン画分,IgG1, IgG2, SIgA, IgMおよび血清の凝集能を比較した.9頭の牛について,のせガラス試験とマイクロタイター法を用いて調べたところ,全ての試料にブドウ球菌に対する凝集能が見い出された.同一個体の各分房乳についての比較では,乳房炎感染乳房に免疫グロブリン濃度が増大し,同時に凝集力価も上昇した.しかし凝集を示す最少免疫グロブリン濃度は非感染乳房の値と大きな差はなかった.
  • 矢野 秀雄, 森田 哲夫, 水沼 裕治, 川島 良治
    1981 年 52 巻 5 号 p. 376-381
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    6頭の去勢めん羊を3頭ずつ2グループに分けた.一方には0.15%,他方には0.98%のマグネシウムを含む飼料を与えた.始めの3週間を無処理期とし,その後の2週間をビタミンB1注入期とした.ビタミンB1注入期にはすべてのめん羊に毎日体重1kgあたり1.5mgのthiamine tetrahydrofurfuryl disulfide hydrochlorideを筋注した.低マグネシウム飼料を与えためん羊ではビタミンB1注入により,尿,糞中へのマグネシウム排泄量は増加し,体内保有量は減少したが,高マグネシウム飼料を与えためん羊ではその影響は見られなかった.ビタミンB1注入により糞中への鉄,マンガン排泄量は増加したが,その傾向は高マグネシウムを与えためん羊より低マグネシウムを与えためん羊の方がより明らかであった.高マグネシウム飼料は糞中亜鉛排泄量の増加を引き起こし,亜鉛の出納を負の値にした.
  • 鈴木 裕之, 堤 義雄, 小川 桂屹
    1981 年 52 巻 5 号 p. 382-391
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ナイロン栓で密栓した新型ポリウレタン•バルーンカテールを用いて,未交配家兎の卵管,子宮ならびに子宮頸の内圧変化を測定した.卵管の収縮頻度(6.0±1.0/分)は,子宮(1.0±0.2/分)と子宮頸(1.9±0.5/分)よりも高かった.突発性収縮が反復して認められたが,生殖器各部位でかならずしも同調していなかった.1日1-2時間の測定を15-32日間続けた結果,それぞれの器管の収縮振幅には日変動がみられた.3部位中卵管の内圧が最も高く(平均,38mmHg),かっ変動も著しかった(範囲,5-160mmHg).子宮の平均振幅は20mmHg(範囲,3-70mmHg)で,子宮頸の内圧は最も変動が小さく平均9mmHg(範囲3-26mmHg)であった.各器管の収縮運動の振幅にはしばしば4-7日(平均,5.6日)間隔の周期的変化がみられた.その傾向は卵管よりも子宮と子宮頸で明瞭に認められた.未交配家兎生殖器道の運動性は卵巣周期と関連していることが示唆された.
  • 寺島 福秋, 岩田 健二, 伊藤 宏
    1981 年 52 巻 5 号 p. 392-394
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
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