食肉のヘム色素および脂質の酸化におよぼす嫌気包装の影響について試験した.嫌気包装は脱酸素剤を用いて行なった.挽肉試料は脱酸素剤と共に包装して貯蔵し,空気包装試料と比較した,酸素濃度は,嫌気包装で包装後約1%に急激に減少したが,空気包装では,試験開始時の20%から貯蔵10日目の1%に経日的に減少し,それに伴い二酸化炭素が増加した.メト型ヘム色素の割合は,空気包装試料で経日的に増加し,貯蔵10日目に約80%になった.一方,嫌気包装試料では,メト型ヘム色素が一旦増加した後減少し,貯蔵10日目に約30%になり,ヘム色素の酸化抑制が認められた.色調は,嫌気包装試料,空気包装試料とも,メト型ヘム色素の割合と対応して変化した.貯蔵10日目のTBA値は,空気包装試料が11μg/gであった.一方,嫌気包装試料では8.2μg/gであり,脂質酸化の抑制が認められた.以上の結果より,脱酸素剤封入の嫌気包装によって,食肉の化学的,物理的諸特性に関して棚持寿命の延長が認められた.また,加熱調理した試料の官能検査では,空気包装試料に悪臭が認められたが,嫌気包装試料では悪臭が認められず,明らかに良好であった.
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